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【書籍版】錬成七剣神(セブンスソード)  作者: 奏 せいや
第二章 セブンスソード
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魔堂魔来名

「いくぞ!」

「来い」


 そのために、前へと一歩を踏み出した。

 スパーダ同士では初めての戦闘。それは単なる剣同士の戦いではなく異能戦となる。


 その先手は星都だ。


光帝こうてい剣、エンデュラス!」


 星都の持つスパーダ、その中央のカバーが開き歯車が回り出す。機械式時計のようなそれはいくつもの歯車と振り子が回りそれに合わせ針が勢いよく回っていった。

 直後、俺の横を銀髪の風がすり抜ける。


 エンデュラスの能力は時間の操作か。それにより加速した星都はまさに疾風だ。実在の刃を持ったかまいたちが戦場に吹く。 


 速い。まさに一瞬。星都はエンデュラスを手に魔来名に襲い掛かる。俺でさえその速度に驚いたんだ、知らない魔来名からすれば奇襲も同然。


 だが驚愕したのは星都の方だった。星都だけじゃない、ここにいる全員が驚いている。


 襲い掛かる青の剣閃を、紫の刃が防いでいた。


「見切った!?」


 早い! 星都もそうだが、エンデュラスのスピードに合わせるなんて。


 星都と魔来名で刀身を押し付け合う。その隙、魔来名は片手を伸ばし星都を掴むと頭突きをしさらに腹を膝蹴りしてきた。


「があ!」

「星都!」


 怯む隙に斬りかかるがそれをなんとか星都が防ぐ。けれど次の蹴りをもろに食らってしまい地面を転がっていった。


「俺は無事だ、行け!」

「くっ!」


 こいつ、強い。まさか能力を使わずにエンデュラスの攻撃に対応するなんて。それにどんな能力を持っているのかも分からない。


 不安が過る。だが攻めるしかない!

 星都の先制、次は俺たちの番だ。三人が同時に魔来名に攻める。

 第二撃、今度は重撃だと言わんばかりに緑の大剣が前に出る。


鉄塊てっかい王、グラン!」


 力也がグランを振り下ろす。普通なら持つことも叶わない重量、何百キロとあるそれはまさに破壊の権化だ。

 防ぎきれないと判断したか魔来名が躱す。グランは魔来名がいた場所を叩くとその衝撃でアスファルトが砕け散っていた。


「おお」


 思わず声が漏れる。分かっていたけどすごい。あれを防ぐなんて絶対に無理だ。刀で受け止めても指が壊れる。


 それだけで終わらず力也は攻め立てる。あれほどの重量なのにそれを感じさせないのは重力の影響を受けないからだろう、一撃一撃が必殺技なのにそれを連続で振るっていく。


 だが魔来名も流石だった。認めたくないが上手い。体幹を崩すことなく力也の攻撃を躱し続ける。それだけじゃない、隙がないんだ。俺たちに背を向けるタイミングが一度もない。


 それをすごいとは思うけど、だけど俺たちも追いついた。


 魔来名の両側に俺と香織がつく。正面から力也が攻め俺たちがサイドから叩く。

 両手で振りかぶったシンクロスで斬りかかり香織も桃色の刃で魔来名を襲った。


「く!」


 だが、それは魔来名に防がれる。シンクロスは刀で、天志は鞘で。魔来名は俺たちを見ることなく防いでいた。


 なんて力だ。両手なのにビクともしない。


 まるで宮本武蔵の二刀流。多勢に無勢、その窮地を手数で捌く気か?

 魔来名は腕を振るい俺と香織の攻撃を弾き天黒魔と鞘で攻撃してきた。それを俺も香織も防いでいく。


 そこへ力也がグランを振り下ろす。躱すしかない、どうするつもりだ?

 魔来名の取った行動、それは回避と同時に攻撃だった。頭上から振り下ろされるグランの攻撃、それを横に動くなり香織に襲い掛かる。それでグランは空振り、魔来名の振るう刀が香織に迫る。


 グランの攻撃は躱されたが、しかしそのせいで魔来名は俺に背を向けている。


 隙ありだ。無防備な背中にシンクロスを突く。

 だがその一撃は躱されてしまった。


「なに!?」


 こいつ、背中に目でも付いてるのか?


 香織を蹴り倒し今度は俺に向かってくる。紫閃を黄色の十字架で防ぎ鍔ぜり合いになる。背が高いため睨み上げるが、そこで気づいた。


「ん?」


 魔来名は、俺を見ていない。見下ろしているがもっと下だ。なんだこいつ、どこを見てる? 


 そう思い俺も地面を見てみると外灯の光によって俺と魔来名の影が伸びている。

 そこへもう一つの影が魔来名の背後から近づいて来た。それを見て魔来名が俺を押し退き横に回避、その直後グランが地面を叩き壊す。


 俺は尻もちをついた状態で魔来名を見上げていた。

 こいつ、影を見て俺たちの動きを察知していたのか? 

 力也も攻めるが攻撃を躱された隙に鞘で腹を殴られ後ずさっていった。


「力也! くそッ」


 数はこちらが多いのにむしろ追い詰められている。駄目だ、そんなこと。誰一人死なせないって昨日誓ったばかりなのに!


「みんな下がってろ!」


 起き上がるなりシンクロスから手を放す。それは地面に落ちることなく浮遊し回転していった。


「……ほう」


 魔来名とてこれを見るのは初めてか。無感情に近い表情がこの時だけ僅かに崩れる。この中でスパーダの扱いだけなら俺が一番うまいんだ。本当かどうか分からない。だけど記憶がなくても魂が覚えている。真偽はともかくそれを今活かす!


 俺は回転するシンクロスを投げつけた。すさまじい風切り音を響かせシンクロスが魔来名に迫る。


 魔来名は鞘を捨て天黒魔を両手で構えた。攻めるシンクロスの回転、それを天黒魔で防ぐ。衝突に火花を散らしシンクロスは弾かれていった。だが終わらない。再び回転を始めた刃が何度も魔来名に襲い掛かる。


「む」


 右、左と弾かれるが何度も襲う。それを魔来名は幾度も防ぐ。正確なまでの迎撃、まるで機械のようでその動きには無駄も焦りもない。


 弾かれたシンクロスが魔来名の背後に落ちた。

 瞬間だった。魔来名が俺に天黒魔の切っ先を向け走ってきたのだ!

 早い! まずい、シンクロスを操るが間に合わない!


「させない!」 


 俺と魔来名の間に香織が入り込む。それで突きを防いでくれた。


「ありがとう」

「ううん、平気?」

「ああ。だが」


 まさかシンクロスの遠隔操作、その隙を突かれるなんて。油断してたわけではないが。


「こいつ」


 本当に、強い。あれほどの戦いをしたのに息が一切乱れていない。まだまだ余力がある。さらにこの短時間で弱点を見抜く洞察力とそれを即実行できる精神力。


 魔来名を見つめながら湧き上がる感情に表情が渋くなる。

 スパーダ同士の戦いは異能戦。それがすべてだと思っていた。強い能力を持つ者が一番強いと。でもそれは違った。


 実力だ。使い手の実力が違う。


「遅くなった」

「星都」


 そこで腹に手を当てていた星都が歩いてきた。多少まだ痛むようだがもう動けるようだ。


「お前ら下がってろ、巻き込む」

「待て星都、一人は駄目だ」


 星都はそう言うとエンデュラスに組み込まれている時計が回り始める。それもさきほどよりも速い。目が回るほどの回転が針を進ませていく。


「一人でやったらやられるぞ!」


 さきほどやって分かる、一人で戦うのは危険だ。なにをしてくるか分からない。

 それで言うのだが、星都も譲らなかった。


「だからだろ、手を抜いて勝てる相手じゃねえ!」


 星都の言うことも分かる。分かるけど!

 俺は訴えるが星都は小さく笑っていた。


「心配すんな、死ぬつもりはねえよ。当たり前だよなあ? 今までどれだけ死ぬのが怖くて怯えてたと思ってる」


 それは俺の知らない星都の側面。いつもおちゃらけている男はその実俺に要らぬ不安を与えないためにその恐怖を胸にしまっていた。

 けれど今は違う。その顔は笑っている。


「でもさ、お前が一緒に戦おうと言ってくれた時、嬉しかったぜ」


 最後にウインクして星都は魔来名に振り返る。その表情はすでに険しいものになっており意を決めた星都は走り出す。


 その速度、それは先ほどの二倍はあった。体が動く風圧が地面の落ち葉を舞い上がらせ魔来名に攻める。まるで竜巻のような暴威を携えて星都は突撃していた。対して魔来名は刀を中心に置く正眼の構え。


 両者の衝突、星都が放つ最速の一突き。それは砲弾か巨大な銛そのものだ。星都自身が刃となって魔来名を襲う。


 二人が交差する。魔来名はエンデュラスの刀身に天黒魔を当て横からずらすように力を入れたのだ。そのため突きの軌道が逸れ星都は魔来名の横をすり抜けていく。

 最速に対して、魔来名は最小の動作で対処していた。


「そんな!」


 なんだ今のは。理屈は分かるが、どんな動体視力と技術だよ!


 だがまだだ。星都も諦めていない。正面から何度も斬りかかりそれはマシンガンの連射のようだ。それを魔来名はすべて逸らしていく。正眼の構えは基本にして最も隙のない構えだ。次に側面や背後に回り込むがそうするとどうしても遠回りになり魔来名の旋回に追いつかれる。そうして最速と最小の攻防は行われていった。


 二人の戦いは本当に竜巻だ。その中心で戦い合っている。星都が攻め魔来名の防戦一方だが俺たちが加勢できない。


「星都!」


 だけど。


「諦めるかよ!」


 星都の声が響く。動きが速すぎて声が間延びしている。それでもその声はしっかりと届いた。


「全員で」


 そこに込められた熱い思いを乗せて。


「生き残るんだろうが!」


 星都……。

 俺が知らないだけで長い間星都はセブンスソードの恐怖や不安に耐えてきた。殺されるかもしれないという未来を抱えて。


 だけど今は違う。今は生きるために戦っている。さきほど言ってくれた言葉と浮かべた笑みには不安ではなく希望があった。

 その思いに、いつしか俺の心も打たれていた。


「うおおお!」


 その思い、その一念がついに届く。星都の攻撃が魔来名からスパーダを放したのだ。天黒魔は地面に落ちカランと音を立てる。


 そうか! いくら逸らすとしても何度もすれば手が痺れ握力が落ちる。あの攻撃は無駄じゃなかった、未来の扉をノックし続けていたんだ。


 その扉が、ついに開く!


「よし!」


 今なら無防備だ。


「いけえええ!」

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