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後宮の縁切り女官 ~悪縁を断つ救国の巫女は皇弟に溺愛される~  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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犯人を必ず捕まえる、許さない

 

 その後、県尉けんいと夫人が落ち着くのを待って、詳しい話を聞いた。


 まず、魏祥ぎしょうが行方不明になった翌日――宦官のでんたんが屋敷を訪ねて来て、「昨夜、娘さんが近くの寺院から逃げました。正直に言いなさい、こちらに戻っているのでしょう? 家のどこかにかくまっているなら、大変なことになりますよ!」とまくし立てたそうだ。

 夫妻にとっては青天せいてん霹靂へきれきで頭が真っ白になりつつも、魏祥ぎしょうは帰省していないと説明し、でんたんに屋敷中を案内して、隠し立てなどしていないことを示したのだという。

 でんたんが帰って行ったあと、夫妻は頭を抱えた――魏祥ぎしょうは確かに大胆で悪戯好きなところがある。しかし性根は真っ直ぐで、意外と辛抱強く、義理堅い娘であるので、世話になっているおう賢妃けんぴの顔に泥を塗るような真似をするとは思えない。

 これは何かあったに違いない、事態をおおやけにして娘の行方を大々的に探すべきではないか……県尉けんいがやっと心を決めたところで、小さな木箱が届いた。

 それは屋敷の裏口に置かれており、使用人が発見したとのことだ。

 手紙がついていたので、県尉けんいはまずそれを開いた。

 そこにはこう書かれていた。


『お前の娘を預かっている。帰してほしくば、明日の夕刻までに五百貫用意し、寺院裏手の階段下にある灯籠の横に置け。見張りはつけず、誰にも話すな。言うとおりにしなければ、もう一本切る。箱を開けてみろ』


 木箱を開けると、若い娘のものとおぼしき華奢な指が一本入れられていた。切断された状態で、布にくるまれていたそうだ。

 魏祥ぎしょうは子供の頃、刃物で人差し指を深く切ったことがあり、木箱に詰められた指にはその傷があった。


 五百貫といえば、平民が十年働いても稼げないような大金だが、夫妻はなんとか用意し、手紙の指示に従った。

 しかし約束を守ったのに娘は戻されず、夜が明けてふたたび手紙が届いた。


『しばし待て。誰にも話すな。こちらが送った手紙はすべて焼いて処分しろ。さもなくば二本目を切る』


 夫妻は娘がこれ以上傷つけられることに耐えられず、前回届いた手紙と今回届いた手紙、計二通をすぐに焼却した。

 それから鬱々とした日々を過ごしていると、本日数刻前、三通目の手紙が届いたそうだ。


『あと五百貫用意し、前回同様、寺院裏手の階段下にある灯籠の横に置け。これから半年のあいだ沈黙を守ることができれば、娘を帰す。お前の娘はもう指を切らないでと懇願しているぞ。娘には、痛い思いをするかどうかはお前の両親次第だ、と伝えた』


 本日届いた手紙はまだ焼いていなかったので、朱翠影は現物を預かることにした。

 そして告げた。


沶竟いけいでは最近、裕福な家の娘が何人か行方不明になっています。そして娘が消えたあと、両親の元に指の入った木箱が届いたという噂があるのですが、なぜかそれに関してはおおやけになっていません」


「そんな……ほかにも……」


 夫人が身も裂かれんばかりに顔を歪めた。

 県尉けんいは真実を悟ったようで、目を真っ赤にして震えている。

 傷ついている夫妻を前に、朱翠影は奥歯をぐっと噛み、すべきことに集中した。

 これから夫妻にとって耳の痛い話を伝えなければならない。つらい役目だが、誰かがしなければならないことだ。そうしないと夫妻はこれから先も蛇の生殺し状態で、ずっと苦しみ続けることになる。


「被害者の家族が全員、口を閉ざしている理由が分かりました。皆、娘を愛している――だから脅迫状の指示に従い、いまだに指の件を秘密にしている。けれどその沈黙こそが犯人を助け、新たな犠牲者を生んでいるのです。県尉けんい、おそれながら申し上げます――追加で五百貫支払ったとしても、半年後にお嬢さんが戻ることはないでしょう。なぜならほかのご家庭ではすでに、誘拐から半年が経過しているにもかかわらず、誰ひとりとして無事に戻った娘と再会できていないからです。そもそも帰すつもりなら、一回目の金銭授受が成立した時点で、解放しているはずです」


 あとはつらいだけの時間が流れた。

 ずっと耐えていた県尉けんいが声を上げて泣き崩れ、夫人は彼に縋りすすり泣いた。


 雪華は込み上げてくる熱いものを呑み込み、膝の上で拳をぎゅっと握り締めた。

 犯人を必ず捕まえる――許さない。



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