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後宮の縁切り女官 ~悪縁を断つ救国の巫女は皇弟に溺愛される~  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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後宮の禁忌

 

 朱翠影と『甘やかし議論』を繰り広げているうちに、門衛によって通桂つうけい門の扉が開かれた。

 どうやら準備が整ったらしい。

 通桂つうけい門は二重扉構造になっていて、手前の頑丈な扉が開いても、その少し先に格子状の扉がもうひとつある。

 訪問者が中間部分に進むと、背後の扉が閉められ、そこでやっと奥の格子扉が開かれる仕組みだ。

 格子扉の先は後宮の入口部分で、石床を敷いた広場になっている。洒落た灯籠や、手入れのされた植物が見えた。


 朱翠影が手配してくれた後宮内の案内人・甜甜テンテンは既に待機していた。

 格子扉の向こうに、丸顔で陽気そうな娘が佇んでいる。年齢は十六、七歳だろうか……雪華と年齢はそう変わらないようである。好奇に瞳を輝かせ、首を長く伸ばしてこちらを眺めている。髪は真ん中で分けて、両耳の上で団子形に結っており、それがとても良く似合っていた。

 女官と視線が絡み、雪華は思わず笑みを浮かべた。

 隣に立つ朱翠影を横目で見て口を開く。


「私、案内役の甜甜テンテンとは上手くやれそうです」


「それはよかった」


 朱翠影がほっとしたようにそう返してきた。


「では行ってきます」


 雪華が前に進もうとした、その時。


「――待った」


 朱翠影が何かに気づいた様子で瞳を細め、雪華を引き留めた。

 何事かと驚いて彼のほうを振り返ると、朱翠影は鋭い視線で奥を見据えている。

 ……どうしたのだろう?

 雪華も彼にならい、広場の奥を視線で探った。


「……あの女官は?」


 広場右奥の木陰に、初老の女性が佇んでいる。柳のようにしなやかな佇まいで、どことなく得体が知れない。目鼻立ちは整っていて身なりも上品な女官であるのだが、まとっている空気が海千山千で、堅気かたぎに見えない。「あれは三百年生きた妖狐です」と言われたら、信じてしまうかも。

 朱翠影が身をかがめ、耳打ちしてきた。


「とんだ曲者くせものが現れた――あれはハク女士ニュイシ――彼女は『後宮の禁忌』と呼ばれています」


「後宮の禁忌?」


「絶対に関わってはいけない人です。目を合わせず、近づかず、速やかに離れるようにしてください」


 雪華は安心させるように朱翠影の手の甲をぽんぽんと軽く叩き、頷いてみせた。

 後宮の禁忌、ハク女士ニュイシね――これは幸先が良いのか、悪いのか。さてどちらだろう。

 雪華は気を引き締めて、後宮へ足を踏み入れた。



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