グラスに注がれた記憶
誰もいない部屋のテーブルに
グラスに注がれた水が
泳ぐことも溺れることもできない適量で
忘れられたように置かれている
自分の部屋であって
自分の部屋ではない
水のように透明な記憶は
最後に蛇口を捻った日を思いだせないでいる
承認欲求に渇いて干涸らびた
喉にグラスの水道水を流し込むと
微量の塩素の香りがした
常識とか秩序やらに
殺菌処理された僕の知識は
源流の味をまだ知らない
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読んでくださりありがとうございました