助太刀
次に挑むモンスターはゴブリンだ。集団で行動しており、知能は低い。だが、鬼裏ともなると役割分担をしながら攻撃を仕掛けてくる。今まさにケンチャンはその状況に陥っていた。
タンク役のゴブリンにアタッカー役のゴブリン。更に遠距離攻撃型のゴブリン、と厄介なことこの上ない。
まず俺は遠距離攻撃型のゴブリンから倒すことに決めた。盾を持っているタンク役のゴブリンを踏み台にして、大きく飛び上がる。遠距離攻撃型のゴブリンから放たれる矢を回避し、双剣で首を切りつける。赤いエフェクトと共にHPを全損させる。
どうやらさっき倒したゴブリンが司令塔だったようだ。残ったタンク役のゴブリンと二匹のアタッカー役のゴブリンが一斉に攻撃を仕掛けてきた。お互いの攻撃が邪魔し合っているようで、こちらまで攻撃が届いていない。その隙を突き、三体のゴブリンの首をはねることに成功した。
ゴブリン一体につき、3Gで、四体倒したので12ゴールドの収入になった。
ケンチャンは今はソロで活動しているが、いつかはパーティーを組むのも悪くない、と思っているので近場のパーティーを見学してみた。
「タンク二人にアタッカー二人、回復役が一人のパーティーか」
今はそのパーティーがゴブリンのパーティーと戦っているところだった。
ゴブリンのパーティーの方はタンク一体にアタッカー二体、遠距離攻撃型のゴブリン一体に回復役のゴブリン一体だった。
人間の方のパーティーは、全員バトルロワイアルの勝者であるようで、みんな武器を装備していた。だが適応率がそこまで高くないのだろう。その動きはぎこちない。
そうこうしているうちに、遠距離攻撃型のゴブリンがアタッカーの人間一人を倒した。今参戦すべきか迷ったが、横やりは嫌われるので、静観することにした。
タンク役の二人がアタッカーのゴブリンを一体でも倒していれば、状況は大きく変わっていたと思う。引き付けるだけ引き付けて後は防御、なんて戦い方をしているからダメなのだ。
また遠距離攻撃型のゴブリンがアタッカーの人間を倒した。ここでケンチャンは参戦することを決める。
「アタッカー二人がやられたな。参戦するぞ!」
と言ってから戦いに加わる。
「サンキュー」
タンク役の一人から声がかかる。
「アタッカー一体だけでも倒しておいてくれ」
と言い放つと、回復役のゴブリンを狙う。
タンク役のゴブリンが、そうはさせまいと威嚇しながら立ち塞がるが、器械体操部仕込みの飛び込み前転でかわしていく。
そして回復役のゴブリンの首を一閃。次に遠距離攻撃型のゴブリンを狙っていく。矢がこちらに向けて放たれるが、体を横に一回転させて避ける。たどり着いた先で双剣をクロスして倒す。
タンク役の方を見ると、指示どおりアタッカーを一体倒していた。
「よくやった。後は任せてくれ」
と言い、タンク役のゴブリンとアタッカーのゴブリンを切り刻む。
ちょっとグロい感じになってしまって申し訳なく思っている。
「助かったよ。ありがとう」
そう言ってタンク役の男達が近付いてくる。
「助かりました。ありがとうございます」
回復役の女性もそう言ってくる。
「何かあった時は、お互い様ですから」
ケンチャンはそう言って、その場を後にした。
「せめてフレンド交換をしませんか?」
と言われたが、
「やられてしまったアタッカー役の人に申し訳ないですから・・・」
と言ってやんわり断った。
倒した分のゴールドは貰っておいた。
次に相手にしたのはオーガだ。三メートルを超す身長と右手に装備してある棍棒に注意だ。
棍棒を振り回すと、こちらに襲いかかってくるオーガ。ゴブリンと同じく知性は低いが、リーチと腕力が違う。どちらも三倍ほどあるのだ。
しかし、そんなことはケンチャンには大した問題ではない。あん馬の要領で開脚旋回でオーガの首もとに迫る。
ガギンと音がしてその方向を見ると、オーガは首輪をしていた。ならばと顔に一振入れる。オーガは痛がっているが、まだ倒れる素振りは見せない。ならばと、武器を持っている右腕を切り落とす。これで脅威になる武器が消えた。右の双剣でオーガの心臓を一突きにした。
オーガは6G落とした。効率を考えるとゴブリンを倒した方がずっと良い。ただ首輪も落としたので、どれくらいの値がつくのか、楽しみだ。