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第4話

翌日、ギルは朝食を済ますとすぐにヴェラの待つ林へと出掛けた。

いろいろな話を聞きたかったし、話したいこともたくさんあった。

それは一時的にロザーナの件を忘れさせてくれるほど魅力的なことだった。


林につくと既にヴェラが待っていたが、その目は随分と眠たそうだった。

「こんなに早く来るとは思わなかったよ」

そう言いながら大きなあくびをしている。

よく分かったね、とギルが言うと「視えたからね」と事もなげに言ったのだった。

ここにきてギルは不思議に思った。視えるとはどういうことなのだろうと。

「じゃあ歩きながら話そうか」

そう言ってヴェラは林の奥へと歩き出した。

「どこへ行くの?」

ギルの問いにヴェラは「宝探しだよ」と振り向くことなく手をブラブラと振っている。

いいからついてこい、ということなのだろうとギルは慌ててヴェラの後を追ったのだった。


「例えばさ」

ヴェラは足元の石を2つ手に取った。

「沢山石が転がってるところでこれを蹴飛ばしたとして、この石がこっちの石に当たるとするだろ?」

そうするとどうなる、とヴェラ。

「当てられた石が、他の石に当たる」

かな、とギル。

「だよね。あたしの蹴った石は次の石に当たって、その石がまた次の石に当たっていく」

ヴェラは石を投げ捨てた。

「でさ、それってあたしが最初の石を蹴った時には、既にそういう結果になるって決まってるわけさ」

分かるような分からないような、ギルにはどう反応するべきか分からなかった。

「あたしが視えてるのはね、その最初の部分。最初の石を蹴った瞬間みたいなものなんじゃないかなと思ってる」

言い換えればそれは物事の取っ掛かりのようなものだろうかとギルは頭を働かせた。

取っ掛かりが次の出来事を起こし、更に連鎖的に起こる物事がヴェラには視えているということなのだろうか、と。

「んーなんて言えばいいんだろうね」

そう言いながらヴェラは頭を掻いている。考えを上手く言葉にできないのがもどかしそうである。

「なんだろうね、これを言い表す言葉をあたしは知らないんだよ」

もしかしたらまだそんな言葉はないのかもしれないね、とヴェラは首をひねらせた。

「まぁこんな国じゃ新しいものはなかなか生まれてこないだろうしね」

どういうことだろう、とギルは不思議そうな顔をした。

「この国はドゥムジが治めてるだろ?」

そのドゥムジは大きな変化を嫌っているのだ、とヴェラは言う。

「だから大陸を統一したんだとさ。そうしたら大きな変化が起きないだろうからってね」

まさか、と思ってギルは聞く。「まさかドゥムジに会ったことがあるのか」と。

「あるよ」

と返事はとても軽かった。

「いろいろと茶々をいれられるのが面倒でね、一度直接会いに行ったのさ」

また新しい話が出てきた、とギルはワクワクした。

少し前を歩くヴェラへと駆け寄ると、ギルは話の続きを促した。

「その話はまた今度にしようか」

ちょうどその時目的の場所へと辿り着いたようだ。

そこは山道の途中なのだが、脇が広く平らに慣らされている広場のような場所だった。

「ここを掘るの?」

「いや、掘るのはあっちだよ」

ヴェラが指さしたのは広場を囲む斜面の一角。

一見何もなさそうな場所だが、そこで間違いないのだとヴェラは言う。

「なに、2日も頑張れば入り口が見えるだろうさ」

あたしには視えたからね、そう言ってヴェラはニカッと笑ったのだった。

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