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追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~  作者: さとう
第八章

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学園のイベント

 東方にあるエルフの国、フリーデン王国。

 その反対側……西方にある国。ロストワン帝国。

 中央諸国クロスガルドに匹敵するほど巨大な大国家。その帝都の居酒屋に、一人の若い女がいた。


「おかわり」

「あ、あいよ……あ、あの、姉ちゃん、大丈夫か?」

「何が?」


 女は、真っ白だった。

 白い肌。白い着物、純白の長い髪は丁寧にまとめられ、真っ赤な簪が差してある。

 着物の下半身には深いスリットが入り、足を組みかえると妖艶な生足がチラリと見えた。

 居酒屋にいる男たちはゴクリと唾を飲み込み女性を凝視する。だが、近づけない。

 彼女は誰でも受け入れた。

 だが、受け入れる条件の一つが「自分よりお酒が強いこと」だった。

 居酒屋の店主は、恐る恐る聞く。


「姉ちゃん、その……もう樽七つ目だぜ?」

「そうみたいね。ここのお酒、すごく美味しいからつい、ね」


 樽七つ。

 王城のパーティーでも、ここまで飲むだろうか。

 女は白金貨を十枚ほど店主に渡している。樽七つどころか七百出しても白金貨一枚の価値もないが、女は気にしていない。

 店主としては、お金をもらった以上、出すしかない。

 だが……女の飲む量は『異常』だった。

 女の足元には、飲み比べで負けた男たちが酔いつぶれている。

 すると───……女は、ピクリと眉を動かす。


「な、何かご注文でも?」

「……ああ、逝ったみたいね」

「え?」

「カワいい妹と、その弟が死んだみたい。ふふ……ダディの友達もやるじゃない」

「へ?」

「アタシはともかく……バハムートは動くわね。むしろ、動かないはずないわ。あの子が一番、ダディを憎んでいるもの……」


 女は立ち上がり、大きな欠伸をする。

 店主はガバッと頭を下げ、揉み手しながら言った。


「ま、まいどあり!! 姉ちゃん、いつでも来てくんな。姉ちゃんなら、この店がなくなるまで無料にしてやるからよ!!」

「ありがと」


 女はニッコリ笑い、軽く手を振って呟いた。


「じゃあ───……もう、二度と来れないわね」


 この日、ロストワン帝国が地図から消えた。

 建物も、人も、何もかもが消え失せた。

 帝国があった場所は、一夜にして更地となっていたそうだ。まるで、巨大な生物が帝国ごと丸呑みしたように、帝国があった場所は何もなかったという。

 

 この日を境に、世界は動き始めた。


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


 リンドブルムと別れ、学生寮へ戻ると……部屋でマルセイが泣いていた。


「うおっ……ま、マルセイ? ど、どうした?」

「……もう、女の子なんて信じない」


 あ、これヤバいやつだ。

 俺は無言で部屋を出ようとしたが、マルセイの腕が俺の腕をガッチリつかむ。


「逃がさないよぉ……リュウキくん、今日はぼくの話を聞いてくれぇ」

「は、離せ!! 離せって!!」

「だから話すよ……朝までたっぷりとねぇ」

「いや『話せ』じゃなくて『離せ』だって!! おま、デートじゃなかったのかよ!? つーか力強いっ!?」


 軽く闘気を込めて引きはがそうとしてるのに、マルセイの腕は全く離れない。こいつ、ちょっとぽっちゃりしてるくせになんて力だよ!?


「聞いてくれよ、ぼく、ぼく……初めて女の子に遊びに誘われてさ、オシャレして、香水付けて行ったんだ。そしたら、そしたら……彼女とその友達が五人くらいいてさ、ぼく、ぼく……た、ただの財布役だったんだよぉぉぉぉぉ!!」

「…………」

「うっうっ……店とか全部奢ってさ、何も、何もなかった……財布だけが軽くなってさ」

「……お、おお」


 想像以上に憐れな話だった……仕方ない、今日はこいつに付き合ってやるか。


 ◇◇◇◇◇


「ふぁぁぁぁ……」

「リュウキくん、眠そうだね」

「ああ……」


 翌日。マルセイと徹夜で話してたせいか眠い……ああもう、最終的には「女なんて信じない!」で終わったけど、なんとなくまた引っかかりそうな気がする。

 サリオは、レノに言った。


「そういえば、レノも眠そうだね」

「あー……筋トレしてたからな。そういやアキューレ、お前何してたんだ?」

「わたし、レイとアピアと一緒に買い物してた」

「女の子だけで買い物かぁ。華やかだね」

「うん。すっごく楽しかった」


 アキューレも休日を満喫したようだ。

 二学期になり、学園生活にもだいぶ慣れた。戦いやダンジョンにも慣れ、冒険者等級も順調に上がっている。

 すると、担任教師のホスホル先生が入って来た。


「え~……お知らせです。今期は『学園祭』があります。今日の午後は部門授業ではなく、クラスで行う学園祭の出し物を決めようと思いますので……では、授業を初めます」


 またまた、いきなりな話だった。

 学園祭。そういえば、そんなイベントもあるとかサリオから聞いたような。

 とりあえず、また面倒なことにならないといいけどな。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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