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制裁

 ロイを埋葬し、残った荷物をまとめて森を出た。

 そのままギルドへ戻る。ボロボロの血塗れのままギルドに戻ると、案の定注目された。

 僕は、冒険者登録をしてくれた受付さんの元へ。


「り、リュウキさん? ですよね……ジャコブさんの報告では、死んだ、と」

「違います。殺されました」

「え……」

「ジャコブ。奴にロイは殺されました。ロイの冒険者プレートは? ジャコブは、その中に入っている金が目当てで、僕とロイをゴブリン討伐に誘い、殺しました」

「そ、そんな……少々、お待ちください」

「あ、これを。ロイの遺品です」


 僕はロイの荷物を渡す。中には当然、冒険者プレートは入っていない。

 受付さんは魔道具(画面が光る何か?)で確認し、驚いていた。


「……つい先ほど、ロイさんの冒険者プレートのお金が、全額引き出されています」

「ジャコブに違いありません」

「……憲兵隊を手配します」

「あの、すみません……あいつを捕まえるのに、僕も同行させてください」

「え……わ、わかりました」


 僕は、無意識に『闘気』を少し解放していた。

 目には見えない『圧』を感じ取ったのか、受付さんは頷く。

 ギルド内にいる冒険者によると、ジャコブは依頼を終えた後、近くの酒場で仲間と共に飲んでいるらしい。

 受付さんが呼んだ憲兵隊たちが到着。リーダーが僕の元へ。


「確認する。間違いなく、ジャコブが新人冒険者ロイを殺害したんだな?」

「はい」

「間違いないな? 神に誓えるな?」

「誓えます」


 すると、リーダーの後ろにいた憲兵が頷いた。

 リーダーも確認し、僕の肩を叩く。


「すまないな。『真贋』のスキルで確認させてもらった。もし、きみが嘘をついていたり、質問に動揺するようなら、きみも手配の対象になる。だが、きみの心はまったくブレなかった。真実だということだ」

「……スキル?」

「ん? スキルを知らないのか? ああ、冒険者になったばかりか……とりあえず、あとで冒険者ギルドから説明を受けるといい……行くぞ」


 憲兵隊は、ジャコブの元へ向かう。

 僕は拳を握り、その後に続いた。


 ◇◇◇◇◇


「ひゃ~っはっはっはぁ!! 金が入ったんだ。のめのめ、ぎゃはは!!」


 ……酒場の入口からでも聞こえる。

 ジャコブ。僕と、ロイを殺した冒険者の声。

 身体の中が燃えているように熱い。すると、憲兵隊のリーダーがドアを強く開け中へ。


「動くな!! 憲兵隊だ!! 冒険者ジャコブ。貴様を逮捕する!!」

「はぁぁ?…………あ、あぁ!? テメ、なんで」


 僕に気付き、ジャコブはグラスを投げ捨て立ち上がる。

 酒場の中には、十五人ほどの冒険者がいた。全員、ジャコブの仲間だろう。

 憲兵隊が誰も逃げられないよう入口を固める。

 僕は……もう、我慢できなかった。


「どうして、ロイを殺した……僕を、殺した」


 そう質問すると、ジャコブはため息を吐いて槍を手に取る。


「はぁ~……ま、教えてやるよ。お前みたいに貴族の坊ちゃん丸出しのやつと、商会の四男なんてのはな、いい金づるなんだよ。ちょいと餌を見せればホイホイ付いてくる」

「…………ッ」

「冒険者の心得……世の中そう甘くない、騙される奴が悪い。ってか? はははははっ!!」


 もう、我慢できなかった。

 僕の肩にリーダーの手が置かれるが、それを振り払って走り出す。

 邪魔なテーブルをなぎ倒すと、ジャコブが椅子を蹴り上げた。


「っ!!」

「馬鹿が!! 死ねっ!!」


 椅子を片手で払う。

 すると、ジャコブの鋭い突きが心臓を狙って飛んできた。


「『強化』」


 ねっとりと、濃厚な闘気が僕の全身を一瞬で駆け巡る。

 目を強化したら、ジャコブの攻撃が物凄くよく見えた。

 確かに鋭い突きだ……でも、なんだか遅い。


「───なッ!?」


 僕は槍を素手で掴む。


「き、『強化』!! この……ッ!! う、嘘だろ!?」


 ジャコブは槍を引っ張るが、びくともしない。

 おかしいな。そんなに力を込めてないのに。

 僕は槍を取り上げ、柄の部分に力を込めて『ねじる』……何度も、何度もねじる。

 槍の柄がらせん状にねじられ小さくなり、僕は槍を捨てた。


「冒険者の心得……僕も学んだよ」

「て、てめぇ……ま、魔力なかったはずじゃぁ!?」

「あんたみたいなやつは……冒険者語るんじゃねぇぇぇぇっ!!」


 僕の拳がジャコブの顔面に突き刺さり、ジャコブは酒場の壁に激突して気を失った。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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