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毒魔凶龍テュポーン

 レイたちは、ギガントマキアの構成員たちを全て倒し集まっていた。

 それぞれ、サリオの手当てを受け傷は治っている。

 上空にいたアピアも周囲を『鷹の眼』で、周囲に敵の存在がないことを確認。ワイバーンに命じ、地上に降りて仲間たちと合流した。

 レイは、満足そうに言う。


「みんな、お疲れ様」

「いや~……マジでオレら最強だぜ!!」

「調子に乗らないの。リンドブルムの『闘気』があったからこそ、こうして戦えたのを忘れないで。本来なら、あたしたちが太刀打ちできるような組織じゃないのよ? ここに転がってる雑魚だって、本来なら最低でもB級冒険者くらいの強さなんだからね」

「わ、わかってるよ」


 レノがムスッとする。

 すると、無傷のリンドブルムがボロボロの人間を引きずってきた。

 その人間を投げ、レイたちの前へ。


「ここに、学生がいるみたい。この人が言ってた」

「学生?」

「うん。チーム『アークライト』だって。イザベラ? とかいう人が連れて来たって」

「「「「アークライト!?」」」」


 全員の声が揃った。

 リンドブルムは首を傾げる。

 レイは、サリオに聞いてみた。


「アークライトって……キルトたちのチームよね」

「う、うん。リュウキくんの義弟、だよね」

「オイオイオイ、なんでそいつらがここにいるんだよ? まさか、オレらと同じ、ギガントマキアを潰しに来たんじゃねぇのか?」

「そう、なんでしょうか? 私にはどうも、別の意図があるような気がします……」


 全員が無言になる。

 リンドブルムは、レイの背中をパシパシ叩いた。


「とりあえず、お友達さがそ」

「あ、うん。そうね……みんな、宮殿内に踏み込むわ。リュウキも───……」


 と、次の瞬間……宮殿から爆破音が聞こえた。

 ギョッとして宮殿を見るレイたち。

 その音が、宮殿の反対側からリュウキが吹っ飛ばされた音だとは気付かない。

 だが、リンドブルムは気付いた。


「───ッッ!! みんな、ここはまずい、逃げ「逃げるなんてひどいなぁ」


 と───上空に、人が浮かんでいた。

 紫色の髪をなびかせた、美少年がそこにいた。

 

「や、リンドブルム」

「っ……って、テュポーン、お兄さま……」

「やれやれ。臆病なお前が、人間を連れて殴り込んでくるなんてね。人間の国でチヤホヤされながら、のんびり暮らしていればいいのに」

「……っ」


 レイたちは、動けなかった。

 目の前に浮かぶ『何か』は、レイたちを見ていない。

 リンドブルムが言った『お兄さま』という言葉で、少年がドラゴンだということは理解できた。理解、できてしまったのだ。

 最強生物。ドラゴン。

 リンドブルムの闘気をわずかに分けてもらったからわかる。

 これは、バケモノだ。

 勝つとか、負けるとか、そういう次元に存在しない生物。

 

「お、お兄さま……あの、エルフはどこ?」

「エルフ? ああ、エキドナが喰おうとしてるエルフか? それなら宮殿にいるよ」

「……そ、その、その子。返してもらうこと、できる?」

「…………」


 少年は無言になり、一瞬でリンドブルムの目の前へ。

 そして、その首をガシッと掴み、顔を近づけてにっこり笑った。


「お前、誰に、何を命令してる?」

「ち、ちが」

「スヴァローグが死んだの、お前も関わってるよな? 御父上の力を継承した人間、そんなに頼りになるのか? 最弱のドラゴンであるお前が、オレに、オレに命令できるほど強気になれるような、そんなやつなのか?」

「ち、ちが、違う……うっ!?」


 テュポーンに掴まれたリンドブルムの首が、ジュワジュワと音を立て溶けていく。

 さらに、リンドブルムは吐血。首筋に紫色の毒々しい模様が広がっていく……毒だ。

 八龍で唯一の毒を使うドラゴン、テュポーン。

 紫色の闘気が、ジワジワとあふれ出し、今まさにリンドブルムの首を溶かし、千切り飛ばそうとした。

 

 次の瞬間、宮殿の壁が吹き飛び、エキドナが地面を転がった。


 ◇◇◇◇◇


「いったぁ……」


 エキドナはむくりと起き上がり、頬を撫でつけた。

 

「おい、何してんだよ」

「あらテュポーン。ちょっとねぇ……ふふ、油断しちゃった」

「はぁ?」

「ぐ、が……」


 テュポーンは、ようやくリンドブルムを投げ捨てる。

 そして、宮殿を破壊しながら歩く、一人の少年……リュウキを見た。

 顔以外の身体が、鎧のような鱗に包まれている。


「あれが御父上の力を継承した人間か……へぇ、なかなか仕上がってんじゃん」

「ええ。感情を爆発させて、あれだけの力を引き出したみたい。ね、面白そうじゃない?」

「アレ使って遊ぶのか? 面白そうだけどさ」

「ええ。ふふふ、楽しくなりそうね」


 リュウキは翼を広げ、絶叫した。


『グゥォォォォォォォォォォォォォォォォォ───ッッッ!!』


 その叫びは、完全に理性を失った野生の獣のようだった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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