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本気で戦う

 俺は右手を巨大化させ、全力でエキドナに殴りかかる。

 こいつは今一匹だ。こいつを倒せば、残りはテュポーンだけになる。今ここで、エキドナを倒す。

 

「だりゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

「あら、かわいい拳」


 バジっ!! と、俺の拳がエキドナに止められた……片手で。

 想定内。俺はすぐに手を離し、素早くスキルをセット。

 スキルは『炎龍闘気』で、両手に炎を纏わせ再び殴りかかる。


「だらぁ!!」

「ふふっ」


 パシン、パシンと、俺のラッシュが片手で弾かれる。

 エキドナは一歩も動かない。右手で軽く叩き落とすだけ。

 俺は、全力のラッシュでエキドナを攻める───……が、当たらない。当たる気配がない。

 

「オォォォォォッ!!」

「ふふ、可愛いわねぇ」

「───っ!?」


 俺の額に、エキドナの人差し指が伸び……軽く、デコピンされた。

 それだけで、脳が揺らされ額から血が噴き出す。

 さらに、壁を突き破り宮殿外へ落下、地面に叩きつけられ地面を転がった。


「───~~~……ッッッ!?」


 頭が揺れ、世界がグニャグニャだった。

 ねじ曲がった世界に、エキドナのような何かが俺の傍へ。


「ゴぁ……」


 首を、掴まれたのか?

 わからない。息がしにくい。

 世界がグニャグニャなのに、声はしっかり聞こえてきた。


「やだ。いけない……反対側に飛ばしてしまったわ。ね、まだやる? あなたを殺したくないの。それと、あなたのお友達も。私たちの『舞台』で踊る、いい人材なのよ」

「……ギ」

「無駄なの。わかる? 人間では、私に勝てないの。あなたはたまたま、御父上の力を手にしただけの人間なの。どういう経緯で御父上の力を手に入れたのかは気になるけど……」

「グ、ギギ……」


 視界が、明滅する。

 息ができない。

 死ぬ。死ぬ……死にたく、ない。


「さぁ、戻りましょう。テュポーンを紹介してあげる。私の半身であり、私の弟。きっとあなたも気に入るわ」

「…………」

「約束通り、イザベラは殺してあげる。ふふ、いいオモチャを手に入れ───」


 俺は、噛みついた(・・・・・)


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


「───あら」


 エキドナは、自身の腕に違和感を感じ、視線を向けた。

 すると……掴んでいたリュウキが、エキドナの右手に喰らい付いていた。

 両目が黄金に輝き、ギチギチと牙が皮膚に食い込んでいる。

 血は出ていないし、皮膚に傷もついていない。ただ、噛まれているだけ。


「もう。食事はまだあと───……」


 と、エキドナはピクリと眉を吊り上げた。


「ウ、ォ」


 リュウキの闘気が、膨れ上がっていた。

 ギチギチギチギチと、エキドナの皮膚に牙が喰い込んでいく。

 エキドナは、リュウキを振り払う。すると、リュウキの身体が真横に吹き飛び、近くの大岩に叩き付けられた。

 大岩が木っ端みじんに砕け散る。

 そして、リュウキが……立ち上がり吠えた。


「ウォォォォォォォォォォォォォ───ッ!!」

「……へぇ」


 リュウキの黄金に輝く闘気が、一気に噴き出した。

 その規模、先ほどの百倍以上。


「……御父上の力が、彼の理性を崩壊させるくらい噴き出しているわねぇ。死を感じたことによる暴走かしら? 面倒ねぇ」

「ガァァァァァァァ!!」


 リュウキの拳が巨大化し、先ほどとは比べ物にならない速度で飛んできた。

 エキドナは右手で払おうとして……軽く舌打ちし、ひらりと躱す。

 この拳は、弾けない。


「なるほどねぇ……」

「がぁァァァァァァァァァァ!!」

「はいはい、落ち着いて~」

「!?」


 ガシッと、リュウキの身体に『蛇』が絡みついた。

 エキドナの右腕が『蛇』になり、リュウキの全身に絡みついたのである。

 リュウキは暴れ、蛇に嚙みつくが、逆にリュウキの牙が欠けてしまった。


「無駄よ。何度も言ってるけど……その程度じゃ、私は倒せないわ。さ、まずはエルフちゃんのところへ行きましょ。お食事して、その後で遊んであげる。ふふ……あなたのお友達も、ね」

「!!」

「人間たち、そしてリンドブルム……どうなってると思う?」

「…………」

「テュポーンは、私みたいに優しくないかもねぇ」

「───」


 次の瞬間、エキドナの右腕が千切れ飛んだ。


「ッッ……何?」

「ウ、ウ……」


 リュウキが、ぶるぶる震えていた。

 何がスイッチだったのか、リュウキの闘気が先ほどよりも『濃く』なっていく。

 ただ、漠然と放出していた闘気が、濃密になっていく。

 そして───両腕と上半身を包む鱗が、下半身を覆う。


「……わぉ」

「グゥゥアァァガァァァァァァァァァァァァァ!!」


 四分の三(スリークォーター)の、『龍人形態』。

 明らかに、闘気の『圧』と『質』が変わった。

 そして、両足の脹脛部分の鱗がガパッと開き、闘気が噴出する。


「っ!!」


 エキドナの目の前に、リュウキの拳があった。

 眼前。半秒もしないうちに、命中する。

 油断、ではない。

 エキドナは、見えていない。

 リュウキの拳が、エキドナの顔面に突き刺さった。


「っぐぁ!?」


 今度は、エキドナが吹っ飛び、宮殿の壁を破壊しながら床を転がった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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