表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~  作者: さとう
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/109

チーム『エンシェント』の戦い

「おぉぉぉォォォォォッ!!」


 宮殿前広場に、レノの絶叫が響き渡る。

 レノは、血まみれで戦っていた。殴られ、蹴られ、サリオの回復魔法が何度かけられても、回復するより早く怪我をする。

 敵はシモン。遥かに格上だが、レノは気合と根性で戦っていた。

 もう、何度回復魔法をかけたかわからない。

 サリオの膨大な魔力をもってしても、魔力が半分を切った。


「レイさん!! もう一度支援魔法を!! レノ、回復する!!」


 ずっと魔法を途切れさせない。

 レイは、サリオの支援魔法と回復魔法こそ、このチームの要だと確信した。

 当のサリオは、魔力をひたすら放出する。


「あはは……喜ぶべきなんだけど、けっこうキツイね!!」


 回復魔法のレベルは7に上がり、支援魔法もレベル5になった。

 すると、サリオを狙ってギガントマキアの構成員たちが迫る。

 だが、上空からの狙撃とレイの援護により、構成員たちは倒された。


「くっ……レノの援護に回りたいけど」


 サリオを守らなければまずい。

 レノは、シモンと一対一で戦っている。

 パワーはレノが高い。だが、シモンのスキル『鋼鉄化』の防御が硬く、決定打を与えられない。

 

「もうちょっと耐えてよね。こっちも、もう少しだから」


 レイは双剣を振い、ギガントマキアの構成員たちを一人ずつ、確実に始末していく。


 ◇◇◇◇◇


 上空にて。

 アピアは、弾丸を生成し続けながら狙撃を繰り返していた。


「北へ280メートル前進。高度維持」


 そう呟くと、ワイバーンは言う通りに進んでくれる。

 背中の上も、普通の地面と変わらない。安心して狙撃ができる。

 チーム『エンシェント』が有利なのは、制空権を制覇していることだろう。空を飛ぶスキルや鳥に変身する『獣化』スキルはある。だが、どのスキルも希少なのだ。

 現在、上空にいるのはアピアのみ。

 アピアは安心して弾丸を生成。


「『散弾(ショットシェル)』」


 弾丸の中に、小さな粒状の弾丸がいくつも入っている『散弾』を生成。スナイパータイプ魔導銃に込め、照準をギガントマキアの構成員たちに合わせる。

 構成員たちが一塊になったところを狙い発射。粒状の弾が爆ぜ、四人同時に倒せた。


「よし」


 幼いころから、目が良かった。

 父の趣味である狩猟で、初めて銃を持たせてもらった。

 外したのは、初めて撃った一発目だけ。それだけで銃を理解し、指定された的のド真ん中を連続で命中させ、周囲の度肝を抜いた。

 アピアは、「狙ったところを撃っただけ」と言った。それを聞いた父はアピアのことを「天才」と呼び、銃の知識や射撃、狙撃の訓練をさせた。

 父も貴族にして冒険者、母は元S級冒険者ということもあり、娘が社交界ではなく冒険者になることに肯定的だった。だが、冒険者になるには「学園に入学してから」ということになったのは、ちょっとだけ残念だった。

 学園に入学し、仲間ができた。

 その仲間と共に、今は戦っている。

 それが───……アピアにとって、何よりも大事なことだ。


「ふふ……」


 アピアは笑う。

 スキル『水魔法』を発動。薄く伸ばし、水で巨大なレンズを作る。

 アピアの『鷹の眼』が、水のレンズを通して敵を見る。

 まるで、エモノを狙う鷹のように。


「レノくんも苦戦していますし……そろそろ、ケリを付けましょう」


 敵の残りは、あと二十人。

 アピアは弾丸を生成。ロングマガジンに二十発の弾を込め、魔導銃に装填。


「───……」


 呼吸を整え、水のレンズで敵の位置を確認。

 そして───連続で引金を引いた。

 弾丸の雨が、上空から降り注ぐ。

 全ての弾丸が、敵の頭部に命中。一発も外すことなく、全員がほぼ同時に倒れた。


「なにぃ!?」

「マジで!?」


 シモンとレノが同時に叫ぶ。

 アピアは、ライフルを肩から外して「ふぅ」とため息を吐いた。


「残り、一……」


 のちに、伝説の狙撃手と呼ばれることになる『必中姫(フェイルノート)』の覚醒であった。


 ◇◇◇◇◇


「おらぁぁぁぁぁぁっ!!」

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

「くっ……」


 レノ、レイの連続攻撃に、シモンは防戦一方だった。 

 正直、個人としての能力は高くない。レノもレイも、一対一ならシモンは負けることがない。

 だが……二人、いや四人そろった時、非常に厄介な敵となった。


「レノ、レイさん、回復と支援!!」


 回復、支援に特化した魔術師のサリオ。

 まず、こいつはおかしい。戦闘が始まってから、途切れることなく支援と回復を繰り返している。まず、魔力が持たない。

 大賢者レベルの魔力。それがサリオだ。


「───……ぐっ!?」


 頭部に何か命中した。

 それが弾丸だとすぐに気付いた。

 狙撃手のアピアによる支援。

 こいつが非常に厄介だった。二人を殴ろうとすれば両腕に弾丸が命中し、回避しようとすれば足に弾丸が命中する。

 冷静沈着、冷酷無比な狙撃。こんな狙撃手は、シモンがこれまで戦った人間でも、そうはいない。


「『クリティカルブロー』ぉぉぉぉぉっ!!」

「っ!!」


 油断。

 レノの一撃が、『鋼鉄化』していない脇腹に直撃。

 内臓に少なくないダメージを受け、シモンは初めて膝をつく。

 鋼鉄化が解除された。集中が途切れたのだ。


「金属精製、『ハンマー』!!」

「オォォォォォッ!!」


 レイが両手持ちのハンマーを、レノが硬く拳を握る。

 そして、ハンマーと拳が、同時にシモンの顔面に叩きつけられた。


「ぐぶぇ!?」

 

 鼻血が噴き出し、歯が折れ……シモンの意識は刈り取られた。


「っしゃぁ!!」

「チーム『エンシェント』の勝利!! やったわ!!」


 どこか嬉しそうな、年相応の勝ち鬨が聞こえたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ