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上空

 クルシュ王国、ウロボロス山脈の上空。

 俺たちは、緊張しながらそれぞれの装備を確認していた。

 リンドブルムは、遠くを見ながら言う。


「お兄さまたちの匂い、感じる……みんな、本当に大丈夫?」

「俺は問題ない」

「あたしも」

「オレもだぜ」

「ぼ、ぼくも」

「私も、準備完了しました」


 リンドブルムは、双子龍の匂いを感じるらしい。

 逆に、相手もリンドブルムと俺の匂いを感じているそうだ。俺たちがクルシュ王国の上空にいることは、もう伝わっていると思った方がいい。

 リンドブルムは頷き、レイの傍へ。


「みんな。一時的だけど、強くなりたい?」

「「「「?」」」」

「はっきり言う。いまのみんな、そんなに強くない。気合だけで乗り越えられるほど、この先にいる敵は甘くない。人間にしてはそこそこ強い匂いがする」

「……でも、引けないのよ。仲間を助けるためにはね」


 リンドブルムは頷く。


「だから、一時的にみんなを強化する」

「……ど、どうやって? そんなことできるの?」


 レイが言うと、リンドブルムはレイの腕を取った。


「みんなに、わたしの闘気を一時的に注入する。たぶん、一時間くらいしかもたないし、闘気が抜けた後は疲労困憊で動けなくなる。それでもいいなら、やる」

「なら、迷う必要はないわね。お願い」

「ん。あー……」

「えっ」


 リンドブルムは、レイの腕に軽く嚙みついた。

 そして、レイの身体がビクッと跳ねる。


「───……っ、あ」

「はい、おしまい。他の子、どうする?」

「お、オレ、お願いします!!」

「……レノ、なんで嬉しそうなの?」

「う、うるっせぇぞサリオ。どど、どうぞ!!」

「ん」


 レノは、リンドブルムに噛まれてなぜか嬉しそうだった。

 アピア、サリオも闘気を注入された。俺は見てわかった……みんなの体内を、リンドブルムの闘気が循環している。

 レイは拳を握り、笑った。


「すごい……これが、闘気」

「ドラゴン、すげぇ……」

「……力を感じます」

「なんだろう……今なら、すごく強い魔法が出せそうだ」

「リュウキは、すでにわたしの力を持ってるから大丈夫だね。リュウキ、お兄さまとお姉さまと戦うなら、パパの力をもっと引き出さないと勝てないよ」

「わかってる。もっともっと、力を引き出してみせるよ」


 エンシェントドラゴンの力。

 今は50パーセントくらいしか引き出せない。でも……限界を超えてみせる。

 そして、ワイバーンはリンドブルムの指示で飛ぶ。


「……見えた。あそこ」

「あれが、ギガントマキアの総本部……」


 上空から見えたのは、巨大な宮殿。

 ウロボロス山脈の山頂に立つ、白い宮殿だ。あそこがギガントマキアの本部。あそこに……アキューレがいるはずだ。

 すると、アピアが言う。よく見ると、アピアの右目が赤く染まっていた。


「宮殿を囲むように、ギガントマキアの構成員が巡回しています。まだ私たちの存在には気付かれていないようですね……ここから、少し数を減らします」

「こ、ここからって……」

「お任せください」


 アピアは微笑み、魔導カバンから巨大な『スナイパータイプ』の魔導銃を取り出し、スコープを付け、銀色に装飾された小箱から弾丸を取り出し装填した。


「銀色の、弾丸?」

「はい。私のユニークスキル、『弾丸精製』で作った特殊弾です」


 アピアのユニークスキル、『弾丸生成』。

 その名の通り、弾丸を生成する。魔力によって作られる弾丸で、様々な効果を付与することも可能。

 

「『貫通弾(アーマーピエシング)』……火薬量を増やし、弾丸に芯を通して貫通力を高めた特殊弾です。狙撃用で、殺傷力を高めた弾丸……もう、遠慮も容赦もしません」


 アピアは『身体強化』を使い、ワイバーンの背に飛び乗る。

 ワイバーンの背を軽く撫で、スナイパー魔導銃を構えた。

 スキル『鷹の眼』で目標を視認。天性の狙撃力で狙いを付け───……引金を弾く。

 銃身に『サイレンサー』という、音を消す補助具を付けているので、発射音が全く聞こえない。

 レイ、サリオ、レノは宮殿を見るが、人がいるのかすら見えていない。

 俺は闘気を目に込め、ミニチュアのような宮殿を見た。

 

「…………ま、マジかよ」

「おいリュウキ、見えてんのか?」

「あ、ああ。すごい……見張りが、バタバタ倒れているぞ」


 見張りは、全員が脳天を撃ちぬかれ即死。

 しかも、撃ちぬかれて倒れた場所が藪の中だったり、人目につきにくい建物の影だったりと、ち密な計算からの狙撃だ。

 五人ほど撃ちぬいたが、まだ誰も気付いていない。


「……アピア、ここまですごいなんて」

「あ、暗殺者みてーだぜ」

「ね、ねぇ……アピアさん、もしかして怒ってる?」

「かもな……な、なんか怖いぞ」


 アピアは、無言で引金を引き続ける。

 その様子は、怒っているように見えた。


「チッ……皆さん、気付かれました。十二人ほど倒したので、残りはお願いします。目視できるだけで、二十二人確認できました」

「くんくん……もっといる。建物内に、百人はいるよ」

「へ、面白れぇ……全員、新しいスキルの経験値にしてやるぜ」

「同感。いい稼ぎ場だわ」

「支援は任せてよ」


 リンドブルムは、ワイバーンに命じ、アピアに言う。


「あなたの言うことを聞くようにお願いした。あなたは、ここから狙撃を続けて」

「わかりました」

「ほかのみんなは、地上戦。わたしの闘気があるから、そう簡単には傷付かないはず」

「「「了解」」」

「リュウキ。リュウキは……お兄さま、お姉さまを」

「ああ、任せろ」


 俺は両手を交差し、叫ぶ。


「『龍人変身(ドラゴライズ)』!!」


 鱗が俺の両腕を覆い、ツノが生え髪の色が変わる。そして、右目が染まった。

 俺は籠の縁に飛び乗り、首をコキっと鳴らす。


「じゃ、お先に」

「「「え……」」」


 そして、籠から上空へ飛び出した。

 地上まで数百メートル……さぁ、ここからが真の戦いだ!!

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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