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ムーン鉱山

 パーティーの翌日、アジトにて。

 俺、アピアは、ムーン公爵からの依頼についてレイたちに話す。

 レイはセバスチャンさんが淹れた紅茶を啜り、ニヤッとする。


「最高じゃない!! オリハルコン鉱山……確か、クロスガルドにしかない希少な鉱山ね」

「さようでございます。王国が管理する鉱山以外では、ムーン公爵家所有の鉱山しかありません」


 答えたのはセバスチャンさん。レイはこの中で一番博識そうなセバスチャンさんに聞いたのだ。

 レノは、クッキーをボリボリ咀嚼する。


「オレも知ってる。オリハルコンって、一つまみでも他の金属と混ぜれば、絶対破壊不可能な装備になるっていう伝説の鉱石だよな」

「ぼくが聞いたのは、王家や公爵家所有の鉱山でも、僅かしか採取できないってことかな」


 サリオが首を傾げる。

 レイは、クッキーに手を伸ばし一口齧った。


「魔獣退治、そしてオリハルコン採取。さらに公爵家の依頼……おいしいことだらけ。リュウキ、アピア、やるじゃん!!」

「ふふ、よかったです」

「だな。そういや、鉱山の話ばかりでパーティーのこと全然覚えてないわ」


 俺もクッキーに手を伸ばす。

 ちなみに、この紅茶もクッキーも、このアジトを管理しているセバスチャンさんお手製だ。クッキーはチョコとか果実が混ざってるし味もいろいろで美味い。紅茶も絶品だ。

 すると、サリオが言う。


「問題は、住み着いた魔獣だよね……ぼくらで討伐できる?」

「問題ねぇだろ。リュウキの変身もあるし」

「待った。それじゃあたしたちのスキルレベルが上がらないわ。リュウキ、変身は最後の手段ね。まずはみんなで戦うから」

「わかった」


 俺一人で倒すのは余裕かもしれないけど、それじゃみんながいる意味ないしな。

 というわけで、出発は三日後。学園が二連休になる日に合わせて向かうことに。

 レイはクロスガルド周辺の地図を広げる。


「えっと、鉱山は……」

「ムーン公爵家所有の『ムーン鉱山』はここですな」


 セバスチャンさんが指を差した場所は、王都から馬車で半日ほどの距離だ。

 レイは地図にマークする。


「明日の放課後、兄さんの店で冒険の準備ね。あたしは学園に二日間の休みを申請するから」


 依頼を受ける際、どうしても学園を休まなければいけない場合、申請すれば休める。でも、その場合学園からら休んだ分の課題が出るけどな。

 レノは「うへ」と嫌そうにするが、サリオが「まぁまぁ」と宥めた。

 というわけで、話は終わった。門限の前に学園に戻ることに。


「ではセバスチャン、あとはお願いね」

「はい、お嬢様。道中、お気を付けて」


 セバスチャンさんに見送られ、俺たちは学園に戻った。


 ◇◇◇◇◇


 学園に戻り解散。レイとサリオはショッピングモールへ飲み物を買いに、俺は一人で寮に戻る。

 すると……Aクラスの生徒だけが使える寮へ行く道の前に、キルトと数人のチームメイトがいた。

 俺を見るなり、ニヤニヤしながら近づいてくる。


「よぉ、腰抜け」

「……俺のことか?」

「敵前逃亡した腰抜け以外、誰がいるんだよ?」


 キルトは俺の肩に手を載せようとしたのでスッと避ける。

 すると、チームメイト数人がギロッと睨んだ。

 キルトは手で制する。


「こんな遅くまで、どこ行ってたんだ?」

「アジトで依頼の確認だ」

「アジトぉ? は、チンケな小屋でも買ったか? ま、オレのアジトと比べたらどんな物件も山小屋だろうけどよ」

「……お前もアジト買ったのか?」

「ああ。母上が用意してくれたんだ。王都の一等地にある豪邸をな」

「……ふぅん」


 おかしいな。

 イザベラ、そんな大金をどこから? 王都の一等地って言ったら、白金貨百枚以上は必要なはず。ドラグレード公爵家に、そんな余裕あっただろうか。

 キルトも見栄を張っているようには見えないし。


「ああ、兄貴に報告しておく。オレ、冒険者チームを作ったんだ。オレの等級はA級……兄貴は確か、E級だったよなぁ? くくっ、臆病者にはピッタリだぜ」

「…………」

「兄貴、オレのチームに入れてやろうか? あの男二人は便所掃除係、女二人はオレらの相手とかどうよ? ああ、兄貴は庭の草むしり係とか? ぎゃはははっ」

「…………」


 キルト……こいつ、めちゃくちゃ調子に乗ってるな。

 俺はため息を吐き、寮へ戻ろうとする。


「おい、無視すんなよ。ところで、依頼受けるんだって?」

「ああ。ムーン公爵家から依頼を受けてな。オリハルコン鉱山に住み着いた魔獣退治だ」

「…………は?」


 キルトはポカンとする。

 そして、噴き出した。


「あーっはっはっはっ!! ムーン公爵家ぇ? 嘘つくならもっとマシな噓を付けよ」

「……ま、そうだな。じゃ、おやすみ」

「ああ、チームの女に伝えておけよ。いつでも相手するってな。ククク、身体だけはいいし、可愛がってやるよ」

「…………」


 俺は立ち止まる。

 そして、キルトを睨んだ。


「あ? なんだよその眼」


 すると、俺の首に背後から剣が付きつけられる。

 チームの女子が、剣を抜いてそっと首に当てていた。


「キルト、一つだけ言っておく」


 そして───俺は手に闘気を集め、突き付けられていた剣を素手で掴み、引き抜いた。

 剣の刀身を掴み、そのまま口に入れ……刀身を噛み砕く。

 ボリボリと咀嚼し、飲み込む。全ての刀身を噛み砕き飲み込む……キルトたちは、愕然としていた。


「俺の仲間に妙なことしてみろ───喰い殺すぞ」

「っ」


 俺は、ほんの一瞬だけ『口の中』だけを変身。牙を見せつけた。腹の中は変身した状態なので、安物の剣じゃ内臓に傷なんかつかないから問題ない。

 柄を投げ捨て、そのまま寮へ戻った。

 ちょっとやりすぎたかな……と、そんなことを想いつつ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 仲間ボコボコにされた件忘れてるくせに今更剣食って凄まれてもなぁ。失笑しか湧かんし光景想像したらバカみてえな絵面だわ。なんの負い目も持たずに普通に接してるあたり仲間もどうでもいいんだろ。…
2022/04/13 13:55 退会済み
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