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脱出

 オーガを倒した。

 全員、ぽかーんとしている。


「すげ……」

「な、なんか……めちゃくちゃ強くなってない?」


 レノ、サリオが驚いている。


「A級冒険者くらいの実力はあるわね」

「……すごい」


 レイ、アピアも驚いていた。

 俺も、俺の力を驚く。闘気の流れが変わっていた。荒れ狂う濁流が、静かで清らかな流れに。おかげで調整もしやすいし、呼吸と同じく自然に『闘気開放』できる。

 これなら、もっともっと戦える。強くなれる。

 

「よし、みんな行こう!!」


 俺は拳を強く握り、次の階層へ続く階段へ進んだ。

 階段を進むと、ひときわ大きなドアが見えた。

 なんというか、今までと雰囲気が違う。


「……とんでもなくヤバいのいるんじゃね?」

「そ、そういうの言わないでよ、レノ」

「わ、悪い」


 レノが言い、サリオが杖でレノの背中を軽く叩く。

 

「…………っ」

「大丈夫。リュウキに頼りっぱなしだけど……あたしもいるから」

「レイ……ありがとうございます」


 不安そうなアピアを励ますレイ。アピアはほんの少し笑顔になった。

 俺は扉に手をかけ、ゆっくり開ける。

 扉の先に待っていたのは───……何もない部屋。

 いや、何もないわけじゃない。

 部屋の中央に、宝箱があった。


「「「「「……宝箱?」」」」」


 全員の声が揃った。

 まず、俺がゆっくり部屋に踏み込む。ドアを閉め、全身に闘気を漲らせ構えを取る。

 だが───……何も起こらない。

 試しに、床を思い切り踏んでみた……わずかに亀裂が入るが、何も起こらない。

 構えを解き、全員に言う。


「何もない。ここ、この宝箱の部屋みたいだ」

「……もしかして」


 レイが部屋の中央にある宝箱へ近づく。

 俺も、サリオたちも近づき、宝箱を囲んでみた。


「これ、ダンジョンの秘宝かも」

「マジで!? おいおい、やったじゃねぇか!! 開けてみようぜ!!」

「待った」


 宝箱に手を伸ばすレノの手を、槍の腹でピシッと叩くレイ。

 

「あいでっ!? な、何すんだよ」

「見て。この部屋には次の扉のドアがない。たぶん、この部屋で終わりなのは間違いない。これがダンジョンの秘宝である可能性は高いわ」

「だったら取ろうぜ」

「忘れたの? ダンジョンの秘宝は、ダンジョンの命そのもの。これを取れば、この学園ダンジョンは崩壊しちゃう」

「あ」

「あんたもわかるでしょ?」

「ああ。ダンジョンの秘宝を回収する場合は、ギルドの許可が必要……だろ?」

「ええ。つまり、これを発見したことを学園に報告しなくちゃいけないの」

「あ、あの……レイ、ダンジョンの秘宝を回収すると、ダンジョンは消滅してしまうんじゃ」

「そうなのよ。そこが問題……学園ダンジョン、なくなっちゃうのよね」


 アピアを見ながら「うーん」と唸るレイ。

 サリオも考え込み、宝箱を見つめながら言う。


「でも、回収しないとぼくたちダンジョンから出れないよね……」

「だったら開けるしかねぇだろ。ほい」

「あ!?」


 なんと、レノが宝箱を開けた。

 レイが止める間もなかった。

 中に入っていたのは……ん、なんだこれ?

 俺が中に入っていた物を掴み、持ち上げる。


「古い羊皮紙……? どれどれ」

「え、ちょっと待った。リュウキ、待った!!」

「なになに、スキル、『スキルイーター』……? うおっ!?」


 読んだ瞬間、羊皮紙が燃え上がった。

 同時に、俺の中に生暖かい『何か』が流れ込んでくる。


「び、びっくりした……なんだ、今の?」

「ば、バカ!! あんた、今の……」

「え?」

「オレでもわかったぞ。今の……スキルだ」

「え」

「す、スキルが秘宝だったんだね。でも、リュウキくん……」

「え、え」

「どんなスキルだったのでしょうか?」

「……えっと」


 すると、レイが荷物を漁り、大きな虫メガネを取り出す。

 それで俺を見ると、盛大にため息を吐いた。


「ばっっっちりインストールされてるわ。リュウキ、あんたにスキルがね」

「え」

「おい、見せろ……なになに、『スキルイーター・レベル0』って、なんじゃこりゃ? レベル0」


 レノがレイから虫メガネを借りて俺を見る。サリオ、アピアも順に見た。

 俺は見れない。だが、スキルを入力してしまったようだ。


「スキル、イーター? どんなスキルだ?」

「……この『スキル名鑑定レンズ』は、スキルの名前しか鑑定できないの。スキルの効果を調べるには、スキル屋に行かないとね」

「あの……秘宝、だよな? これ大丈夫か?」

「知らないわ……ん?」


 すると、宝箱の台座周辺が輝きだす。

 床に魔方陣が描かれ、俺たちの身体がふわりと浮かんだような気がした。


「なな、なんじゃこりゃ!?」

「これ、転移魔方じ───」


 不思議な浮遊感に包まれた瞬間、俺たちの視界が黒くなった。


 ◇◇◇◇◇◇


「「「「「…………」」」」」


 どこかに着地した……ような、気がした。

 俺は目を開けると、そこは。


「……え、ここ、セーフエリアか?」


 見覚えのあるセーフエリアだ。

 道具屋やカフェのあるセーフエリア……そして、階段が二つ。

 ここ、危険階層に繋がるセーフエリアだ。

 管理者さんが数名の冒険者と話していて、俺たちを見て仰天、駆け寄ってきた。


「おーい!! お前ら、無事だったか!!」

「はい」

 管理者さんは俺に言う。


「よかった。危険階層への鎖が反対の階段に移動させられてたから、お前たちが危険階層に行ったと思ってよ……今、なんとか冒険者をかき集めようと思ってたんだ」

「そ、そうですか」

「で、大丈夫なのか!? 怪我は!?」

「だ、大丈夫です。あの……管理者さんは、どこに?」

「……すまん。全てオレの責任だ」


 管理者さんは、襲われたそうだ。

 そして、何者かが危険階層を塞いでいた鎖を外し、通常階層への道と入れ替えたらしい。

 

「お前ら、狙われる心当たり、あるか?」

「……………」


 俺の脳裏に浮かんだのは───ニヤケ顔の義弟だった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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