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これからも続く物語

『…………』


 俺はゆっくり地上へ降りる……すると、変身が解けて人間の姿へ戻った。

 不思議なくらい、何の後遺症もなく元気な『俺』のままだった。人がドラゴンに変身するなんて、身体にどんなことが起きてもおかしくないのに。

 俺は、降りた場所から少し離れた場所に転がるバハムートの元へ。


「……大丈夫か?」

「ああ……はははっ、親父の野郎、最後の最後で手ぇ抜きやがった」


 バハムートは、ボロボロだった。

 人の姿に戻っているが、鎧は砕け全身血塗れだ。大の字で寝ており、動けないのかと思ったが……どこか満足そうな、晴れ晴れとした笑顔を浮かべている。

 そして、ガバッと起き上がると全身を漆黒の闘気で包む。すると、鎧も怪我も完治していた。


「強かったぞ、リュウキ」

「俺じゃない。エンシェントドラゴン……ヴェルドランが強いんだ」

「かもしれん。だが、お前でなければ、親父はここまで力を解放できなかった。ふ……最後の最後、親父の闘気が教えてくれたよ。リュウキは最高の相棒だ、ってな」

「ヴェルドランが?」

「ああ。お前に会えて、お前に全てを託してよかった、と……」

「…………そっか」


 たぶん、もう二度と……ヴェルドランの意志が俺に何かを伝えることはない。

 俺も、最後の最後に聞いた。

 最後の一撃を放つ瞬間、『ありがとう。リュウキ』って聞こえたから。


「リュウキ、オレの負けだ。この勝負……お前の勝ちだ。誇れ、お前はオレに勝利したんだ」

「うん……」

「ふ……負けたのに、こんなにも晴れ晴れした気持ちになったのは初めてだ。空がこんなにも広く、青く見えたのも初めてだ……」


 バハムートは、空を見上げていた。

 俺も見上げる……本当に、空が青い。

 すると、リンドブルムたちが近づいてきた。


「リュウキ!!」

「リンドブルム、それとムーン公爵……」

「ファフニールでいいよ。あ、公の場ではムーン公爵で」

「……バハムート、どうだった?」

「ハクリュウ……ふ、スッキリした気分だ」

「そう。よかったわね」


 すると……アンフィスバエナの腹が、豪快に鳴った。

 俺たちが全員注目すると、照れもせずお腹を押さえて言う。


「力、使いすぎた……オナカ減ったわ」

「あっはっは。確かにねぇ。せっかくだ、ぼくが食事を奢ろう。みんな、何が食べたい?」

「わたし、お肉」

「オレも肉を喰うぞ!!」

「全く、仕方ないわねぇ」

「あの、俺も?」


 こうして、バハムートとの闘いは終わった。

 世界最強のドラゴンを倒した。俺が最強のドラゴン……ってわけではない。

 別に、俺は最強のドラゴンなんて目指していない。

 俺は、冒険者だからな。戦いが終われば、次の戦いへ……ダンジョンへ行く。


「さて、行くか。ファフニール。背に乗せろ」

「え、えぇ? ぼ、ぼく? リンドブルム、任せるよ」

「えー……やだぁ」

「ファフニール、オレはお前に頼んでるんだが?」

「う、うう、わかったよ……」

「……ファフニール、こうなるから隠れてたんだよね」

「ふふ、今までいなかった分、しっかり頑張ってもらわないと」


 でも、今は……このドラゴンたちと焼肉でも食べようかな。


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇


 ───……二年後。


 俺は、二十歳になった。

 冒険者は未だに現役だ。仲間たちとのチーム《エンシェント》も、世界最強のチームとして名が広まり、世界各国から『ダンジョン攻略』を依頼されている。

 王都にあるアジトで、俺たちは話していた。


「次はアルフェッカ王国にある『海底ダンジョン』を攻略するわよ!!」


 レイが地図を出し、羽ペンでアルフェッカ王国にマークする。

 海沿いにある国だ。海産が有名なことで知られており、レノがペロリと舌なめずりする。


「美味い魚食えそうだぜ。あと、海で遊ぼうぜ!!」

「レノ……奥さんに怒られるよ?」

「う、うっせぇな。海で遊ぶことの何が悪いんだよ!!」


 サリオにツッコまれ、レノがサリオの肩をバシッと叩く。

 レノは、幼馴染と結婚した。もうすぐ第一子が生まれるとか。

 俺は言う。


「アルフェッカ王国なら、飛んでいけば半日くらいか」

「ふふ、リュウキくんの背中、すごく速いんですよねぇ」

「わかるー」


 アピア、アキューレは嬉しそうだ。

 この二年で、ドラゴン化を完全に使いこなせるようになったからな。遠くへの移動は専ら俺の役目だ。

 レイは机をバンと叩いた。


「決まりっ、海底ダンジョン攻略するわよ!!」

「「「「了解!!」」」」


 全員が、お決まりの返事をした。

 すると、アピアが俺の腕を取る。

 

「あの、リュウキくん。私たちも二十歳になりましたし、そろそろ結婚を……」

「い、いや。結婚すると冒険者引退だろ? それに、俺は貴族とか」

「なら、私は平民になります。マーキュリー侯爵家はどうにでもなるので」

「あ、ずるい。わたしも結婚する!!」

「こら!! そういう話はちゃんとみんなで!!」

「モテるねぇ。ま、オレは結婚したから関係ないけどな」

「ボクはまだいいかなー」


 俺たち、チーム《エンシェント》の冒険は、これからも続いていく。


 ─完─

完結です!

応援ありがとうございました!

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後までとても良かったです。 [気になる点] 特になし [一言] 完結まですごく良かったです。 読んでいると、心がすごくワクワク感があってよかったです。 本当に素晴らしい小説でした。 あり…
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