ドラゴン
『オォォォォォォォォ!!』
『ガァァァァァァァ!!』
黄金のドラゴンとなった俺は、漆黒のドラゴンことバハムートに掴みかかる。
バハムートも負けじと俺の腕を掴み、力比べをする。
すると、バハムートは大きく息を吸う。
『ブガァァッ!!』
『ッ!!』
漆黒の炎を吐きだした。が……不思議なことに、ダメージが殆どない。
黄金の闘気が、俺の身体を守っていた。
バハムートは舌打ちする。
『クソがぁ!! 親父の闘気……ここまでとはなぁ!!』
『オォォォォォらァァァァァッ!!』
『ぶごぉ!?』
バハムートの顔面を、闘気の拳でブン殴る。
バハムートは血を吐きながら吹っ飛んだ。
俺は背中に生える十二枚の翼を広げて上空へ。大きく息を吸い、全力で吐き出した。
『《黄金吐息》!! ブガァァァッ!!』
黄金のブレス。周囲に被害が出ないよう、炎を収束させ口から放つ。
バハムートに炎が直撃し、さらに吹っ飛んだ。
『グ、ハハハハハハッ!! 楽しいなぁ!!』
バハムートは、ボロボロになりながら立ち上がる。
鱗が割れ、翼が千切れても笑っていた。
俺は……改めて、思う。
『……強い』
バハムートではない。
エンシェントドラゴン。黄金真龍ウェルドランが、強すぎる。
でも……この力は、一度だけの力だ。
バハムートに応えるための、ウェルドランが搾り出す最後の力。
父親として、息子に応えるための力を燃やしているのだ。
『バハムート!! 俺の中のエンシェントドラゴンが言ってる……《こんなものか?》だとさ!!』
『ハッハッハッハッハァ!! まだまだァァァァァッ!!』
漆黒の闘気が膨れ上がり、バハムートの怪我が瞬時に回復した。
そして、巨大な翼を広げ上空へ。
俺も、バハムートに見せつけるように翼を広げた。
『嬉しいぞ、親父……また、またこうして戦える!!』
『ああ、そうだな』
『あの時とは違う!! もう、オレはあんたの力なんて必要ない。オレの、バハムートの力で、あんたを超えてやろうじゃねぇか!!』
『ああ───……全力で来い!!』
バハムートは、笑っていた。
俺の中のエンシェントドラゴンも、笑っていた。
これは───……父と子の、壮絶な親子喧嘩だ。
◇◇◇◇◇
『楽しそうねぇ……』
ハクリュウは、嬉しそうに呟いた。
『パパ……』
リンドブルムは、懐かしきエンシェントドラゴンの姿に声を震わせた。
『ああ、最高の戦いだ。ふふ、特等席だねぇ』
ファフニールは、特等席での戦いを満喫していた。
『…………』
アンフィスバエナは、無言で眺めていた。
四体のドラゴンたちは、リュウキとバハムートの戦いを観戦しながら、周囲に被害を出さないように結界を維持していた。
気楽そうにしているが、四体は相当な負荷に耐えていた。
バハムートの力は辛うじて耐えられる。だが……未だに底の見えないリュウキの、エンシェントドラゴンの力に結界が何度も揺らいでいたのである。
だが、それも間もなく終わる。
『……バハムート、まだ物足りない? お父様は偉大すぎるドラゴン。勝つなんて無理。あなたが喰らう全ての攻撃は、お父様の愛情よ。いい加減、気付いてるんでしょう?』
ハクリュウは、涙を流す。
バハムートは敗色濃厚だ。全ての攻撃が通じていない。
黄金の闘気を破ることも、傷付けることもできない。
『驚いた。リュウキくん……父上の力を、完全に使いこなしている。あの姿、完全体になった瞬間、全ての力が解放され、安定したような……くくっ、本当に面白い』
『違う』
『ん? どういうことだい、リンドブルム』
『あれは、パパ。力じゃない。リュウキじゃない。あれはパパだよ……パパが、リュウキにお願いして、バハムートお兄さまと戦ってるんだよ』
『ふむ? でも、父上は死んだはずだろう?』
『でも、あれはパパ』
リンドブルムは譲らない。
ファフニールと話しながらも、視線は上空に向いていた。
ハクリュウは、逆に顔を伏せる。
『……そろそろ、決着ね』
『……見て』
アンフィスバエナが言うと、ハクリュウとファフニールが顔を上に向けた。
無傷のリュウキが十二枚の翼を広げると、翼が黄金に光り輝く。
バハムートが大きく口を開けると、漆黒の闘気が球状になり、巨大化していく。
ハクリュウは叫んだ。
『全員、集中なさい!! 決着の時よ!!』
ハクリュウが叫ぶと同時に、黄金の咆哮と漆黒の波動が真正面から衝突した。