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リュウキVSバハムート

「来たか、リュウキ」

「バハムート……」


 バハムートは、待っていた。

 場所は聞かなくてもわかった。漆黒の闘気が、遠くから俺を呼んでいた。

 クロスガルド中欧諸国から遠く離れた、未開の地『アリスの森』

 人類がまだ踏み込んだことのない土地。すごく濃い闘気の香り。

 その森の中心地は、完全な更地となっていた。

 バハムートは、中心に立ち俺を待っていたのだ。


「ようやく、この日が来た。リュウキ……お前と、お前の中に眠る親父の力を、オレが超える日が」

「ああ、そうだな」


 バハムートは、どこかスッキリしていた。

 

「オレは……親父の力を継承し、最強のドラゴンになることを夢見ていた。だが、親父は自分の力を、オレに渡すつもりなんて欠片もなかった……恨んだ、怒った、そして悲しんだ。でも、ようやくわかったんだ」


 バハムートは空を見上げ、満足そうに微笑んでいる。


「親父……今ならわかる。親父は、親父の力になんか頼らず、親父を越えてみろって言いたかったんだよな。オレの力だけで、親父を越えて欲しかったんだ」


 そして───ほんの一筋の、涙を流した。

 バハムートは黙り込み、小さく息を吐き……俺を見た。


「リュウキ!! お前を人間だと侮りはしない!! オレの超えるべき壁として、オレが最強であることの証明として、全力で戦おう!!」

「ああ。俺も……本気で行くぞ!! 『第四解放フォースエヴォリューション』!!」


 俺は、全身を黄金の鱗で包み込む。

 この二年間の修行で、第四形態でも苦なく変身できるようになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 リュウキたちから数キロ離れた森の入口に、四人の男女が並んでいた。

 一人は、ハクリュウ。

 もう一人は、アンフィスバエナ。

 そしてファフニールと、リンドブルムだ。


「始まったね」


 ファフニールがそう言うと、ハクリュウが頷く。


「『邪魔したら喰い殺す』なんて、バハムートは本気のようね」

「バハムートお兄さま……」

「ははは。大丈夫さ、どちらが勝つにせよ、ね」

「…………」

「おや、どうしたんだい、リンドブルム」

「ムーン公爵がお兄さまだったなんて……わたし、何度も挨拶された」

「気付かなかっただろう? ふふ、私の人間っぷりに」

「むぅー」


 リンドブルムがむくれる。すると、アンフィスバエナがその頭を撫でた。


「それにしても驚いた。まさか、バハムート兄様が、人間を好きになるなんて」

「正確には、人間の作った料理ね。バハムート、今まで肉を生で食べることしかなかったから。焼いて香辛料で味付けした肉を食べて、感動してたわよ。それから、二年かけて人間の国を回り、いろんな料理を食べ歩いたの」

「ああ、資金は公爵家から出したことをお忘れなく、姉さん」

「はいはい」


 ハクリュウは呆れていた。

 ファフニールは、お金のやりとりは兄弟でもきっちりしている。

 リンドブルムは、ファフニールの袖を引く。


「近づかないの?」

「駄目だね。ぼくたちはここで、周囲に被害が出ないように守りを固めないと」

「……できるの?」

「わからない。ハクリュウ姉さん、どうだい?」

「……厳しいわね。バハムートだけでも厄介なのに、お父様の力を持つリュウキの潜在能力は未だに不明……全員、配置について」

「わかった。ふふふ、特等席で見物しようか」

「わたし、がんばる」

「……ふふ、楽しいわね」


 リンドブルムは、モコモコした羊のようなドラゴンへ変わる。

 アンフィスバエナは青い翼竜へ。

 ファフニールは緑色の一角獣のようなドラゴンへ。

 ハクリュウは細長い純白の翼が生えた蛇に変身した。

 それぞれのドラゴンは、リュウキとバハムートを囲むように四方へ移動し、ハクリュウを中心に闘気の渦が巻き起こる……そして、周囲を包み込んだ。

 結界。四体のドラゴンが作る、最高の守りだ。


『さぁ、リュウキにバハムート。どちらが強いのか、純粋な勝負を見せてもらいましょうか』


 リュウキとバハムート、最後の戦いが始まった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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