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S級冒険者チーム《エンシェント》

 クロスガルド中欧諸国にある、最難関ダンジョンの一つ『デッドマンズクルス』。

 二千メートル級の『山脈型』ダンジョンで、ダンジョンでは異質の『登山』形式で登るダンジョンだ。

 急こう配の坂、数々のトラップ、凶悪な魔獣たちが現れる、世界屈指の最悪なダンジョンである。

 現在、チーム『エンシェント』は、その山の中腹で休んでいた。


「な、もうちょいで踏破か?」


 レノ。

 S級冒険者の一人。

 現在十八歳で、聖王国魔法学園卒業間近の生徒である。 

 この二年間で、身長は伸び、身体つきも非常に逞しくなった。両手にはドラゴンの素材で作った、使い込まれたガントレットを装備している。現在、王都でパン屋を営む幼馴染の少女と交際中でもある。

 レノは、巨大な肉塊のような骨付き肉をがぶりと豪快に齧る。

 すると、サリオが言う。


「まだ半分だよ。ここから先は地図もないし、慎重に進まないと」


 サリオ。

 S級冒険者の一人で、十八歳の青年だ。

 世界最量の魔力を持つ青年で、普通の魔法使い五千人分の魔力を持つ。回復、支援に特化したスキルを持ち、『サリオがいれば回復アイテムは必要ない』と言われるほどの術者であった。

 そして、何より……サリオは美形だった。

 二年前までは『可愛い子犬のような男の子』だったが、今では『貴公子』と呼ばれるほど美しくなった。身長はスラリと高く、スタイルも抜群である。

 学園では、二日に一度は告白されているとか。今のところ結婚や交際に興味はないらしい。

 レイは、水のボトルを一気に飲み干す。


「でも、今のあたしたちなら、この程度の魔獣は楽勝ね」


 レイ。

 S級冒険者の一人で、現在十八歳。

 《最強の冒険者》の一人に数えられ、『雷神剣』のレイと呼ばれている。雷魔法とユニークスキルの合わせ技を回避できるやつは存在しない。

 ワイルドな戦い方をするが、レイ自身は不思議な高貴さが感じられ、貴族の男性から求婚されることも多い。だが、レイはその全てを断り、冒険者として戦いに明け暮れている。

 レイに合わせるように、アピアが言う。

 

「では、交代で休憩をしましょうか」


 アピア。

 S級冒険者の一人で、現在十八歳。

 狙撃の天才で、銃の扱いではクロスガルド最高の腕前を持つ狙撃手。狙撃手だが前衛に立ち、拳銃を撃ちまくる姿も見られるとか。

 狙った獲物は外さない最強の狙撃手。正体はマーキュリー侯爵家の長女アピアだと知るものは意外と少ない。その容姿、そのギャップから、アピアを同一人物だと思う者が少ないとか。

 こちらも、冒険者一筋なのか、婚約希望の男性を全てお断りしている。

 あくまで噂に過ぎないが……パーティメンバーに、気になる男性がいるとか。

 

「じゃあ、わたしとリュウキが一緒」


 アキューレ。

 A級冒険者で、現在十八歳。

 エルフ国家、フリーデン王国のお姫様。留学という形でクロスガルドにやってきた。

 今では、チーム《エンシェント》の中距離担当。弓の腕前はアピアの銃といい勝負らしい。

 リュウキに救われて以来、リュウキに恋をしている。

 今では、リュウキ以外の男性と結婚するつもりがなく、フリーデン王国に帰らず、このままリュウキと結婚することを考えている。

 リュウキは、くっつくアキューレを軽く押しのけて言う。


「俺、レノが最初に見張るから、お前たちは先に休んでてくれ。いいか、レノ?」

「ああ」

「むー……わたしじゃダメ?」

「駄目。お前、俺にベタベタして見張り全然しないから」

「うぐぅ」


 アキューレはがっくり項垂れた。

 リュウキは、水のボトルを一気に飲み干す。


「よし、片付けして休憩してくれ」


 リュウキ。

 S級冒険者の一人で、現在十八歳。

 最強の冒険者の一人で、『黄金真龍(ドラゴンロード)』リュウキと呼ばれている。『獣化』スキルの亜種で、ドラゴンの力を持つ青年として、学園最強、そして冒険者最高の男と呼ばれていた。

 リュウキは、女子とサリオがそれぞれのテントに入るのを確認し、焚火の前へ。

 レノと向かい合う。


「……二年、経ったな」


 レノがナイフを取り出し、薪を削りながら言う。

 何を作っているのか見ていると、薪で小鳥を作っていた。意外にも器用なレノである。

 リュウキは、焚火にくべていたポットを取り、カップに注ぐ。

 サリオが作った薬草茶で、フーフーしながら飲む。


「だな。俺らもすっかりベテラン冒険者だ」

「ああ……まさか、S級冒険者になっちまうなんてな」

「みんな、滅茶苦茶強くなったよな」

「お前に付いていこうと必死だったんだよ。オレの『全身強化』なんて、レベル73だぜ? 何度も死にかけて、何度も使いまくった結果だ」

「あはは……」

「笑いごとかよ……ムーン公爵に紹介されたダンジョンも、クソ難易度高けぇダンジョンばかりだし。死にかけた分、強くなったけどな」

「だな……なぁレノ、そろそろだ」

「バハムート、だったか?」

「ああ。そろそろ、戦いが近い……もし、もしもだぞ? 俺が死んだら」

「嫌だね。オレはハーレムなんて興味ない」

「……何の話だよ」

「……なんでもない。あと、戦うならレイたちにも言えよ? あいつらが男作らねぇの、お前がいるからなんだぞ。行くならしっかり想いを伝えて、後悔のないように抱いてから戦え」

「だ、だだ、抱くって……」

「ふ……女はいいぜ?」

「おま、まさか!?」

「オレ、学園を卒業したら彼女と一緒に暮らすんだ……金稼いで、彼女のパン屋を改装して、オレもパン作り覚えて、子供作って、く、くふふ」

「れ、レノ? おーい」

「S級冒険者に上り詰めた。財宝もいっぱい手に入れたし、贅沢して遊んで暮らせるくらいは稼いだ。信じられるか? まだ十八歳のガキだぜ? ダンジョンの秘宝も大量にあるし、あとは安定した暮らしで平和に……」

「…………お前、なんかそのうち死にそうだよな」

「あぁ!? んだとテメェこら!!」


 リュウキとレノは、『うるさい!!』とレイに怒られるまで笑い合った。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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