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ヴァルカン学園長

「がーっはっはっはっは!! 来たか、リュウキ!!」


 長い通路を進み、闘技場の中心へ出ると……ヴァルカン学園長が舞台のど真ん中に立っていた。

 すごい装備だ。真っ赤な全身鎧を着ているので肌の露出が顔しかない。そして武器……とんでもなく巨大な『大戦斧』だ。すごい、全長四メートル、刃の部分も二メートル以上ある。

 人間ではまず持てないサイズの斧を、ヴァルカン学園長は片手で持ち肩に担いだ。


「リンドブルムが絶賛していたぞ。リンドブルムよりも強い、間違いなく最強の人間だとな!!」

「そ、それはどうも……」


 声がデカい。

 闘技場内は歓声に包まれているが、ヴァルカン学園長の声のが響く。

 圧倒されそうになるが、俺は気合を入れ直す。


「学園長、悪いけど手加減しませんから」

「うむ!! ワシも殺すつもりで戦おう!!」


 こ、殺すつもりって……俺、いちおう生徒なんだけど。

 ヴァルカン学園長は、巨大な斧をクルクルと頭上で回転させた。


「久しぶりに、楽しめる……感謝するぞ、リュウキ!!」


 すると、ここで実況が入った。


『それでは、始めたいと思います。学園長ヴァルカン対、チーム《エンシェント》の戦士リュウキ!! 注目の一戦です!! ルールは簡単、死んだら負け!! 実にシンプル、それゆえに最高の戦いが楽しめそうです!!』


 後で知ったことだが、俺とヴァルカン学園長の戦いが締めで、学園祭が始まってからずっと、生徒同士や生徒対教師などの戦いが繰り広げられていたそうだ。

 まぁ、どうでもいい。

 俺は、戦うだけだ。


「『龍人変身(ドラゴライズ)』」


 俺の両腕が鱗に包まれ、ツノが伸び、牙が伸びる。

 闘技場内は大歓声に包まれた。こんな大勢の前で変身するの、初めてだしな。

 ヴァルカン学園長も、斧を俺に向ける。


『それでは───本日最後の戦い、開始です!!』

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!」


 開始と同時に、ヴァルカン学園長が突っ込んで来た。


 ◇◇◇◇◇◇


「『全身強化』!! 『火炎付与』!! 『粉砕』!!」

「いぃっ!?」


 いきなり、ヴァルカン学園長は三つのスキルを付与してきた。

 全身強化。火炎付与で斧が爆発するように燃える。

 俺は横っ飛びで、真上から振り下ろされる斧を回避。舞台に斧が直撃すると、舞台が爆発し粉々に砕け散った。

 舞台の消えた闘技場。俺はすぐにヴァルカン学園長へ向かっていく。


「『闘気精製(ドラゴンスフィア)』───〝大剣(バスターソード)〟!!」


 闘気で大剣を作り、ヴァルカン学園長の胴を薙ぐ……が、なんと学園長は片手で俺の大剣を受け止めた。これにはもう驚くしかない。今の俺の腕力を、普通の人間が受け止めるとは思わなかったのだ。

 

「なかなかのパワー!! だが、まだまだぁ!!」

「くっ───」


 大剣を捨て、拳を巨大化させる。

 するとヴァルカン学園長は、斧の腹で俺の拳を受け止めた。


「ぐっ……!!」

「がっはっはっはっは!! いい、いいぞ!! このパワー、素晴らしいぞ!!」

「そりゃ、どうも!!」

「ぬっ!?」


 俺は拳を小さくし、パワーだけでなく速度を使い翻弄することにした。

 が、ヴァルカン学園長はパワーだけじゃなかった。

 

「《双剣技》!! 『万華鏡刃』!!」

「なっ!?」


 斧を投げ捨て、腰から二本の剣を抜き、俺の両腕を斬りつけた。

 鱗が斬れ、腕から血が出る。まさか斧を捨てるとは思わなかった。

 距離を取ろうとするが、ヴァルカン学園長は俺から離れずに双剣を細かく振るう。

 やばい、この速度───対応できない。

 腕を大きくして防御するが、少しずつ削られていく。


「くっ───……ッ!!」


 慢心。

 俺はもしかしたら、心の中で侮っていたのかもしれない。

 エンシェントドラゴンの力を持つ俺が、今さら他の人間に負けるわけがない、と。

 ドラゴンを三体も屠った俺は、人間には負けないと。

 だが、今こうして俺は追い詰められている。相手は、人間だ。


「どうしたどうした!! 反撃の一つでも」

「ああ、そうだった」


 俺は一瞬だけ防御を解いた。

 双剣が俺の胸を斬り裂く───が、防御を無視した俺は学園長の横っ面に拳を叩き込む。

 学園長は吹っ飛び、地面を転がる。

 俺は裂けた胸を手で押さえる。


「くぅぅ~~~……久しぶりに血沸き肉躍る!! これほどの拳、初めてだ!! がっはっはっはっは!!」


 学園長は起き上り、頬を撫でる。

 俺も胸を押さえ、学園長に応えるべく胸をドンと叩いた。


「まだまだ、こんなモンじゃありませんよ。学園長」

「そりゃありがたい。もっともっと楽しもうぞ!!」


 俺の胸の血は、すでに止まっていた。

 さぁ、ヴァルカン学園長……もっともっと楽しもうか。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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