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49話 ラミーニアの告白

「……キレイですね……」


「そうだね」

 

 ウルクと私は、街を一望出来る見晴らしのいい丘に来ていた。

 

 今は黄昏時たそがれどき、丘にはベンチが設置されていたので、ウルクと一緒にそのベンチに座っている。

 夕日が街を照らしていて、とても綺麗だった。


 飛竜ドラゴンライドに乗った後、私達はショッピングデートをした。

 クレープやソフトクリームを食べたりして本当に楽しかった。


 ……本当はこのままずっウルクと一緒にいたい……

 でも、もう終わりにしないといけないんだよね………


「……今日はデートしてくれて、ありがとうございました……」


「僕も久しぶりにラミーニアとお出かけして楽しかったよ」


 ウルクが笑顔でそう言った。


「……飛竜ドラゴンライドは無理言ってすみませんでした……。でも、一緒に乗ってくれて嬉しかったです……」


 無理をさせてしまったことは申し訳なかったけど、一緒に乗ってくれて本当に嬉しかった。


「こっちこそ、ごめん……。絶叫系が苦手だったみたいで、あんまり楽しめなかったよね……」


 ……無理をさせてしまったのは私なのに……


 ギュッ!


「……これで少しはウルクを癒せませんか……」


 苦手な絶叫系の飛竜ドラゴンライドに乗って疲れているウルクを癒したくて、私はウルクを抱きしめた。


「ふふ、ありがとう、何か楽になった気がするよ」


 そう言って、ウルクは頭を撫ででくれた。


「………今更ですけど、ウルクって、私の頭を撫でるの好きですよね?」


 ふと、聞いてみたくなった。


「あ、ラミーニアの髪が気持ちよくて、つい撫でたくなっちゃうんだよね……。嫌だったかな……」


「嫌ではありません。……むしろ好き……」


 最後の方は小声で呟く。


「よかったー、嫌がられてたらどうしようって、実は思ってたんだよね……」


 ナデナデナデナデ!


 許可を得たからか、ここぞとばかりに撫でられた……

 ……でも、ちょっと嬉しいかも……


「あ、そうだ、ラミーニアにプレゼントを買ってたんだけど、受け取ってもらえるかな?」


「え、急にどうしたんですか?!」


 服や装備を買ってもらったことはあったけど、もしかするとウルクからのプレゼントは初めてかもしれない。


「ラミーニアにはよく助けられてるし、デートするのも遅くなったからおびも込めて買ってみたんだけど……」


 ウルクはそう言いながら、包装紙に包まれたプレゼントを両手で私に差し出した。


「……あ、ありがとうございます……」


 一瞬、貰ってしまっていいのだろうかと躊躇ちゅうちょしたが、貰わないのも悪いと思いウルクの好意を素直に受け取った。 


 ……私の方が助けられているのに……

 いつも、恩返しをする前に、先に更に与えられてしまう……


「……開けてもいいですか?」


「うん、いいよ」


 プレゼントを開けてみると、中にはネックレスが入っていた。


「え? ……こんな高価な物……」


「いや、本当は、もっと軽い感じのを買おうと思ってたんだけど、ラミーニアに似合いそうだなぁ……、じゃなくて、戦いで役立ちそうなアミューレットのネックレスで、最後の一個だったから勢いで買ってしまったというか……」


 ウルクがネックレスを買った理由を必死に説明している。

 

 トクン!


 ……かわいい……


 何故か、一瞬、ウルクがかわいく見えた。 


「……一生大事にします……」


「え、いや、そこまで大した物じゃないから……」


 そう言いながら、ウルクがどぎまぎしている。

 そんなウルクを見て、思わずクスっと笑ってしまった。


 こんな時間がずっと続いたらいいのに……

……でも、今日は伝えるって決めていたから……


 グッ!


 私はこぶしを握り締めた。


 スクッ!


 そして、決心して立ち上がる。


 今日のデートの最後に言うと決めていたこと。

 結果は分かっているのに、言わずにはいられないこと。


「……ウルク……。私をウルクの恋人にしてくれませんか……」


 私はそうウルクに告白した。


「………あっ………」


 ウルクが一言だけそうはっして固まっている。

 

「「………………」」


 しばらく沈黙が続いた後、 

「……ごめん……。……僕、思わせぶりなことをしてしまってたよね……」

 と言ってウルクが謝った。


「………………」


「……ラミーニアのことは本当に大切に思ってるよ。……だけど、今は恋人にはなれないんだ……」


 ウルクは悲しそうにそう言った。


 ……そうだよね、そう言われると分かっていた……

 だから、次に言う言葉も準備していたのに……

 

 いざ言われると言葉にまってしまい、声すら出せなかった。

 

「………何となく、そう言われる気はしていました……」


 何とか声を絞り出す。


「……ごめん……」


 ウルクが悲哀ひあいの表情で何度も謝る。

 

 ……ウルクに悲しい顔をし続けて欲しくない……

 だから…… 


 私は涙がこぼれ落ちそうになるのをグッとこらえて、

「……いえ、今は私のことを大切に思ってくれているというだけで十分です……。でも、私、諦めた訳じゃありません。これから成長して、ウルクさんの方から恋人になって欲しいと言ってもらえるような私になりますから、覚悟していて下さいね!」

 と精一杯の笑顔でそう伝えた。

 

「……ラミーニア、ごめんな……。……でも、ありがとう……」


 バッ!


 ウルクが私を慰めようとして強く抱き締めてくれた。

 

「……そんなの反則です……」


 ……笑って終わりにしたかったのに……

 だから、頑張って笑顔で……… 


「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


 もう涙をこらえることは出来なかった。

 手で押さえようとしても、止め止めなく涙が溢れ出す。


「バカバカバカバカ、ウルクのバカーーーーーーーーーー!」


 気がつくと私は想いの全てをウルクにぶつけていた。

 その涙は辺りの景色が真っ暗になるまで止まることはなかった。

「……ラミーニアちゃん……。……一生懸命告白したのに振られてしまいましたね……。ウルクを通してでした慰められないのに、今回はそのウルクに振られてしまったから……。私は少しでも心が癒されるようにと祈ることしか出来ません……」


次回、「ミリタニアの憂鬱ゆううつ


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