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43話 ミーシャの魂

「……創造主……だと?」


 ……そういえば、あの小僧……

 前回の戦いの時にも、われの計画を邪魔していたな……


 まさか創造主が召喚した勇者なのか!?

 

 ……まだまだ力は未熟なようだが……

 不安材料は早めに消しておいた方がよかろう……


 ◇ ◇ ◇ ◇


「……力がみなぎってくる……」


 ……お兄さんが創造主の名を叫んだ後、身体中に神力マナが溢れ出した……

 この能力を私は昔の文献ぶんけんで読んだことがある……


 “勇者には仲間の神力マナを高める力がある”と。


 お兄さんが実は勇者だったってこと?

 確かに、そう考えれば、精霊を三人もたずさえていることに納得出来る。


 ……ヴァグリアとの戦いに絶望していたが……

 これなら少しは戦いに勝てる見込みが出てきたかもしれない……


「光精霊魔法、聖剣ホーリーソード!」


 ボクは精霊魔法を唱え、無数の光の剣をヴァグリアを含めた魔族達に飛ばした。


 いつも以上に神力マナが込めれているので、普通の魔族達はこれで十分。

 残りの光の剣で、ヴァグリアと最前線で戦っているお兄さん、ラミーニア、サーフィア、そして、何故かそこに加わっているタナスト皇太子の援護をする。


 ……でも、お兄さんが、集中的に狙われている気が……

 

 もしかすると、ヴァグリアもお兄さんが勇者だと気がついたのかもしれない。


「それなら!」


 お兄さんを優先的に護るように、ボクは光の剣を操作した。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ……これは狙われてるな……


 ヴァグリアの攻撃が自分に集中している。

 さっきの“聖戦の誓い”で、勇者かもしれないということを懸念けねんされてしまったのだろう。


 ただ、勇者が創造主の名を宣言することが、全体の神力マナをアリーセスの力で引き上げるための条件だったので、仕方がないことではあったのだが……


「悪魔魔術、闇の稲妻ダークサンダー!」


「水精霊魔法ミューリアス!」


 バーーーーーーン!


 ミリーの光精霊魔法と僕の水精霊魔法で何とか防いでいるが、そう長くはたない。


 それにしても、ミリーの光精霊魔法は本当にレベルが高い。

 魔族を倒しながら、こちらの援護までしてくれている。

 

 ミリーがいなかったら、もっと絶望的な状態だった。

 先程の王女としての振る舞いといい、いつも姉であるエミーを引き立ててはいるが、ミリーも十分王女としての素質があるのだろう。


「闇魔法、黒の重圧!」


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 ズドーーーーーーン!


「くっ、小賢こざかしい!」

 

 攻撃はラミーニアとサーフィアが連携しながら頑張ってくれているが、大きなダメージは与えられていない様子だ。


『……アリーセス、このままだと徐々に押されて行ってしまう……、何か手はないのか?』


『……まだ、一つだけあるにはあるのですが……。ジークスがヴァグリアとの戦いに参戦出来ないとリスクが高過ぎる手です……』

 

 ……やっぱり、ジークスがこちらの戦いに戻って来られないと勝ち目はないか……


 必死に戦いながらもそう冷静に分析する。


「……ジークス……」


 ……死者のままヴァグリアに操られているミーシャと戦うことになって、動揺しているとは思うけど……


 このままでは、パーティが全滅してしまうのは必至ひっしだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 カキーーン!


 私の元身体とジークスが剣と剣で戦っている。


「……ミーシャ……。まさか、こんな形で再会することになるとはな……」


 そう呟きながら、ジークスは悲哀の表情を浮かべた。


 ……ジークス、気がついて、それはただの人形……

 私の魂はいつもジークスと一緒にいたのよ……


 ヴァグリアに魔人化されそうになった時、ジークスのことを強く思っていたからだろうか。

 死を迎えた後、気がつくと、ジークスのそばまで私の魂は飛んでいた。


 ……死者すらも利用するとは、ヴァグリアはどこまで非道なの……

 ジークスと戦うことにならないようにと、必死の思いで自害したのに、こんなのはあんまりではないか……

 

「ミーシャ、すまなかった、あの時は何もしてあげらなくて……」


 ……ジークスは悪くない、悪くないの……、私が魔の思いに支配されてしまっただけで……


 ……何度、この絶望を味わっただろうか……

 死んでしまった私の想いは、もう届くことはない……


「……でも、本当はあの夢の内容が真実だったのか?」


 ジークスが苦悶くもんに満ちた表情でそう言った。

 

 夢!?


 ……そうか、創造主様の力があれば、また夢を見せた時のように……

 そのためには、勇者ウルク様の力が……

 

 そう思っていた矢先、

「ジークス!! 闇精霊魔法、魂の調和!」

 ウルク様が闇の精霊魔法を使った声が聞こえてきた。


 ウルク様!?

「ウルク!?」


 私とジークスが同時に声を上げる。 

 そして、ウルク様の闇精霊魔法によって放たれた黒い光の中に、ジークスと私の元身体は包まれた。



「……ジークス……」


「……ミーシャ……。ここは……、また夢の中なのか?」


 ジークスは私が目の前にいることが信じられないという表情をしている。


「夢じゃないわ、ジークス。……創造主様とウルク様が私達を繋いでくれたの……」


「……創造主様とウルクが?」


「そう、ウルク様は創造主様が異世界から召喚した勇者なの」


「……そうか、やはり、ウルクは勇者だったんだな……。それであの時、ミーシャの夢を見ることが出来たのか……」


 ジークスが今までの不思議な出来事の経緯を悟ったようだ。


「……ジークス、ずっと逢いたかった……」 

 

 ギュッ!


 逢えた嬉しさで心が一杯になり、私は思わずジークスに抱きついた。


「……俺もだよ、ミーシャ……」


 そう言って、ジークスは抱きしめ返してくれた。



「……本当は、ジークスとゆっくり話をしていたいけど……。今は時間がないの……」


「……ああ、分かってる……」


 ジークスが小さく頷く。


「……あの時……、……私はヴァグリアに魔の思いを増大させられ、魔人になりかけていた……」


「……やっぱり、あの夢の内容が真実だったんだな……」


「うん、だから、今ジークスが戦っている私の身体には、もう私はいないから……」


 絶対にヴァグリアの思い通りにはさせたくない。


「思う存分、たたっ斬って!」

 

 私はそう力強く言った。


「ふ、ミーシャらしい言い方だな」


 ジークスが苦笑する。


「ミーシャの身体を斬るのには抵抗があるけど、ミーシャの思いにはちゃんと応えるよ」


 真剣な表情でジークスはそう言った。


「……あと、最後に一つだけ……。私、実は精霊になりかけていて……、創造主様の力で、ジークスの精霊になることも出来るみたいなんだけど……」


「え? そんなことが出来るのか?!」


「ふふ、そうみたい……」


 ジークスがあまりにも驚いているので、思わず微笑してしまった。


「……私、ジークスの精霊になってもいいのかな?」


「もちろん、断る理由なんてないだろ」


「……ありがとう……」


 そう言って、ジークスが優しく私の髪を撫でる。


「……では、私の役目はここまでのようですね、ジークス様」


 かたわらで見守っていた風の精霊フーリスがそう言った。


「……フーリス……。突然のことですまない……」


「……ごめんなさい、フーリス……」


 二人で一緒にフーリスに謝った。


「いえ、いつかこんな日が来るのではないかという気はしておりました……」


「……フーリス……」


「でも、一言、これだけは言わせて下さい……。ジークス様は、ミーシャ様が亡くなられた後も、ずっとミーシャ様のことを想っておられましたと」


「なっ?!」


 思わぬ暴露ばくろにジークスは声を上げ、慌てふためいている。


 ジークスのその姿に、

「ふふ、最後にジークス様の滅多に見られない姿が見られて大満足です」

 とフーリスは笑顔でそう言った。


「コホン! ……まあ、それはそれとして……」


 わざと咳を入れて、ジークスが場を整える。


「……今までありがとう、フーリス……」


「……こちらこそありがとうございました、ジークス様……」


 お互いに感謝の気持ちを伝えて、二人は最後の握手を交わした。

「ミリタニアの光精霊魔法は心強いですね。……ようやく、ジークスとミーシャが再会出来ましたね……。本当は生きている時に会わせたかったですが……。……ジークスと精霊ミーシャが力を合わせれば、きっとヴァグリアも……。フーリス、今までお疲れ様でした……。次に出会う主が素晴らしい主になりますように祈っています」


次回、「古代魔法、起源オリジン


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