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42話 暗黒の門

 ギギギギギギ!


 玉座の間に入る大きな扉が開かれた。

 

 開かれた先の玉座にはルザルフ国王が座っている。

 その隣には、外務大臣とおぼしき人物が立っていた。


 カツカツカツ!


 タナスト皇太子を先頭にして、僕達はルザルフ国王の眼前がんぜんまでゆっくりと前進する。


 王を殺した罪悪感から、タナスト皇太子はルザルフ国王にロワイアントナーガ国にとって不利な報告はしないと判断した。

 そのため、タナスト皇太子が先頭に立って事情を報告をした方が、ルザルフ国王の誤解も解きやすくなると考えた。 


「……大臣よ、これは一体どういうことだ? ……タナストは、ロワイアントナーガ国に不当に拘束されているのではなかったのか?」


「……私もそのように報告を聞いていたのですが……」


 外務大臣がうろたえている。


 アリーセスにも確認をしたが、外務大臣自体から発せられている魔の霧はごく少量で、アリーセスでなければ気がつかないくらい微量だったとのこと。


 ……となると、本命はヴァグリアということになるんだけど……


『周囲に、そのような魔の霧は、まだ発生していません』


 今のところ、その気配はないらしい……


「……ルザルフ陛下……、此度こたびの騒動についてご報告申し上げます……」


 タナスト皇太子が片膝をついて、そう言った。


「うむ……」


 タナスト皇太子のだたならぬ雰囲気に、ルザルフ国王も神妙しんみょう面持おももちで返事をする。


「……大変お伝えしにくいことではあるのですが……、……私は大きな罪を犯してしまいした……」


「……罪……だと?」


「はい、その罪とは、……ロワイアントナーガ国の王を、私の剣で刺してしまったということです……」


「こ、国王を刺しただと!?」


 ルザルフ国王は驚きのあまり身を乗り出して大声を出した。


「……はい……」


「……そんな大罪を犯したお前が、何故ここにいられる……」


 ルザルフ国王がミリーを横目で見る。


「それは、私が魔族に操られていたからと、王女達が我慢をいてくれたからに他なりません……」


「……魔族に操られていた……だと?」


「国王を刺した時、私は意識を誰かに乗っ取られておりました……。しかし、魔人に操られてしまったのは、私の不測ふそくいたすところ……。にも、関わらず、ミリタニア王女は、私をここまで連れて来て下さいました……」


 タナスト皇太子がそう言った後、その隣でミリーが片膝をついた。


「ルザルフ陛下、陛下自身が仰る通り、本来であれば国王を刺した大罪人として、タナスト皇太子はここに戻って来ることは出来なかったことでしょう……。しかし、私は、タナスト皇太子をここまで丁重ていちょうにお連れしました。その真意しんいをどうかご理解していただきたくぞんじます」


「……なるほど……、……ロワイアントナーガ国が敵対しているというのは、誤解であったと……、そう言いたいのだな……」


 そう言った後、ルザルフ国王は外務大臣の方を向いた。


「大臣、これは一体どういうことだ? お主の進言しんげんがことごとく間違っていたことが、今判明した。この責任どう取るつもりだ!」


「フフフフフ、責任? そんなもの取る必要がありますか?」


 急に外務大臣の雰囲気が変わった。


「これから死に行く者に対して、どう責任を取れと?」


「……大臣?」


 ルザルフ国王も、外務大臣の異変に気がついたようだ。


「ヴァグリア様に栄光あれ!」


 シャッ!


 外務大臣がそう叫ぶと同時に、自身の左腕を短剣で切り裂いた。

 腕をつたって血が地面にしたたり落ちる。


「黒魔術、暗黒のダークゲート!」


 大臣がそう魔術を唱えると、地面に黒い光の六芒星ろくぼうせいが浮き上がった。


『ウルク、急激に魔の霧が増加しました!』


 玉座の間が、魔の霧でおおわれていく。 


『……こ、これは、どういうことなんだ?』


『……どうやら、先程の魔術によって、ヴァグリアの本拠地と玉座の間が無理やり繋げられたようです……』


 ……ということは……


「みんな警戒けいかいを! ヴァグリアが来る!!」 


「「「ヴァグリアが!?」」」


 外務大臣が魔術を唱えた直後に、皆が精霊を呼び出していたが、僕達は更に警戒を強めた。


「フハハハハハ、ルザルフ国王よ、あのまま騙されていれば、こんな大事おおごとにはならなかったものを。しかし、長年を費やして準備しておいた暗黒のダークゲートを、こんな形で使う日が来ようとは思わなかったぞ」


 ヴァグリアが六芒星の中から現れ、ルザルフ国王にそう告げた。


「くっ!」


 ルザルフ国王が悔しそうな表情をしている。


「それにしても、さすがはジークス元聖騎士団長、タナスト皇太子をここまで無事に連れて来るとは、我が腹心デグルトを倒しただけのことはある」


「……それはどうも……」


 ジークスが素っ気なく返事をする。


「そんなお主に、今日は特別なゲストを用意させてもらった」


「……何を言って……」


 そこまで言って、ジークスの顔が驚きの表情へと変わった。


「……ミーシャ……」


 ヴァグリアの隣に美しい女性が立っている。

 しかし、そこから生気せいきは感じられなかった。


「フフフ、ジークスよ、懐かしいだろう。愛しの婚約者に再会出来た感想はどうだ?」


「ヴァグリアーーーーーーーーー!!!」


 ジークスが怒号を放ち、一瞬でヴァグリアまで詰め寄る。

 そして、そのままの勢いで大剣を振り下ろした。


 ガキーーン!


 が、そのジークスの一撃は、ミーシャの剣によって受け止められた。


「ミーシャ!」


「ジークス、お主の相手はその娘だ」


「くっ!」


 ジークスが苦悶くもんの表情を浮かべている。


「さあ、今日は記念すべき素晴らしい一日になりそうだ! ハハハハハ!」


 ヴァグリアは勝利を確信しているかのごとく大声で笑った。


 ……エミーには、ヴァグリアと対峙たいじしたら直ぐに逃げて下さいと言われていたけど……


 玉座の間には、黒魔術暗黒のダークゲートによって派生はせいした魔の結界が張られてしまっているため、簡単には抜け出せそうにない。


 ……ヴァグリアを倒す以外に、この危機から逃れるすべはなさそうだ……


『……アリーセス、勝ち目はあるのかな?』


『……単純な力の差で考えると限りなくゼロに近いですが、私はウルクに死んで欲しくはありません……』


『そっか、アリーセスがそう想ってくれているのなら、死ぬわけにはいかないね……。じゃあ、全力でサポートをお願いするよ……』


『もちろんです』


「創造主アリーセスの名において誓う! この戦いに必ず勝利せんことを!!」


 僕は刀剣を掲げ、声高らかにそう叫んだ。

「……ついにヴァグリアとの最後の戦いが始まりました……。敵は強大ですが、ウルクを死なせるわけにはいきません! 私も全力でサポートします!」


次回、「ミーシャの魂」


ブックマーク・評価等ありがとうございます!

更新の励みとなっております!!



遂に10万文字を突破しました!!!


これもひとえに読んで下さっている読者様方のお陰で、ここまで書くことが出来ました!!

ありがとうございます!


これで一つ目の目標は達成しましたので、次の目標は書籍化ですが……

そのためにも、もっと面白い話が書けるように頑張ります!!

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