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41話 サーフィアの告白

「……ここがバームラント国か……」


 ロワイアントナーガ国から馬車を飛ばして一日半。 

 到着した時間は夕方を過ぎていた。


 夜に王との謁見えっけんを申し出ると印象がよくないため、タナスト皇太子の引き渡しは明日することにした。

 取り敢えず、今夜は宿に泊まることにしたが、ロワイアントナーガ国から多額の費用をもらったので、よさげな宿に泊ることにした。


「雰囲気は、ロワイアントナーガ国と似てるよね……」


 戦争まで起こそうとしているのだから、もっと文化の違いがあるのかと思っていたが、雰囲気はロワイアントナーガ国と大差はなかった。


「昔はバームラント国とも交流が盛んだったらしいのですが、五年ほど前から急に関係が悪化しました。今回の騒動を考えると、誰かが意図的に関係の悪化を扇動せんどうしていたのだと思います」


 ミリーがそう言った。


 ……ヴァグリアの仕業か……

 第七聖騎士団とも対峙をしながら、バームラント国にはそんな計画を企てていたなんて、魔王十二将の力は底が知れないな……



「急いで移動した疲れがあるだろうから、明日に備えて今日は早めに休んでくれ」


「「「分かりました」」」


 ジークスが解散する前に一言そう付け加えた。


 明日の王との謁見では何が起こるか分からない。

 出来る限り体力を回復しておいた方がよいだろう。 


 ◇ ◇ ◇ ◇


「……そういえば、サーフィアに言わないといけないと思っていたことがあるんだけど……」


「え? 何をですか?」


 お風呂を上がって、部屋に戻る途中で偶然サーフィアに会った。

 サーフィアには話しておきたいことがあったので、ちょうどよかった。


「……サーフィアの精神世界に行った時、僕が精神支配を解いたとサーフィアは思っていると思うんだけど、実はあれは創造主の力だったんだよね……」


「……それがどうかしましたか?」


 ……あれ、うまく伝わらなかったのかな?


「あ、いや、サーフィアが、僕に好意を持ってくれているのは、精神支配を解いた出来事があったからだと思っていたんだけど………」


「こ、好意?!」


 サーフィアが赤面してどぎまぎしている。


「だ、大丈夫?」


 ……まさか、そこにそんなに反応するとは……


「……動揺してしまい、すみません……。大丈夫です、落ち着きました……」


 深呼吸をしてからサーフィアがそう言った。


「……もう、バレてしまっているみたいですから、遠慮なく言いますが、それは違います。……私がウルを好きになったのは、精神支配を解いてくれたからではなく、ウルがバカだったからです……」


 なるほど、僕がバカだったからか……って、酷い言われようだな……

 ……本当にサーフィアは僕のことが好きなのか?


 思わず苦笑する。

 

「……闇の精霊使いだからとか、私自身が好きになれないとか、あんなに悩んでいたのに……。ウルのバカみたいな性格によって、そんなことで悩むのが馬鹿らしくなってしまったんです……」


 あまりにもバカバカ言われるから、ちょっとショックを受けていたのだが、サーフィアはそう意味で言っていたのか……


「それに、精神世界でウルに触れられた時、ウルの力ではない何か不思議な力に包まれたのは分かっていました。……でも、それを知った上で、私はウルを好きになったんです……」


 サーフィアがそう言って真っ直ぐに見つめてくる。


 ドクン、ドクン!


 サーフィアに真剣に告白され、僕は心臓の鼓動が早くなるのを感じた。


「ですから、そんな風に言われるのは、私としても、ちょっと悲しいですね……」


 サーフィアが悲哀の表情で微笑する。


「……ごめん、サーフィアがそんな風に思っていてくれたなんて思わなかったから……」


 僕は素直な気持ちでサーフィアに謝った。


「いえ、私もこんなきっかけがなければ、ウルにこ………………」


 そこまで言って、サーフィアが固まっている。


「ん? サーフィア?」


 固まってしまったサーフィアの顔を覗き込むと、

「ああああああああ!」

 突然、サーフィアが叫び声を上げて、全力で走って行ってしまった。


「……え? ……急にどうしたんだろう……」


 一人取り残された僕はそう呟くしかなかった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ロワイアントナーガ国の使者としてミリタニア第二王女が来たと王にお伝え下さい」


 次の日の早朝。

 バームラント王宮の門の隣にある部屋で、ミリーは伝達係として待機している兵士にそう告げた。


「ハハハ、笑わせてくれる。ロワイアントナーガ国の王女が、このご時世でこんな所まで来るはずがないだろう」


 兵士が鼻で笑っていると。


 ドカッ!


 タナスト皇太子が兵士を蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされた兵士が壁に激突する。


「いってー、何するんだ!! この………」


 兵士が憤って言い返そうとしたが、目の前にいるのがタナスト皇太子だと気がつくと、急に青ざめた表情に変わった。


「タ、タナスト皇太子!?」


「おい、バームラント国の品位はいつからこんなに下がったんだ?」


 タナスト皇太子?

 ついさっきまで、死んだような目をしていたはずなのだが、急に息を吹き返した。


「も、申し訳ございません!」 


 兵士が平謝りしている。


「……ミリタニア王女、部下の非礼を代わりにお詫びします……。おい、早くルザルフ陛下に伝達しろ!」


 タナスト皇太子はミリーに一礼した後、兵士に激怒しながらそう言った。


「は、はい!」


 兵士が慌てて王のもとへと走って行く。


「……まあ、何はともあれ、王と謁見出来そうだね……」


「……そ、そうですね……」


 確かに無礼ではあったが、思いっ切り蹴飛ばされていた兵士に同情しつつ、ミリーと僕は苦笑いをした。

「……バームラント国が早く正常な国になりますように……。……もちろん、私の力もありましたが、ウルクのお陰でサーフィアの精神支配を解くことが出来たんですよ……。……いつの間にか、サーフィアがウルクに告白してしまいましたね……。ウルクはどうするのでしょうか……」


次回、「暗黒のダークゲート


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