40話 襲撃
ガラガラガラガラ!
翌日の早朝、僕達はタナスト皇太子を連れて早々に出発した。
馬車に乗りながら、バームラント国へと急いで向かっている。
「ジークスさん、次の道を右でお願いします」
「分かりました」
ジークスは馬車の操縦が出来るらしく、案内役のミリーの指示を聞きながら操作している。
「ん、魔獣が行き道を邪魔してるな……。風精霊魔法、突風!」
ドーーーーーーン!
魔獣が行き先を塞いでいる時には、風の精霊魔法で吹き飛ばしているので、ジークスが馬車を操縦するのは意外に効率的なのかもしれない。
「……私は何てことをしてしまったんだ……王を殺すつもりなんてなかった……。……エミーラ王女に嫌われてしまった……」
タナスト皇太子がブツブツと呟いている。
浄化を終えて我に返ってから、ずっとこの調子である。
「……本当、やになっちゃうよね……。こんな哀れな姿を見せられたら、憎むに憎めないよ……」
ミリーが僕に向かってぼやいた。
性格はともかく、エミーラ王女が好きだということには偽りがないようだ。
貴族意識が高いというだけで、案外そこまで悪い奴ではないのかもしれない。
『……ウルク、もう少し進んだ場所に大規模な魔の霧が発生しています……』
アリーセスが魔族達の存在を教えてくれた。
「ジークス、もう少し進んだ場所で多数の魔族達が待ち構えているみたい」
「分かった」
ヒヒーーーーーン!
ガタン!
しばらく進むと、馬が鳴き声を上げて、急に足を止めた。
馬車の中が、大きく揺れる。
ザザザザザザ!
「……囲まれたな……。ウルクが言っていた魔族達のお出ましみたいだ……」
ジークスが僕達にそう告げた。
いつの間にか、魔人達に馬車が囲まれている。
バッ!
僕達は全員馬車から降りた。
同時に、ラミーニアを除く全員が精霊を呼び出す。
「……魔人が十人、犬のような魔獣の数が約三十体か……」
この魔族達は、おそらくはヴァグリアが送り出した刺客。
タナスト皇太子ごと消したかったんだと思うけど……
「風精霊魔法、二重竜巻!」
ぐおぉぉぉぉ!!
ジークスが風精霊魔法を使って、魔人三体と魔獣七体を吹き飛ばす。
「光精霊魔法、聖剣!」
ミリーが光精霊魔法を使うと、無数の光る剣が周りに出現し、
「いけーーーーーー!」
と叫んだミリーの声に呼応して、無数の光る剣が魔族達に向かって飛んで行った。
ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
魔族達に光る剣が突き刺さり、魔獣が次々と倒れていく。
「……凄いな……」
思わず声を漏らす。
ヴァグリアも、タナスト皇太子を運んでいるパーティに、まさか上位精霊使いが二人もいるとは思わないだろう。
ミリーの光精霊魔法によって、魔獣達はほぼ全滅した。
魔人は魔素で守られているので、弱ってはいるが倒れてはいなかった。
……ここまでお膳立てされているんだ。
僕も少しは活躍しないとね……
「火の精霊魔法、ファライア!」
弱っている魔人を火の精霊魔法を使って一気に四人倒した。
「闇の精霊魔法、拘束の鎖!」
残りの魔人が魔術を使おうとしていたが、サーフィアが闇精霊魔法を使い、黒く光った鎖が魔人達を拘束する。
「今です!」
「はい!」
拘束されて無防備となっている魔人達に、ラミーニアが拳と蹴りで会心の一撃をくらわせていく。
グオッ!
強烈なダメージにうめき声を上げながら、魔人達は倒れていった。
「数は多かったけど、ミリーのお陰で危なげなく倒せたよ」
倒した魔族達をミリーと一緒に浄化している。
上位の精霊使いとは聞いていたが、ミリーは想像以上に強かった。
「ふふーん、これで、ボクのこと、ちょっとは見直した?」
ミリーが冗談ぽくそう言った。
「いやー、実際、本当に凄かったよ。エミーが絶賛するわけだ」
早く上位精霊使いになりたい。
二人の活躍を見て純粋にそう思った。
「……そこでお姉様の名前を出すのはズルいです……」
ミリーが嬉し恥ずかしそうにしている。
ミリーを褒める時は、エミーの名前を出すと効果が倍増するようだ。
「でも、聞いてはいましたが、お兄さんの浄化の能力も凄いですね」
「あ……、みんなそう言って褒めてくれるんだけどさ、今まで言えなかっただけで、本当は昨日話した創造主の力を借りてるだけなんだよね……」
僕はただの仲介人で、正直、大したことはしていない。
浄化出来ているのはアリーセスの能力のおかげだ。
「……何を言ってるんですか? それも含めてお兄さんの才能ですよね?」
「え?」
「だって、そうですよね。教会でも創造主の力を使って魔族を浄化しているのですが、数百人分の祈りに相当する早さで、お兄さんは魔族を浄化していますよ」
……この能力、そんなに凄いものだったのか……
「ボクだって精霊がいなかったら、高位魔法は使えないんですし……。……よ、要は、創造主の力を使えるってことも含めて、お兄さんの実力だってことです!」
最後は語尾を強めて、ミリーがそう言ってくれた。
そんな風に一生懸命褒めようとしてくれるミリーが可愛く見えたので、
「ふふ、そう言ってくれて嬉しいよ……。……ありがとう、ミリー……」
思わず微笑して、ミリーに感謝を伝えた。
「もう、何がおかしいんですか? 私はお兄さんのことを真剣に褒めているんですよ。……まあ、でも分かってくれたみたいで、良かったです」
そう言って、ミリーも最後には笑っていた。
「心強い仲間が増えて良かったですね、ウルク。……ウルクがいなかったら、こんなにたくさんの魔族を短い時間で浄化することは出来ません……、ですから、ウルクには本当に感謝しています……」
次回、「サーフィアの告白」
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