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39話 秘密の共有

「エミーラ女王! バームラント国が戦いの準備を進めているとの報告が入ってまいりました!」


 王の死は即座に王宮中に知れ渡ることとなった。

 宮内を混乱させないように、次の日にはエミーの女王即位式が行われた。


 明日には、極力混乱が起こらないように、民に王の死と女王即位の旨を伝える必要がある。

 王の業務を引き継ぐべく、エミーは夜遅くまで急ぎ各大臣の報告を受けていたのだが。

 

 そこに、バームラント国がロワイアントナーガ国への進軍の準備をしているとの報が入って来た。

 話を聞くと、バームラント国内ではタナトス皇太子が不当に拘束されているとの噂が広まっているとのこと。


「どういうことですか? タナトス皇太子を拘束したのは昨日の夜、どうしてそんなに早くバームラント国に情報が……」

 

 エミーが戸惑っている。


「ヴァグリアの仕業だな」


「……だと思います」


 ジークスの問いに、僕は頷いた。


『アリーセス、バームラント国で一体何が起こっているのか分かる?』


『はい、まずそのような噂が広がっていることは事実です。そして、王宮内ではバームラント国の外務大臣から魔の力を感じます』


『じゃあ、その外務大臣が、ロワイアントナーガ国とバームラント国を争わせようと画策かくさくしているということか?』


『それで間違いないと思います』


 ……これは急いで対策を考えないと大変なことになる……


「ジークス、後でエミーも交えて、話があるんだけど……」


「ん? そうか、何かに気づいたんだな」


「はい」


 ◇ ◇ ◇ ◇


「……という訳なんです」


 エミーの部屋に、ジークス、ラミーニア、サーフィア、ミリーを呼び、今回の事件の首謀者がヴァグリアで、バームラント国の外務大臣が魔人であることを説明した。


「……報告にあった、バームラント国が戦いの準備を始めた背景には、そんな理由があったのですね……」


 エミーがようやくに落ちたという表情をしている。


「……というか今更だけど、魔族を発見するのが異常に早かったり、ウルクは、どうやっていつもそんな情報を得ているんだ?」


 ジークスにそう質問された。


 ……確かに、普通そう思うよね……


『……このメンバーになら、アリーセスとのことを伝えてもいいのかな?』


『はい、大丈夫だと思います』


 念のため、アリーセスに確認をしたが、アリーセス自身がそう言うのであれば大丈夫なのだろう。


「……実は、時々ですけど、リゼラミアの創造主と対話出来ることがあるんです……」


 本当はいつでも会話出来るのだが、少し言葉をにごして、アリーセスとの関係を伝えた。


「「「!?」」」


 みんなが驚いている。


 ……それもそうか……


 ロワイアントナーガ国が、創造主アリーセスを国教としていることは知っていた。

 その創造主と対話出来ると言っているのだから、驚くのも無理はない。


「……なるほどな……、そういうことだったのか……」


 ジークスが一人、何かに納得している。


「それで、本題ですが、バームラント国が戦争の準備をしているのであれば、誤解を解くためにも、タナスト皇太子をバームラント国へ連れて行った方がよいと思ったのですが……」


 話が逸れてしまったので、元の話に戻した。


「はい、それは私もそう思いましたが……」


 そう言いながら、エミーがミリーの方をチラッと見る。


「え、私に決定権があるの? ……確かに殺したいほど憎いけど、戦争になるかもしれない時に、そんなこと言ってられないし……」


「……ありがとう、ミリー……」


 エミーがそう言ってミリーを抱きしめた。


「……エミーラお姉様……」


 ……エミーも、本当は憎しみを抑えるのに必死なはずだ……

 ミリーもそれが分かっているから、ああ言ったのだろう。


「それでは今後の戦略ですが、私と国軍は万が一戦争が始まってしまった時のために準備を始めなければなりません。……出来れば、ジークス様とウルクにタナスト皇太子を連れて行ってもらいたいと思っているのですが、お願い出来ますでしょうか?」


「ヴァグリアの計画を阻止出来るのであれば、喜んで」


「僕が言い出したことだしね」


 ジークスと僕はそう返事をした。


「……ありがとうございます……」


「私も一緒に行きます」

「もちろん私も」


 ラミーニアとサーフィアがそう言ってくれた。

 まあ、この二人は来ない方がいいと言ってもついて来るのだろうが……


「ありがとう、ラミーニア、サーフィア」


 僕がそう言うと、二人とも嬉しそうに微笑んでいる。


「では、ボクも一緒に行きますね」


 ミリーが突然そう言った。


「え?」


「だって、バームラント国には一度行ったことがあるから道は分かるし、王と謁見えっけんするのであれば、王女であるボクもいた方がいいよね」


「ですが、そういう訳には……」


 さすがに第二王女であるミリーを連れて行く訳にはいかない。


「……確かにそうですね。ミリー、大変だと思いますが、お願い出来ますか?」


「もちろん」


「ええ!? いいんですか?」


 エミーが、ミリーの提案に賛同したことに驚いた。


「ミリーは、上位の光精霊の使い手です。もちろん、危険が伴いますので心配ではありますが、時間がないことを考えると、ミリーの案が最善だと考えます」


 ……上位の精霊使いだったのか……


「あ、お兄さん、ボクが上位の精霊使いなのが意外だとか思ったんでしょ。もう、本当に失礼だなぁ」


 ミリーがぷんぷんと怒っている。

 前にも思ったが、ミリーは心でも読めるのか?

 

「ふふ、ミリーは私よりも優秀なんですよ」


 エミーが笑顔でそう言うと、

「いえ、私がお姉様にかなうはずがありません」

 と即座にミリーはそう言った。


 ……お互いに認め合える姉妹って何かいいなぁ……


 緊迫した雰囲気の中ではあるが、二人の関係性を見ながら、何だかなごやかな気持ちになれた。

「……ヴァグリアが、バームラント国で暗躍あんやくしているのですね……。つ……ついに、ウルクの仲間達に私のことが紹介されました……。バームラント国に行くのですね。重大な任務ですが、頑張って成し遂げて下さい、ウルク……。エミーラとミリタニアは本当に仲がいい姉妹ですねw」


次回、「襲撃」


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