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37話 結婚の真相

「まさか、本当にあのまま二人が結婚を前提に付き合い始めるとは思わなかったよ……」


「あれ、もしかして、自分にも少しは脈があると思っていました?」


 ミリーにからかわれる。


「いや、王女様と結婚なんて、さすがに恐れ多くてそんなことは思わないけどさ……」


 エミーが、ジークスに好意を持っていることは知っていたが……

 ジークスは婚約者のミーシャのことを、まだ引きずっていると思っていた。


 事の真相は、アリーセスに確認すれば分かることなのだが、野暮なことはやめておこう。


「え、何? ウルクは王女とは結婚出来ないと考える人なの?」


 ん?

 ……この話続けるのか……


「うーん、そもそも、そんな機会があるとも思えないけど、身分差結婚とか色々と揉めるんじゃないかな……」


「……まあ、揉めるとは思うけど……。でも、本当に好きな人とだったら、それを越えてでもとか思いませんか?」


「……確かに、それを越えたいと思えるくらい好きな人となら、そう思うかもしれないね……」


「ふふ、そうですよね」


 何故か、ミリーが嬉しそうに笑顔でそう言った。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「今日、ここに呼んだ理由は分かっているな、エミーラ」


「はい、分かっております……」


 私は、お父様の部屋に呼び出されていた。


「街の噂を聞きつけ、タナスト皇太子は大変お怒りになっている」


「……存じております……」


 分かってはいたことだ。

 しかし、実際に国を左右する出来事の中心に自分がいることに恐怖感を覚えた。 


「……ふぅ、そんなに緊張しなくともよい……、私は事の真相が知りたいのだ……。エミーラのことだ、何の考えもなしにこんなことをしたわけではあるまい……」


 お父様が溜息をつきながらそう言った。


「……お父様?」


 まさか、あれだけ結婚に前のめりだったお父様が、話を聞いてくれるとは思わなかった。

 でも、これはチャンスだ。

 

「はい、では事の次第をお伝えさせていただきます。お父様が本当に心配されているのは、バーミラント国との同盟ではないと思っております。我が国だけでは魔王軍と戦えないと懸念けねんしてるからこその同盟であると……」


「ふむ」


「……そこで私は、現自警団団長であり、第七聖騎士団団長でもあったジークスと結婚することで、国力を底上げ出来るのではないかということを考えました。何故なら、私達が本来目指している国は、隣国に頼る国ではなく、自国として成熟した国だからです」


「……なるほど……。そこまで考えていたか……」


 短くまとめたが、伝えるべきことは全て伝えた。


「……お前の考えはよく分かった……。しかし、最終決定は王である私が下す。エミーラは部屋に戻りなさい」


「……はい、お父様、何卒なにとぞご検討をよろしくお願いいたします……」


 そう言い残して、私はお父様の部屋を後にした。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ここがエミーの部屋なんだね」


 ……ウルクを部屋に呼んでしまった……

 でも、ウルクにだけは本当のことを伝えておきたいから……


「……でも、僕なんかが入っていいのかな?」


「はい、大丈夫です……」


「あ、そうだ、先に言っとかないと。エミーはジークスのことが好きだったみたいだし、結婚が決まってよかったね」


「………………」


 ……そうだった、ウルクはそう思っているんだった……

 いや、確かにあの時は、実際にそう思っていたんだと思うけど……


 ……今好きな人に、それを言われると複雑な気持ちになる……


 だから、

「……そんなに、嬉しいんですか? ……私とジークスの結婚が決まったことが……」

 と、つい素っ気なく言ってしまった。


「え? てっきり、エミーは喜んでいるものだと思っていたんだけど……、もしかして、ジークスとの結婚も偽装だったとか?」


 んーーーー!


 確かに形だけの結婚だから、間違っていない……

 ……間違っていないんだけど………


「ジークスとは本当に結婚します。でも、私が言いたいことは……」


 そこで言葉に詰まる。


 ……あれ?

 そうだよね……


 ……いくら形だけとはいえ、私がジークスと結婚することは既に決まっている……


 私がウルクに想いを伝えたからといって、今更そのことを変えることは出来ない。


 ……だったら、このまま勘違いしてもらっていた方が、ウルクのためなのではないだろうか?


 ただでさえ、二人の大切な仲間から言い寄られているのだ。

 そこに私まで加わったら、ウルクは更に悩むことになるだろう。


 ……私が告白することは、ウルクの負担でしかない……


「エミー?」


 ウルクが真っ直ぐな目で私を見ている。


「……辛そうだけど、大丈夫?」


 ウルクが心配して優しく声をかけてくれた。

 

 あーーーー! 

 分かってる、分かってるんだけど………


 ギュッ!


 ……神様……、……これだけは許して下さい……


 そう心の中でささやいて、私はウルクに抱きついた。

 そして、そのまま強く抱きしめる。


「エ、エミー?!」


 ウルクはばつが悪そうにあたふたしている。


 それはそうだ。

 結婚が決まっている王女に急に抱きしめられたら、誰だってそうなるだろう……


「……ごめんなさい、何も聞かずに少しだけこのままいさせて下さい……」


「……エミー……」


 そう言いながら、ウルクが私の異変に気がついた。

 そのウルクの雰囲気を感じて、ようやく私も自身の異変に気づく。

 自分でも気がつない内に目から涙が溢れ出していたのだ。


 ……あれ、おかしいな……


 これで終わりにしようと思ったのに……

 ……終わりにしようと思っていたのに……


 ………涙が止まらない………


 そんな泣き続ける私の頭を、ウルクは優しく撫で続けてくれた。

「……エミーラ王女……、婚約を解消するために、ジークスとの形だけの結婚を選択したんですね……。……エミーラの父である王はどのような選択をするのでしょうか……。……エミーラのせめてもの願い……。もちろん、私は許します」


次回、「王の死」


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