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35話 ミリタニアの作戦

「ミリタニアはエミー達と一緒に食事しないの?」


 何故か、ミリタニアも食堂で一緒に食事をしている。


 食堂の食事だが、さすが王宮の食事、朝から豪華な食事が並んでいた。

 ラミーニアが目を輝かせながら食べている。


「一緒に食べないといけない時は一緒に食べますが、基本的に堅苦しいのは苦手なんです……」


 ミリタニアが溜息をついている。


「だから、朝は食堂に案内したついでにっていう、いい口実が出来たから、こっちで気軽に食べさせてもらおうかなと思って」


 ……姉妹なのに、エミーとはだいぶ性格が違うんだな……


「あ、今、エミーラお姉様とは性格が全然違うと思ったでしょ」


「ま、まあ、そうだね……」


 何で分かったんだ?


「ふふん、そうエミーラお姉様は、私なんかと違ってとても優秀なんです。優しくて気品があって、民からも慕われている。私の自慢のお姉様です」


 どうして、ミリタニアが自慢気に話すんだ?

 思わず苦笑する。


「それなのに、あんな皇太子と無理やり結婚させられるなんて、出来ることなら、ボクが破談はだんに追い込んでやりたいのに……」


 ……以前、エミーが言っていた婚約者のことか……


「その皇太子って、どんな人なの?」


「あ、失礼しました。お姉様の恋人にこんなこと……、……でも、やっぱり気になりますよね?」


「………ん?」


 ……今、とんでもない言葉を口ずさんでいた気が……


「今、なんて?」


「ですから、お兄さんがエミーラお姉様の恋人なんですよね」


「「?!」」


「ちょっ!」


 僕より先に、ラミーニアとサーフィアが反応している。

 ……二人にとって、今一番敏感な“恋人”という言葉を何回も……


「ウルク!」

「ウル!」


「「どういうことですか!!」」


 二人に詰め寄られる。


「いや、だから、ウルクはエミーラお姉様の恋人なんだって」


 こらーーーーーー!

 これ以上火に油を注ぐな!!

 

 僕は心の中で叫んだ。


「「………恋人………」」


 ラミーニアとサーフィアが放心状態になっている。


「違うから! エミーとは恋人じゃないからな!」


「「………………」」


 ……ダメだ、声が届いていない……


 この後、三人の誤解を解くのに、物凄い時間を費やした。


 

「……お姉様が好きなのは、隣にいた元聖騎士団長のジークスの方だったんですね……」


「そう、それでエミーは傭兵の招集に加わっていたんだよ」


「でも、普通、お姉様のことはエミーラ王女って呼びますよね? エミーって呼んでたし……」


 ああ、それで勘違いを……

 ……というか、まだ疑ってないか?


「……いや、王女だったなんて知らなかったんだよ。それに王女って知った後は、エミーラ王女様って呼ぼうとしたんだけど、本人がエミーって呼んで欲しいって……」


「ふーん、……まあいいや、どっちにしても、お兄さんには手伝ってもらいたいことがあるんですけど……」


 ……お兄さんっていう呼び方は変わらないんだな……


「……それって、婚約解消の手伝いをするってことだよね?」


「さすが、お兄さん、話が早いです」


「確かに、エミーも婚約は不本意だったみたいだから、僕だって解消してあげたいとは思うよ……。だけど、それが簡単には出来ないから困っているんだよね?」


 エミーとは一緒に戦った仲である。

 何とかしてあげたい気持ちは当然あるが……


「はい、ですから、偽装でもいいんですけど、お姉様とジークスを恋人同士に出来ないのかなぁと思いまして……」


「……なるほど……」


 正直、そんなことで解消出来るほど単純な問題ではないとは思う。

 だけど、やらなければ何も変わることはない。


「……試してみてもいいかもしれないね……」


「本当は、お兄さんにお願いしようと思っていたんですけどね……。……恋人ではなかったみたいなので……」


 ミリタニアがジト目でこっちを見てくる。


 ……そんな目で見られても……

 勘違いしたのは、ミリタニアだよね?


「まあ、恋人役なら誰でもいいかもしれないけど、皇太子を説得するのであれば、実力のあるジークスが恋人の方が説得しやすいんじゃないかな?」


「……そう言われると、確かにそうですけど……」 


 ミリタニアは、まだ納得いかないといった表情をしていたが、

「まあ、結果的に婚約が解消出来て、お姉様が苦しみから解放されれば何でもいいです……」

 と言って、気持ちを切り替えていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「という作戦を考えたんだけど、どうかな?」


 ミリタニアと話し合った作戦をエミーとジークスに伝えた。


「……私は……、ジークス様が嫌でなければ……」


「はは、平民の私が王女様の頼みを断るなんてこと出来ませんよ」


 ジークスが笑いながら言った。

 ……ちょっと、楽しんでいないか?


「……でも、ウルクはそれで何とも思わないんですね……」


「え?」


 ……小声だったので、エミーが何を言ったのか聞き取れなかった……


「なんでもないです……」


「……エミー?」


「じゃあ、決まりですね。では、さっそく二人には明日、街でデートをしてもらいます!」


「「デート!!」」


 ミリタニアの提案に、エミーと僕は同時に声を上げた。


 ……そんな作戦は聞いていなかったのだが……


「……デートなんて、そんな急に言われても……」


「お姉様! 結婚予定日はもう決まっているんですよ。早く二人が付き合っていると噂を広めないと、手遅れになってしまいます!」


「……そうよね……、皇太子との結婚を回避するには、もうそれしかないんだもんね……」


 まだ戸惑っている様子はあるが、ミリタニアの熱意にエミーも意思を固めようとしている。


「そうです! お姉様にはミリタニアがついていますから、一緒に頑張りましょう!」


 ミリタニアがエミーの両手をガシッと握った。


「ふふ、ありがとう、ミリー」


 そう言ってエミーはミリタニアに優しく微笑みかけた。

「ミリタニアは、本当にお姉さんのエミーラのことが大好きなんですねw 恋人騒動もありましたが、無事に誤解が解けてよかったですね、ウルクw ……色々と恋模様が交差しているみたいで……、目が離せませんね……」


次回、「エミーラの恋心」


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