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31話 祝勝会

「ふぅ、何とか、納得してもらった……」


 あの後、ジークスに心配され続けて、ごまかすのが大変だった。

 

「ウルク、お帰り!」


 可能な限り魔人を浄化して城塞に戻って来ると、ラミーニアが迎えてくれた。


「ラミーニア、ただいま」


「本当は私も行きたかったんですよ……」


 ラミーニアが少し寂しそうな表情をしている。

 重い物を軽々持てるラミーニアは、城塞内の後始末の仕事に駆り出されていた。


「ありがとう、気持ちは受け取っておくよ」


 ……でも、正直、あの惨状はラミーニアには見せたくないな……

 ラミーニアのトラウマが再燃してしまうかもしれない。


「あ、それよりもちゃんと約束は覚えていますか……」


「約束?」


「もう! 今回の任務を無事に終えたら、街でデートするっていう約束です!」


 ラミーニアがぷんぷんと怒りながら言った。

 怒っているけど、怒り方が可愛かったので思わずクスッと笑ってしまった。


「ゴメン、ゴメン、ちゃんと覚えてるよ。街に戻ったらデートしような」


「やったー!」


 ラミーニアが跳ね上がって喜んでいる。

 

 ……そんなに欲しい物があるんだなぁ……

 確かに最近はあまり買い物に行く暇もなかったしな……


「今回はラミーニアにもかなり助けられたからね、何でも買っていいよ」


 ラミーニアの頭を撫でながらそう言ったのだが、

「?」

 ラミーニアは不思議そうな表情をしている。


「……買い物がしたいんじゃないの?」


「……買い物がしたいわけじゃないです! ウルクのバカ!」


 ラミーニアがさっき以上に怒ってどこかに行ってしまった。


「え? 違うの?」


 じゃあ、どこに行きたかったんだ?

 次に会った時に謝って、行きたい場所を話し合った方がよさそうだ……

 

 ◇ ◇ ◇ ◇


此度このたびの戦いにおいて、皆よく戦ってくれた! お陰で我々は無事に勝利を収めることが出来た! 皆に感謝したい、ありがとう!」


 シムナ団長が壇上で挨拶をし、最後に一礼をした。

 昨日までで戦後処理がひと段落したため、今夜は簡素な祝勝会のパーティーを開いている。


「このまま乾杯といきたいところだが、乾杯は今回の戦いでデグルトを倒した立役者ジークス自警団団長にお願いしたいと思う!」


 ザワザワザワ!


 ジークスが聖騎士団長をしていた頃の聖騎士達もいるのだろう。

 ジークスが登壇すると、会場がざわめき出した。


「ふっ、だから言ったんですよ。俺が前に出ると、祝勝会が台無しになるって……。自分の都合でここから逃げ出した俺なんて、みんなが受け入れてくれるはず………」


「ジークス団長! 水臭いじゃないですか。来てるなら来てるって言ってくださいよ!」


「また、いつか一緒に戦える日がくると思ってました!」


「さすがジークス団長です! 来て早々、デグルトを倒すなんて!」


「歓迎されているみたいだぞ」


 シムナ団長がニヤリとしている。


「どうして……」


 ジークスが戸惑っていると、

「自身で思っている以上にジークスの頑張りが認められていたということだろう」

 とシムナ団長が補足した。


 バン!


 シムナ団長がジークスの背中を叩いて押し出す。


「……みんな、ありがとう……、……急に聖騎士団の団長を辞めたこと、正直、みんなには申し訳ない気持ちで一杯だった。でも、今回デグルトを倒したことで、少しでもみんなの助けになれたのならよかったと思う……」


 パチパチパチパチ!


「「「ジークス団長! ありがとう!」」」


 ジークスが感慨かんがい深い表情をしている。


「では、そろそろ乾杯にしようか。さすがにお腹が空いてきた」


 シムナ団長が笑ってそう言った。


「そうですね。では、今回の勝利を祝って、乾杯!」


「「「乾杯!!」」」


 

『これで、ジークスの罪悪感が少しでも減ればいいんだけどな……』


『そうですね』


 ジークスの過去を知っているだけに、聖騎士達に受け入れられたことを純粋に嬉しく思った。

 おそらく、アリーセスも同じ気持ちだろう。

 

「いつかミーシャさんのことも整理されるといいんだけど……、あ……」


 独り言のつもりだったのだが、隣にエミーがいることを忘れていた。


「え? あ、大丈夫ですよ。ミーシャさんが婚約者だったということは知っていますし、故人こじんに嫉妬なんて、するべきじゃないって、さすがに分かっています」


 ……本当に大丈夫……だよね……

 怒っている様子には見えなかったが……


「ウルク、この料理おいしいよ! 一緒に食べよ!」

「ウルク、こっちの料理の方が美味しいです」


 ラミーニアとサーフィアが食べ物を競い合うように持って来た。


 あの後、ラミーニアと話をしたところ、買い物よりも一緒に遊べる場所に行きたかったらしく、行き先を変更したら機嫌を直してくれた。

 どうして急に怒り出したのかは、いまだに謎のままであるが……


「……どっちも美味しそうだけど、同時には食べられないよ……」


「ウルクは私と食べるの!」

「いえ、ウルクは私と食べたいはず」


 ……何故か、最近、ラミーニアとサーフィアの仲が悪い気がするんだけど、気のせいか?

 

 チラッとエミーに視線を送って助け舟を求めるが、

「私の心配よりも自分の心配をした方がよさそうですね」

 と言って、クスッと笑っていた。

「ウルクとラミーニアちゃん、仲良しですねw ……少しは辛い気持ちが晴れてよかったね、ジークス……。……ウルク、モテモテですね……」


次回、「本当にバカだ……」


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