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24話 罠

「お、遅かったな」


 城塞じょうさい辿たどり着くと、ジークスが出迎えてくれた。

 

 ……早過ぎないか……

 僕達も相当時短そうとうじたんで戻って来たのだが……

 

「ジークス様、ご無事で良かったです!」


 エミーが一番に声を上げた。


「ありがとう。本当は、あの魔人を倒してから戻りたかったんだけどな……」


 どうやらデグルトを倒すことは出来なかったらしい。

 ジークスが悔しそうな表情をしている。


 おそらく戦っている間に他の魔人達も駆けつけて来て、戦いを続けられなくなったのだろう。

 防具がすみだらけになっているのを見るに、相当な激闘げきとうだったことは予想出来る。

 実際、逃げている時に物凄ものすごい爆音が後ろから聞こえていた。


「何にしても無事で良かったです」


「ウルク達も無事で良かったよ」


 ジークスも心配してくれていたようだ。

 魔人に見つかった時はどうなるかと思ったが、何とか全員無事に帰還きかんすることが出来た。


 ……ほんと、無事に戻って来れてよかった……


「……ウルク、シムナ団長に早く得た情報を伝えないと……」


 サーフィアが僕の服のそでを引っ張りながら言った。

 

「ああ、そうだね」


 帰ってきて少しゆっくりしたいところだが、早く報告しないといけないこともある。


「それじゃあ、申し訳ないが、そのまま会議場に移動しよう。シムナ団長も報告を待ち望んでいる」

 

 僕達は待機していた馬車に乗って会議場に移動した。



「では、さっそく得た情報を教えてくれ」


 会議場の椅子に全員が座ると、シムナ聖騎士団長がサーフィアに言った。


「はい、では結論から先に報告します。魔人達の心の会話を聞いたところ、魔王軍は既に傭兵の中にスパイをまぎれ込ませており、外からの攻撃に合わせて城塞内からも攻撃をくわだてているようでした」


「傭兵達の中にスパイが?」


 シムナ聖騎士団長が少し考え込む。


「確かに、その可能性はあるかもしれんな……。魔族の数を増やした分、我々が傭兵を集めるということは、魔王軍も容易よういに想像出来るだろう。元々、その作戦を見越みこして魔族を増やしていた可能性もあるが……」


「問題はどうやって、そのスパイを見つけるかだな」


 ジークスがシムナ団長の言葉の続きを言った。

 

「うむ、今回集まった傭兵の人数は膨大ぼうだいな数だ。開戦かいせん間近まぢかせまっている今、一人一人に事情を説明して聞いていくわけにはいかない。かといって、全員にスパイがいるかもしれないと一斉いっせいに伝達をすれば、お互いに疑心暗鬼ぎしんあんきとなり戦いの士気にもかかわる……」


「あのー、その役目、自分がやりましょうか?」


 シムナ団長とジークスが頭を悩ませていたため、自分から手を上げた。


「そうか、ウルクの能力を使えば」


「能力?」


「ウルクは魔族がどこにいるのか察知さっちすることが出来る能力があるんです」


 シムナ団長の質問にジークスが答えた。


 まあ、本当は僕の能力ではなく、アリーセスの能力なのだが……


「おお、それは本当か?」


「はい」


『だよね、アリーセス』


 先走さきばしってしまったが、念のためアリーセスに確認する。


『はい、そのスパイ達の魔のきりの量が多くないようですので、広範囲では気がつきませんでしたが、近くで確認をすれば見つけることは出来ると思います』


『了解』


「ウルクの能力は自警団で仕事をしている時に既に証明済しょうめいずみです」


 ジークスが付け加える。


「そうか、ジークスが言うのなら間違いないだろう。では、この件はウルクに一任するがよいか?」


「はい、大丈夫です」


「あ、でしたら、私も光の精霊使いとして、普通の人よりは魔族かどうか見抜く力がありますので、ウルクの手伝いをしたいと思います」


 シムナ団長が言い終えると、エミーが協力に買って出てくれた。

 さすがに一人では時間がかかるので、それはありがたい。


「私も闇の精霊使いとして見抜く力があると思うので、ウルクを手伝います」


 サーフィアも手を上げた。

 あ、サーフィアも手伝ってくれるのか。

 撤退の時もそうだったが、みんな協力的で非常に助かっている。


「サーフィアもか。まあ、自分で得てきた情報ならなおさら最後までやり遂げたいだろう。それでは三人で協力し合って、魔王軍のスパイを見つけてきてくれ」


「「「了解しました」」」


 そう三人で返事をするが、ふとラミーニアをみると寂しそうにしていたため、

「ラミーニアも僕の手伝いをしてもらっていいかな?」

 と伝えると、

「はい!」

 と嬉しそうな表情でラミーニアは返事をした。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「と、おそらく潜入せんにゅうしてきた連中はそう考えている頃だろう」


「さすがヴァグリア様、まさか潜入しに来ることも含めて罠だったとは思わないことでしょう」

 

 魔王軍の本陣で、ヴァグリアとその腹心デグルトが話をしている。


「しかし、私が戦った風の精霊使いが、まさかヴァグリア様と敵対てきたいしていたジークスだったとは……」


「デグルト、神位精霊を持っていないジークスなど恐れるにあたいしない! 勇者がいなくなった今、魔王十二将が恐れているのは勇者達が残した遺産いさんだけだ!」


「……失礼しました、ヴァグリア様……」


 怒気どきを強めたヴァグリアにデグルトが恐れおののく。


「まあいい、今回の手柄てがらはお主の手柄でもある。成功したあかつきには、特別な褒美ほうびほどこそう」


「は、ありがたき幸せ!」


「ふふふ、待っているがいい、人間どもよ。戦いに大敗たいはいし恐怖にふるおびえる姿が目に浮かぶわ!」


 ヴァグリアの不敵ふてきな声が、魔王軍本陣全体へと響き渡っていた。

「ジークス、さすが早いですね。まあ、私は魔族探知機みたいなものですからw ……気のせい? 何故か嫌な予感がする……」


次回、「闇の精霊使い」


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