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20話 二人の決意

「何で、僕の名前を知っていたんだろう?」


 あの後、すぐにサーフィアがお風呂から出て行ってしまったので聞けなかった。


「まあ、あの台詞セリフから推察すいさつすると、今日の作戦会議で会いそうな気はするが……」


 今日は今後の任務について話し合う会議がある。

 会議場までは馬車で移動するため、みんなとは馬車で待ち合わせすることになっている。


「ウルク、おはよう」


 馬車の近くまで歩いて行くと、先に馬車の中にいたラミーニアがひょこっと顔を出して挨拶をしてきた。


「あ、ラミーニア、おはよう。昨日はよく眠れたかな?」


「馬車で移動している時よりは眠れたけど……」


「ん?」


「……やっぱり、ウルクにくっついて寝たいかなって……」


「ああ、そういうこと」


 ロワイアントナーガの宿屋にいた時は、毎日、僕の布団の中に入って来ていた。


 馬車で移動している時は寝袋を使っていたし、昨日も部屋が別々だったので以前のようにくっついて寝る機会はなくなっている。


 昨日は温泉に入って気持ちよく眠れたが、確かに僕よりも体温の高いラミーニアとくっついていると、身体が暖かくなっていつもより深く眠れていたような気もする。


「早く仕事を終えて、また一緒に寝たいです!」


「そうだね。仕事を終えたら、また一緒に寝ようか」


 僕がそう言うと、ラミーニアは、

「やったー!」

 と声に出して、両手を上げて喜んでいた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「全員揃ったみたいだな。それでは会議を始めようか」


 会議部屋まで移動し終え、シムナ聖騎士団長を中心に作戦会議が始まった。


 シムナ聖騎士団長には初めて会ったが、歳は四十代後半くらいだろうか。

 銀髪で屈強くきょうな戦士といった感じので立ちだ。


 会議の場には僕たち三人と、予想通りエミーラとサーフィアも参加していた。

 今日のサーフィアは中剣とダガーを装備している。


 目が合うと挨拶代わりに右手を軽く上げてくれたので、こちらも軽く右手を上げて返した。

 因みにエミーラはジークスが気になる様子で、チラチラと横目で見ている。 


「まずは今日この場に傭兵として集まってくれたことに感謝したい」


 そう言うとシムナ聖騎士団長が一礼した。

 合わせて、僕たちも一礼する。


「この場には募った傭兵達の中から、精霊使いを中心に集めさせてもらった」


 ということはサーフィアも精霊使いということなのだろう。


「精霊使いを中心にパーティーを組むということは、俺達の任務が防衛以外にあるということか?」


 ジークスが口を開いた。


「さすがだな、ジークス」


 大規模な戦闘になるとの見通しだが、基本的には攻めてくるのは魔王軍。

 この城塞じょうさいで魔王軍の進行を食い止めるのが傭兵も含めた聖騎士団の基本的な任務。


「最近、我々が対峙たいじしている魔王軍が、魔族の数を増やしているとの情報が偵察部隊ていさつぶたいから入ってきた。そのため、我々は次回の戦闘時には相当な規模の軍勢ぐんぜいが準備されていると予想し、今回は傭兵まで招集しょうしゅうするにいたったのだが……。実はそれ以外にも懸念けねんしていることがある」


「それ以外の懸念?」


 ジークスがいぶかしげに聞いた。


「ここからは私の直感なのだが、今回の企み、魔王十二将の一人ヴァグリアが関わっている可能性が高い」


「……ヴァグリア……」


 ん?

 一瞬ジークスの声色が変わった気が……


『ウルク、魔王十二将ヴァグリアはジークスの婚約者を追い詰めた魔人です』


 アリーセスが話しかけてきた。


『そうなのか? ……だとすると、ジークスが今回の招集に応じたのって……』


『はい、ウルクの予想通り、ジークスは機会があればヴァグリアを倒したいと思っています』


『でも、今のジークスだと、そのヴァグリアには勝てないんだろ?』


『残念ながら……。ですから、ウルクにはジークスが感情的にヴァグリアと対峙することがないように、抑止力よくしりょくになって欲しいのです』


『……止められる自信はないけど、善処ぜんしょするよ……』


 ジークスの本気を一度も見たことがないので、もしジークスが感情的になった場合、止められる自信はない。


「そこでたくしたい任務なのだが、ジークスをパーティーのリーダーとして、敵陣営近くまで接近。そこでヴァグリアが何を企んでいるのか。情報収集をしてきて欲しいと思っている」


 アリーセスと会話している間も話は進んでいる。


「……接近と一言で言っても、情報収集できるくらいまで接近するには相当近づかないといけないだろう? 流石さすがにそこまでは近づけないぞ」


 ジークスが疑問を投げかける。


「サーフィア」


「はい」


 シムナ聖騎士団長が、突然サーフィアを呼び寄せた。


「この娘、サーフィアは闇の精霊魔法が使える」


「……なるほど、闇精霊使いか」


「…………?」


 どういうこと?

 ここはアリーセス先生に聞くしかないな。


『闇の精霊使いは闇精霊魔法が使えるのですが、その闇精霊魔法の中には魔人の精神と共鳴きょうめいすることで思考しこうを読むことが出来るという魔法があります』


 さすが先生。

 ということは、サーフィアの闇精霊魔法を使うことで、リスクの少ない位置からでも情報を得られるということか……


「作戦は分かったが、危険な任務には違いない。サーフィアを本当に連れて行っていいのか?……」


「……ああ、実はこの作戦はサーフィアが言い出したこと……、故に我々は既に決意している……」


 シムナ聖騎士団長の隣でサーフィアが頷いている。


「……分かりました……。では、お二人の決意を組みたいと思います」


 さっきから、ジークスの含みのある言い方が気になるな。

 もしかして、シムナ聖騎士団長とサーフィアって……


「具体的な戦略は午後にめるとして、まずは、皆で食事としよう。これからパーティとして行動を共にしてもらうのだ。会議の場では親睦しんぼくも深まらないだろう」


 アリーセスに確認したいことがあったのだが、その前にシムナ聖騎士団長が話し始めた。


「まあ、そうだな」


 ジークスも同意し、僕達は、そのまま食堂へと移動した。


 戦地なので食事のメニューには期待していなかったのだが、テーブルの上には美味しそうな料理が立ち並んでいた。

 魔族と境界線で戦う任務には根気こんきが必要なため、国からりすぐりの戦場料理人が派遣はけんされているとのこと。


 食事を楽しみながら、お互いがどの系統けいとうの精霊使いなのか等、僕達は自己紹介をし合った。

「ラミーニアちゃん、ウルクと一緒に寝られなくて寂しいんだねw でも、ラミーニアちゃんと一緒に寝られたら気持ち良さそう……。ジークスとサーフィアは任務に対して前のめりになっていてあやういですね……。……二人から目を離さないでくださいね、ウルク……」


次回、「エミーラの事情」


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