2話 プロローグ後半
「「また、何かありましたら、お呼び下さい」」
そう告げると火の精霊ファライアと水の精霊ミューリアスは姿を消した。
『火と水が使えることで、森から出る助けとなると思います』
「………………」
思考が追いつかないので、色々と整理をしてみよう。
まずは、精霊。
この世界、えーと、「リゼラミア」とか言っていたかな。
には、精霊がいるらしい。
「二人の精霊は、どうやって現れたんですか?」
突然、現れたり、消えたり、どうなっているんだ?
『精霊には決まった形があるわけではありません。各精霊の要素を密集させることで、精霊の姿として見えるようになります。また、人型になることで、対話も出来ます』
……それは便利な存在だな……
というか精霊を自由に授けたり出来るなんて、この声の主は、本当に創造主なのか?
「あのー、念のため、もう一度、確認をしたいのですが……。あなたは、本当にこの世界の創造主なのですか?」
『はい、この世界リゼラミアの創造主です』
……まあ、そう答えるよね……
自分で言ったことをコロコロと変えるはずがない。
……せめて見ることが出来れば、分かりやすいんだけど、目には見えないと言っていたし……
「信じたいとは思っているのですが、にわかには信じられないというか……。何か証拠になるものはありませんか?」
『申し訳ありません。私は創造主ではありますが、人間を創造した際に自身にルールを課しました。それにより、人間に出来ることが制限されているのです』
……創造主ではあるけれども、人間に対しては全能ではなくなったということか……
『今、私がウルクに出来ることは、さきほどのように精霊を授けることと、ラムラグの森を案内することくらいしか出来ません』
……まぁよくよく考えると、この絶望的な状況で、森の案内と最低限必要な火と水を準備してくれると言っているのだから、今の自分にとっては創造主という存在にしておいてもいいのかもしれない……
「分かりました。まだ、信じられない気持ちはありますが、一緒に森から抜け出せた時には、もう少し信じられるかもしれません」
『はい、それで十分です』
正直、今はこの声の主が創造主かどうかということは問題ではない。
この森から出ることが、まずは第一に優先すべきことだと判断した。
「えーっと、一つ質問があるのですが……」
『はい』
「火の精霊と水の精霊によって、森の中で生きていくのに必要な火と水が確保出来ると言いましたよね? どのように火と水を出せるようになるのですか?」
これは聞いておかないと。
『精霊によって、火や水を出現させる方法は、二つの方法があります。一つは精霊にお願いして使う方法で、これは精霊が自らの力を使って火や水を出現させます』
「……なるほど……」
さっきの精霊達にお願いすれば、火と水は確保出来そうだ。
ほっと胸を撫で下ろす。
何とか生き延びる道が見えてきた。
『そして、もう一つの方法は、主人の指示により、精霊自身が火や水となって顕現する方法があります。後者に関しては、精霊使いとしての訓練が必要となってきますので、当分は、前者の方法により、火や水を使うことになるかと思います』
取り敢えず、後者に関しては、森から出るまでは考える必要はなさそうだな。
「では、創造主さん………」
『どうかしましたか?』
「あ、いや、毎回創造主さんと言うのは、なんか呼びにくいというか……、名前はないんですか?」
『私に名前はありません。ですが、逆に何と呼んでいただいても構いません』
「……ということは、僕が決めた名前で呼んだらいいということですか?」
『はい、それで大丈夫です』
とは言うものの、ペットの名前すらつけたことがないので、いい名前がつけられるかどうか……
「性別は、どちらになるんですか?」
声だけでは判断出来なかったので、性別が分かれば、名前のイメージが湧きやすいと思うんだけど……
『私に性別はありません』
……そうなの?
……創造主って性別ないんだ……
『ですので、ウルクの好きな方の性別をイメージしてもらえればと思います』
あれ?
……何となく、心を読まれた気がする……
「……創造主ってことは、人の心が読めたりするんですか?」
『はい、心で会話することが出来ます』
……さっきまで心の中で思っていたこと、全部、聞かれていたのか……
隠し事は出来ないな……
というか、これも聞かれているってことだよね。
それなら、ちょっと試しに。
『聞こえます?』
声には出さずに心の中で会話してみる。
『はい、聞こえます』
……聞こえてるね……
ここまでくると、この世界の創造主ということに確信があるわけではないけれども、声の主が人間以上の存在だということは、さすがに理解した。
ん? となると……
『創造主さんの声は、僕にしか聞こえていなかったということですか?』
普通に会話をしているつもりだったけど、もしかして、心に話しかけられていた?
『はい、ウルクにしか聞こえていませんでした』
……これは、気をつけないといけないな……
傍から見ると、独り言を喋っている危ない人だと思われてしまう。
森の中なので、誰も聞いている人がいなかったのは、不幸中の幸いだったが。
『今後は、心で会話するようにします』
『分かりました』
……それはそれとして、名前どうしようかな……
性別は、僕のイメージに近い方を選んだらいいんだよね。
優しそうな声の雰囲気から、どちらかというと“女神”に近いイメージだったんだけど……
ん?
女神という単語を出した時に、ふと、名前のイメージが浮かんできた。
『……では、名前ですが、アリーセスという名は、どうでしょうか?』
『アリーセスですか? ……そうですね。はい、よい名前だと思います』
気に入ってもらえたようだ。
『よかったです。では、今後は、アリーセスと呼びますね』
『はい、アリーセスとお呼びください』
こうして僕は、怪しげな創造主アリーセスと二人の精霊達と共に、このリゼラミアという異世界を一緒に冒険することとなった。
……でも、まずは生きて森から出ないとね……
そう心の中で呟きながら、ラムラグの森から脱出するべく歩み始めた。
「アリーセス、アリーセス。ふふ、気に入ってしまいました。いい名前をつけてくれてありがとう、ウルク。いよいよ冒険の始まりですね。精霊達とも一緒にリゼラミアを楽しく冒険しましょう!」
次回、「精霊」
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