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19話 エミーラとサーフィア

 ギギ―!


 門番がジークスを目視もくしで確認すると城門が開き出した。

 馬車に乗って三日。

 僕達は第七聖騎士団の城塞じょうさいにようやく辿たどり着いた。

 

「ジークス、久しぶりだな」


「お、ロイド副団長か、久しぶり」


 門が開いた先には屈強くきょうそうな聖騎士が立っていた。

 どうやらジークスの知り合いのようだ。

 ジークスが馬車から降りる。


 しばらく、ロイド副団長と話をした後、

「俺はシムナ聖騎士団長に会って来るから、ウルク達はここらで待機しててくれ」

 と伝えに来た。 


「分かりました」


 待っている間することもないので、馬車の中から城塞や聖騎士達の様子を眺める。

 城塞は簡易(かんい9に作られているのかと思っていたが、大人三人ほどの高さまで石が積まれており、なかなか頑丈な作りに見えた。


 ……聖騎士達はガタイがいいな……

 みんな強そうに見える。


「ジークスはこの聖騎士達をたばねる団長をしていたんだよな……」


 改めて、ジークスの凄さを実感する。


「ジークス様御一行の馬車はこちらでしょうか?」


 ぼんやりと城塞の造形ぞうけいを眺めていると、碧眼へきがん金髪の美少女が突然声をかけてきた。

 レイピアを装備しているので、この人も傭兵として来ているのかもしれない。


「……そうですが、ジークスは今聖騎士団長と話し中ですね」


「そうですか……」


 女性は残念そうな表情をしている。


「ジークスと知り合いなんですか?」


「……知り合いではないのですが……。あ、紹介が遅れました。私の名前はエミーラと言います。今回は第七聖騎士団の傭兵としてここに来ています」


「エミーラさんですね。僕の名前はウルクといいます。同じく傭兵としてここに来ました」


「ウルクさんですね。あ、でも、呼び方はエミーラでいいですよ」


「そうですか。だったら、僕もウルクでお願いします」


「了解しました。では、今後はウルクって呼びますね」


「「………………」」


 会話は終わったのだが、エミーラは名残なごり惜しそうにその場にとどまっている。


「えーと、ジークスに逢いたいと言っている人がいたと伝えておきましょうか?」


「………………いえ、お気遣いありがとうございます」


 一瞬、パッと嬉しそうな表情をするが、エミーラは冷静をよそおって返答した。

 ……本当は逢いたいんだよね……

 

 ジークスのファンかな?

 実際、自警団の仕事に携わっている時、何人かジークスの追っかけらしき人達を見かけていた。


「では、私はここで」


「もうすぐ、ジークスも戻って来ると思うんだけど……」


「……大丈夫です。傭兵の中でも精霊使いは特殊任務があるみたいですので、おそらく同じ任務に就くことになると思います」


 ……ということはエミーラも精霊使いなのか。

 見えないようにしていたファイとミューリが見えていたのかもしれない。


「そうですね。もし同じ任務で動くことになったらよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そう言うと、エミーラは一礼してその場を離れた。


 しばらくすると、ジークスが戻って来た。


「待たせたな。具体的な話は明日するから、今日は取り敢えず宿泊所しょくはくじょで移動の疲れをいやしてくれってさ」


「分かりました」



 ガチャ!


 馬車に乗って宿泊所まで移動し、泊まる部屋のドアを開けた。

 ジークスと僕が相部屋あいべや

 ラミーニアは今日来た女性の傭兵、おそらくエミーラと相部屋のようだ。


 部屋はベッドとテーブルと椅子が置いてあるだけという簡素かんそな部屋だった。

 宿泊所が借りられるのは今日だけで、明日からはテントで寝袋生活になる。


「まあ、リゼラミアに来た当初の生活を考えれば、テントや寝袋があるだけいいだろう」


 因みに、この城塞には簡易に作られた露天風呂があるらしく、任務についている時間帯でなければ自由に入れるらしい。


「明日から忙しくなるだろうし、取り敢えず、温泉にでもゆっくり浸かろうかな」


 直ぐに入浴準備をして温泉場へと向かった。



「あれ、ラミーニアも温泉?」


「はい、移動の間はゆっくりできませんでしたので……」


「そうだよね。僕も今日はゆっくりさせてもらおうと思って」


 馬車で移動していた時の話をしながら、温泉場の入り口まで一緒に向かった。


 温泉場は大浴場と小浴場の二ヶ所あり、小浴場はお客優先の浴場として使われている。

 今日はお客扱いで小浴場を使わせてもらえるので、僕もラミーニアも小浴場に入ることにした。


「じゃあ、また後で」


「はい」


 入り口が男女で分かれているので、別々の入り口へ入った。

 脱衣所でさっと着替えて、さっそく露天風呂へ。


 ガラガラ!


「おお、小さいけどいい感じだな」


 引き戸を開けると、温泉特有の香りや湯気ゆげが広がっていて、思わず戦場の最前線に来ていることを忘れそうになるくらい浴場の雰囲気は良かった。


「ん?」


 よく見ると先客がいるようだ。

 湯気でよく見えないが、温泉にかっている人影が見えた。


「あ、すみません、お邪魔します」


 一言あいさつをして、温泉に入る。


「どうぞ、お構いなく」


「ありがとうございます。では、遠慮なく。………って、ええ!?」


 返事をした声は男性の声ではなく、女性の声だった。 

 女性がいるはずないと思って、そのまま入浴してしまったが……


「……すみません、ここ男湯だと思ったのですが……」


「間違っていませんよ」


 ……どういうこと?

 男湯で間違ってないってことだよね。

 

「「………………」」


 なんとも気まずい無言の時間が続く。


「やっぱり、僕出ますね」


 場の空気に耐えられなくなってきた。


「大丈夫ですよ。一応、水着を着ていますので」


 そう言うと立ち上がって、水着姿を見せてくれた。

 え、それでいいの?


 ……もしかして、この城塞では水着を着ていれば一緒に温泉OKみたいなルールになっているのか……

 

「今日は女性しか小浴場を使わないと聞いていましたので、使わせてもらっていたのですが、変に気を遣わせてしまい申し訳ありません……」


 あ、そういうこと。

 確かに予定よりも一日早く到着したのだが……


 というか、何でそんな冷静なの?

 男の自分の方が、あくせくしている。


「私の名前はサーフィア。明日からよろしくね。ウルク」

「ヒロインが急に二人も増えましたw まさか、男湯にサーフィアがいるなんて思いませんよね……。え、どうして教えてあげなかったのかって? 教えた方がよかったですか?」


次回、「決意」


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