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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
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83話  デレとデレの応酬

 それはそうと、とオリアーナがディエゴを見下ろした。なんだか少し目つき厳しくない?


「いい加減離れて頂けますか、ソラーレ侯爵令息」

「ん? ああ」


 間近なイケメンが離れて胸を撫で下ろす。はあ、折角の告白イベント(返事/本番)を見逃すなんて。見逃し配信とかあればいいのに、課金いくらでもするから。


「残念ですが、彼女はオルネッラではありません」

「え、そこも言っちゃう?」

「彼女はチアキ。私の恩人です」


 オ、オリアーナ、クールな中に何故かディエゴへの敵意を僅かに感じるけど、発言は確実に私へのデレじゃん。素敵、出来れば笑顔で言って。少女漫画の如く、キュンという効果音を鳴らさせて。


「ソラーレ侯爵令息、貴方は私に似ています」

「ツンデレとクーデレが? ジャンル違いだよ」

「オルネッラを好きという事と、チアキを好きという事です」

「ヒイ」


 今オリアーナが私を好きと!

 さっきから私の言葉丸無視なのは置いといて、凄い爆弾発言がおりてきた。神よ、告白イベント(返事/本番)が見られなかった私のためにデレというご褒美をありがとうございます!


「なので、チアキにオルネッラの影を求めて愛を語るならお引き取り下さい」


 デレや、デレで間違いない!

 私の大事なチアキにちょっかいかけないでよ、的な? 私もうオリアーナと養子縁組する、戸籍上完全な家族になるよ、この際。


「オリアーナ、君の言う通りだ」


 ここにきてディエゴが立ち上がり、オリアーナと向かいあった。

 オルネッラって意外と身長低くて、私も見下ろす形になっていたけど、私よりさらに背の高いディエゴが並ぶとより小さく見えるな、可愛い。そして立端のあるイケメンて凄いお得感があるな、オルネッラぐらいの身長と並ぶと映えるわ、眩しい。


「俺も最初こそはオルネッラの影を重ねていた。けど俺は彼女が彼女だから好きなんだ。気づくのが遅かったが今ははっきり言える。君もそうだろう? オルネッラとは違う、彼女だから好きなんだと」

「ええ、その通りです」

「んんん!」


 デレとデレの応酬とは破壊力のぶつかり合いだ。告白イベント(返事/本番)も捨てがたいが、目の前でばちばちしながらデレ合うのもなかなかいい。脳内保管だ、美人同士ありがとう。


「チアキには品性が足りません」

「ああ、圧倒的にな」

「言葉遣いも中々直りません」

「ああ、そうだな」

「沸点が低く、すぐに手が出ます」

「制止もきかないしな」

「魔法の扱いもまだまだです」

「確かに」

「爵位制度の事も関係なく自由です」

「その通りだ」

「ちょ、ここにきて悪口?!」


 ひどい、さっきまでデレにデレてたのに! もっと私に対するデレを見せてよ! 悪口やめてよ! 私頑張ってるんだからさ! このままじゃ泣くよ? 推しに悪口言われたら泣くしかないんだからね? あと本人目の前にして言わなくてもいいと思うよ! 言われたこと充分承知してるし!


「ですが、いつも胸を張っていて凛々しい」

「それだけで安心できるな」

「私達に優しくて」

「甘すぎるぐらいだ」

「ええ、チアキ自身に危害を加えた者すら救おうとしますから」

「そうだ。やり方は乱暴だが、全てを抱えて全ての幸せを願っている。そしてそれを実現してみせようとしてるし、彼女なら出来るとも思える」

「え、私世界平和望んでないけど?」


 あくまで私の周囲の推し達が幸せになれるかどうかが基準だ。それも推しが私にデレを見せるか、それを拝めるかが重要なのだけど。

 話が壮大になっている。それは冒険ファンタジーものとかでやればいいと思うよ。確かに私の体験しているこの現状はファンタジーだけど、決して冒険も壮大な雰囲気もないから。


「いつも私達を引っ張って助けてくれます」

「そうだな」

「でも何故か放っておけないのです」

「ああ、分かる」

「妙な所で抜けているのです」

「その通りだ」


 頼もしいのか頼もしくないのか、微妙に悪口なのかそうじゃないのかのラインを攻めるね。

 褒められてると解釈しよう。その方が幸せだし。

 でもこれだけは言える。私は断じてドジっ子ではない。


「彼女は……私達の世界の外から来た人です」

「そうなのか」

「それでも貴方はチアキの事が好きだと?」


 なんかもう全部話しちゃってるけど、存外驚いた的な反応ではないな。いつの間にか私の隣に座っているエドアルドすら平然としているし、ディエゴなんて納得といった具合。

 エステルとトットだって、初めて中身チアキだと言った日は驚いていた。あの時の驚いた二人可愛かったな……踏んだり蹴ったりの所に現れたから運命しか感じなかった。懐かしい。


「チアキ……」


 ふとディエゴがオリアーナから目線を私に移して、じっと見て私の名を呼ぶものだから、軽く手を振ってみた。それにふっと笑ってきて、本当ツンデレのツンはどこなのだろうとしみじみ思った。ツンデレの破壊力は、ツンがあるから引き立つのであって、毎日二十四時間デレだけだとキャラ崩壊だ。

 けど、ディエゴのデレはまだ続く。


「何度でも言うぞ。俺はオルネッラの事は憧れていたし好きだった。それは今でも変わらないし、想いは確かなものだ。けどあくまでそれは過去の事だ。俺は彼女にオルネッラを求めていないし、彼女だから想いを伝えている」

「……そうですか」


 わかりました、とオリアーナが瞼を閉じて、一つ息をゆっくり吐いた。

 次に瞼を開けた時、もう敵意も何もないクールなオリアーナがそこにいた。


「貴方の覚悟は分かりました…………応援します」

「どうして!?」

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