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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
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80話 川の字で一緒に寝るイベントは終わっていない

 少しだけふらついて、ゆっくりというよりはたどたどしい足取りでディエゴは馬車に乗り込み帰って行った。

 ふう、よかった。帰ってくれたわ。

 安心に身を包まれてる私をしらっとクールにオリアーナは視線を寄越して呆れ気味に話しかけた。


「チアキ、話していないのですか」

「中身がオルネッラじゃないって事しか話してない」

「何故話さないのです」

「そ、それは、オリアーナに任せる」

「……いいのですか」

「うん」


 面倒になったのでしょう? と静かに言われ、びくりと肩を鳴らした。

 いやもうあんなにぐいぐいこられたら大変なんだよ。それにさっき会話面倒になって省略しようとしたオリアーナに言われたくない。

 人違いという誤解を解けないし……今まであんなに会話通じないなんてことなかったのに、ここにきてこのちぐはぐ感。恋で暴走するタイプは思いのほか厄介だ。


「大丈夫だよ、ちょっと戸惑っただけ。きちんと丸くおさめるから」

「そうですか」

「さあ、オリアーナ走ろう。クラーレから許可もらったでしょ?」

「……難色を示しましたが、誰かが共にいるなら良いと」


 よかった、これで安心して動けますね。

 ついでに今日一日どんなものだったか聴いてみよう。

 走りながら会話できるっていうのはお得だ。誰かが聞いているという心配もあまりないし、ついでに健康も得られるし。


「で、どうなの?」

「父が……」

「あの人変わらないんかい」

「はい」


 父親ときたら昨日私がディエゴに正体見破られてヒイヒイだった時に、オリアーナ(見た目オルネッラ)に詰め寄って自分を殴れとか言い始めたらしい。

 曰く、オリアーナにひどいことをした、それでもオリアーナは自分を許してくれている。でもそれで終わりと言うのはどうなのか。そこでオリアーナを溺愛していて、唯一一番近い親族のオルネッラに頼んだと。

 当然中身はオリアーナだし、内容も全て見ていた。オリアーナに手を上げてしまったなんて懺悔をしたところで、実際被害を受けていたのは目の前の女性ですというオチだ。

 父親はオルネッラが起きた喜びと自分の罪の重さに挟まれて、咽び泣いてオリアーナにしがみついてきたらしい。女々しいな父よ。

 そして勢いそのまま人の話なんぞ聞こうともしない状態に入ったようで、オリアーナが中身の話をしようにも出来なかったと。

 父親、本当不器用に生きてるな、どんまい。思春期の娘に嫌われるぞ。


「落ち着いたらだね」

「そうですね。その、殴るのは嫌なのですが、どうしても殴られたいようで」


 文面がえぐいぞ。ドMのアピールタイムみたいな言葉になってる。


「言っとこうか?」

「……いえ、自分で言ってみます」

「オッケー」


 オリアーナえらいぞ。自分で自分のことをやってみようというその気持ち大事にしてね。

 そしてチアキはと軽く話を振られたので、ひとまずディエゴの話をしておいた。

 明日口裏合せてもらうシーンもあるかもしれないし、そのぐらい彼の挙動は印象深かった。


「ああ、でも彼の気持ちは分かります」

「え?」

「チアキが姉に似ている事です」

「そっちね」


 そういえば、オリアーナにもオルネッラに似ているって言われた気がする。

 この世界の人達、割と爵位は爵位で縛られてるし、自由人が珍しいのかもしれない。そうなるとオルネッラは貴族界で異端だったんだろうな。話によると明るくて堂々してて、事業も魔法という勉学もいける、で、見た目がこれならもはやパーフェクトじゃんか。


「チアキは告白の返事をしないのですか?」

「人違いの告白だよ、断る以外の選択肢はない」

「ではチアキが好きだと言われたら、どうなのですか?」

「ディエゴはオルネッラが好きなんだよ」

「ですので、例えの話です」


 IFの話ね。

 イケメンに好かれるのはやぶさかではない。目の保養に最適だ。けど実際自分が付き合うとなったら、どうなのか。

 久しく恋愛なんてご無沙汰で干物してたから、そういう気持ちをどこかへ置いてきてしまっている。ついでに言うなら一回り以上違う、今の見た目年齢では同い年だけど。

 そのままをオリアーナに伝えると少し間を持って、次に小首を傾げた。


「チアキの気持ちは」

「え?」

「年齢は関係ないのでは? チアキが九十歳の時、彼が八十歳なら、大して変わらないように思えますが」

「その例え、よく聴くよね」

「なので、チアキ。貴方の気持ちはどうなのでしょう」

「うーん、分からないね」


 事実だ。

 告白イベントは有り難く回収して、脳内保存する。けど、実際自分にそれを向けられたら分からないというのが本音だろう。


「てかオリアーナ、ぐいぐいくるね。そういうの一緒に寝ながら話すやつだよ」

「ええ、それでもかまいませんが」

「うっそ! 本当に?!」


 デレありがとうございます!

 昨日は一人で寝てたけど、なんなの私とそんなに一緒に寝たいの?

 もうそのイベントはクリア済みだと思っていたよ。ああ可愛い可愛いな、オリアーナ。もっとください。


「では今日も一緒に寝て下さい」

「ありがとうございます」


 美人の添い寝、最高かよ。

 まあ話はしてこないけど、彼女は彼女で心配やら不安やらあるのかもしれない。なにせ明日は学園初通学日だし。

 大丈夫、オリアーナ。成功しかないし、石投げてくるような奴いたら、私がボコボコにするから。


「ぼこぼこは結構です」

「何故分かった」


 言葉にしてないのに、私の脳内読めるとはどういうこと。

 オリアーナがオルネッラの身体で目覚めてから、やたら感がいいというかもう舞い降りてる感が半端ない。

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