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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
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79話 オルネッラだから好きなの?

「どうしたの」

「いや、丁度君を見つけたから、話しかけようか悩んでいた」

「遠慮せずに声かけて」

「ああ」


 後ろからついてこられる方が怖いから。

 というか、なんで悩むの。


「今日、一緒に走りたいってこと?」

「あ、ああ、そうだな」

「歩きたい気分だから、そっちの馬車に乗る気はないけど」

「かまわない。俺も歩く」

「どうぞ」


 馬車の人にガラッシア家に時間を合わせて行くよう頼んで、一緒に森林浴しながら歩くことになった。

 朝よりは大人しくなってるな。けど、彼の話す事はやっぱり昨日と同じだ。

 愛を囁く事はしないまでも、オルネッラである事を前提に話が進む。ここまでくると話した方がいいのか悩むな。

 彼に話していない事は二つ、見た目オリアーナの中身がチアキという別次元の人間だということと、いつか話してくれといっていたオルネッラの事故の件だ。後者はオルネッラの魂を取り戻せれば、話すこともなく証明できるし、馬車の魔法の回答も得られる。


「昨日はその時だと思って勢いで伝えたが、やはりある程度順番が必要かと思ったんだ」

「え、なに、順番?」


 話を聞き流していたら、方向がよくわからないところに来ていた。

 もう一度きけば彼は彼なりに考えていたことを話していた。

 しかも私がオルネッラであることを前提に、お付き合いをする気満々な状態でだ。


「茶会に呼んだり、近場に出掛けたり、社交界に行ったりすることだろうか。俺もその辺りは苦手で余り詳しくはないが……」

「私、断った、よね?」

「ああ、急だったしな」


 違う。

 急に告白されていい返事の余地があるなら、待ってくれって言うよ。考えさせてという素敵な言葉があるんだって。

 二の句に告げずお断りって、もう交際からお断りなんだって。急とか急じゃないとか関係ない。なにより人を間違えているのが致命的なのに。


「それでずっと一緒にいようとしてるの?」

「その方がいいと思った。関わりが持てればと」


 方向がおかしい。

 私も大概恋愛偏差値は低いけど、ディエゴもディエゴだ。好きだから一緒にいたいのは分かる。

 けど一度お断りし、オルネッラでない事を伝えたにもかかわらず、それでも今後突撃されるのはたまったものじゃない。

 私はオルネッラのことに集中したいから。そしたらそこそこきつい言葉を選んで伝えるしかないのか……仕方ない。


「いい? イケメンだから許されてるけど、やりすぎはストーカーだから!」

「すとーかー?」

「待ち伏せしたり後ろからつけてきたりすることだよ。行き過ぎた恋愛感情の末に行き過ぎた行動に出てる人の事だよ」

「ふむ」

「相手はそれをされると大変辛い思いをするし、正直犯罪ですし」

「成程」


 あんまり響いてないぞ。反省しょんぼり感がない。

 エドアルドを見習ってほしい。彼ってばすぐにしょんぼりするもの、さすがハニーフェイスだ。


「ん?」


 いや、待て。何も反省してもらう必要はない。

 ここは私個人が嫌な女であることをアピールして、そこで諦めてもらうのが一番感情のおさめどころでいいんじゃないの。それだ、面倒な女作戦だ。それにしよう。


「ディエゴはオルネッラだから、私が好きなの?」

「どういうことだ?」

「私がオルネッラじゃないって分かったらどうするの? 中身がオルネッラじゃないと好きじゃないの? 目の前にいる私は見てくれてる?」

「それは……」


 よし、言葉に詰まった。そうだ、ディエゴ冷静になれ。今ならまだ引き返せる!

 オルネッラを見つけるまで大人しくしてて、そんな時間かけないようにするから。

 そうして私はさらに畳みかけた。


「実はね」

「?」

「オルネッラが目覚めました」

「え?」

「オルネッラ、明日から学校に来ます」

「なんだって?」


 驚愕の表情とはまさにこのこと。

 よしよし、いい感じになってきた。ここで諦めてもらうには本物を見てもらう事かな。

 丁度ガラッシア家に着いたところだ、広すぎる玄関で彼を待たせて、急いでオリアーナを探すとしよう。


「ちょっと待ってて」


 オリアーナを呼んで、ディエゴ来てることを言っても、わざわざ会う必要はないでしょうとか言われた。

 クール! クールですね! でも今欲しいのはクールじゃない!


「違う! 今私を助けると思って、顔だけ見せてあげてよ」

「明日会うではありませんか」

「そうじゃないんだって、お願いします一緒に来て!」

「はあ……」


 オリアーナ(見た目オルネッラ)を連れて階下にくだれば、降りてくる想い人(見た目だけ)を見つけて、さらに驚いてみせるディエゴ。

 そうさ、君の想い人は起きたんだ、私ではないんだよ。ひとまず今はそう認識してもらおう。後々フォローはする。かならず本物のオルネッラに会わせてあげるから。


「オルネッラ……」

「ご無沙汰しております」


 オリアーナからすれば、学園を休み始めてから真面に話すのに随分日が経っていたかな。

 ありがたいことに、眠りから覚めて久しぶり感がでる言葉で非常に助かる。さすがオリアーナ、いいぞもっとやれ。


「本当に、オルネッラ、なのか?」

「明日から学園に戻りますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます」


 あ、オリアーナ面倒くさがって会話省略しようとしてる。

 ちらりとこちらを見て、何をしでかしたのかって顔までされたし。私はしでかしていない、しでかしたのは目の前のイケメンだ。


「というわけなので、明日からよろしく、ディエゴ」

「あ、ああ」

「つもる話もあると思うけど、明日ゆっくり話そう、そうしよう」

「ああ……」

「では明日、お会い出来るのを楽しみにしています」

「じゃあね、ディエゴ、よろしく!」

「あ、ああ……」


 少しだけふらついて、ゆっくりというよりは、たどたどしい足取りで馬車に乗り込み帰って行った。

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