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クールキャラなんて演じられない!  作者:
1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
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54話 エドアルド、懺悔する

 そして肝心のエドアルドの様子を見やる。

 なかなか顔色はよくなったけど、思い詰めた感はあるかな。うむ、幼馴染の関係が崩れてしまう展開って何がメジャーだったかな。

 思春期にお互いを意識して疎遠になってしまうとか?

 現年齢だと思春期通り越してるけど。


「では私たちはこれで」

「また明日」

「チアキ、本当にこれをもらってもいいのか?」

「うん、どうぞ」


 最近父親がやたらお友達に渡しなさいと量産したジャージを渡してくるから、ここではけてくれると助かる。

 ジャージはユニセックスだから汎用性高いし。てかあんなに作って明らかに職人さん泣かしてるだろう。父よ、自重しろ。


「では俺も帰ろう」

「次は休日だっけ?」

「ああ見舞用の花を持ってくる」

「こちらは花瓶を用意しとく」


 最後に残るのはエドアルドだ。

 あの三人気を使ってくれた。なんて出来る子たちなの。美人で気遣いできる子……スペック高い。


「エドアルド、どうだった?」

「うん、楽しかったよ」

「よかった!」


 可愛く笑ってもらえるなら喜んで誘いますよ。ハニーフェイスは生きとし生きるものへの癒しのために存在している、これは間違いない。


「……ねえ、少し話せる?」

「喜んで」


 ほら、走る効果てき面じゃない?

 私は喜んでオリアーナとともに馬車に乗り込んだ。こちらの屋敷の別室よりも、そこの方が話しやすいからだろう。


「オリアーナを支えて助けられるのは僕だけだって思ってたんだ」


 そうだろう、それは事実だ。

 オリアーナが孤立して七年、エドアルドだけはオリアーナの味方だった。それはオリアーナが語っているのだから間違いない。


「でも君は変わった。自分で全部解決して、今は周りにたくさんの人がいる。僕はいらないんだなって思ったんだ」

「いやそれはない」

「チアキの言う通りです」


 おお、オリアーナが参戦してきた。ということは、余程主張したいことだ。


「確かにオリアーナの周囲の状況は変化したし、前のように人が避けていくっていうのもないよ。けど、エドアルドがいなきゃ、今の今まで堪えられなかった」

「オリアーナ」

「それにエドアルドのハニーフェイスには毎回癒しをもらってる。それがないなんて辛すぎるよ」

「そっか……」


 そうなんだよ、癒しは多くあって損じゃないんだから、エドアルドはエドアルドのまま、疲れなくそのままの存在でいてくれていいんだよ。

 そして私にそのハニーフェイスを絶え間無く提供してほしい。出来ればよしよしもさせてほしい。クールキャラからは程遠いけど。


「逆だったのかな」

「何が?」

「僕がオリアーナを支えているつもりだったけど、オリアーナが僕を支えてくれてたんだ」

「ん?」


 そんなつもりはなかったけど、彼の中ではそう感じたのか。


「テゾーロもここ最近は学園で会えば傍にいてくれるんだ」

「そうなの」

「エドアルドが心配でしたので」


 おおおおおさらっとクールにすごいことを言ったぞ、オリアーナ。

 他人に目を向けられるぐらい回復したってことよりも、デレだ、デレ。

 それは間違いなくデレなんだよ!

 それエドアルドに言ったらイチコロだぞ。


「君が優しいから、飼い犬も同じように優しい子に育ったんだね」

「そうですね」


 確かに中身オリアーナだから優しくて当たり前ですね。エドアルド本当本質見抜く才能あるよな、恐ろしい子。


「僕は君に言えてないことがあるんだ」

「きいても?」

「うん」

「何を」

「僕は君が好きだった」

「ごふっ」

「オリアーナ?」

「いえ、続きを」


 うわああああまさかの告白イベント(本番)がこようとは!

 しかも過去形。エスタジ嬢のことで聞けなかったのを今ここで……今ここで堪能できようとは!

 神よ感謝します!

 私を見捨てずにいてくれて本当ありがとうございます!


「今の君はオルネッラみたく明るく堂々してる。それはとても素敵だけど、僕はその前の静かで少し内気な君が好きだったよ」

「っ!」


 どうしよう、貴方の好きなオリアーナはここにいますよ!

 そこにいるんですって!

 中身が違うだけなんですよ、いますぐ変わって入れ代わりたい。

 そしたらハッピーエンドじゃん。

 幼馴染ハッピーエンド!

 最高のエンド! なのに! なぜ! 今! 中身が私なのか!


「チアキ」


 オリアーナに名を呼ばれる。

 この子、このこと以前からきいていたんじゃ……だから話さなかったの?


「オリアーナ」

「どうしたの?」

「あ、いえ、なんでも、ないです」

「あとね、もう一つ、君に話さないといけないことがあるんだ」

「何ですか?」


 こくりと彼の喉がなった。

 顔つきも少し強張る。

 彼の憂いはここかと悟った。


「十年前、オルネッラが事故に巻き込まれたのは僕のせいなんだ」

「え?」


 伏し目がちに弱く囁くエドアルド。膝の上に重ねた手が僅かに震えている。


「あの日、オルネッラとお母様を乗せた馬車に会った。君のお姉さんは馬車をとめて変わらず明るく僕に挨拶して……毎年この道を通って長期休暇で別荘に行くのは知ってた。今年もかとわかっていたのに、僕は……」

「………」

「僕はその時だけ、ずるをしようと思ってしまったんだ。オルネッラがオリアーナを独占して、オリアーナから好かれてずるいと思って……僕は彼女達が使ういつもの道は使えないって言ってしまったんだよ。オルネッラは僕の言うことを信じて、回り道になる方へ方向を変えた。そしてあの事故が起きた」

「そう、ですか」

「少しの時間でもオルネッラとオリアーナの時間を潰してしまおうなんて僕が思ったから……」


 あの道を使ったことに、そんな事情があったとは。

 目撃した者もいなかったのだろう、だからエステル調べでもでなかった。同時、エドアルドはそのことをオリアーナに知られて嫌われ避けられるのが怖かった、そういうところだろう。

 ここ最近の私、オリアーナにひどいことしてる人懲らしめてたからな。まさかエドアルドにそんな風に影響してるとは。


「チアキ、エドアルドを責めないでください」

「ごめんね、オリアーナ。謝ったって許されることじゃないのに」

「いいえ、エドアルドは悪くない」

「チアキ……」


 目線をオリアーナに向ける。

 アイコンタクトだけでオリアーナが悟ってくれるようになったのは、やはり日々の積み重ねだと思う。


「エドアルドが違う道を伝えたとしても、彼のせいではないのです」

「エドアルドのせいじゃない」

「……オリアーナ」

「あれは、私が、私のせいなのです」

「……ああ、誰のせいでもないよ」


 オリアーナはまだ自分のせいだと思っているのか。エドアルド共々何故自分をそんなに責めるのか。


「私は……あの馬車の車輪に魔法をかけました」

「ちょ?!」


 ここにきていきなりの暴露?!

 ちょっとまって、エドアルドのことだけで精一杯だからちょっとまって。

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