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クールキャラなんて演じられない!  作者:
1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
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44話 ツンデレの告白イベント(練習) 四 前編

 別のところから話しかけられると思えば、ディエゴが馬車からおりてきた。おやおやと思っていると、今日は学園に残るか問われた。

 講義もなくエステルとトットとお別れするところでしたがと伝えると、今日もオルネッラに会ってもいいかと聞いてくる。

 数日前の休日にきて今日もか。そういえば週中行けるって言ってたな。


「いいですよ。先に行ってもらえます?」

「どういうことだ?」

「私、徒歩で来ているので馬車よりは遅いかと」

「は?」


 素っ頓狂な声を出して驚くディエゴに対し、生暖かい視線を注ぐトットとエステル。この世界の常識では、学園とガラッシア家間の距離は徒歩圏内ではない。


「あ、私が走ればいいのか」

「待て」


 何を言っているとおかしな形相でいる。いや別にそんなつもりで言ってないけど。単純に馬車のスピードと走る速さが同じぐらいなら並走出来ると思っただけで。


「チアキ、ここは彼の馬車に乗せてもらうのがいいかと」


 耳元でかわいらしい声が私を癒す。あ、なるほど、ツンデレは誘えないだけだったか。


「ディエゴ、馬車乗せてくれる?」

「あ、ああ……かまわない」

「じゃ、一緒に行こう」


 エステルとトットと別れ、ディエゴの馬車に乗り帰路につく。そういえば、エステルと自分のとこしか乗ったことなかったけど、存外馬車の内装に個性がでるものだな。


「どうした」

「いえ、内装が素敵だなと」

「そうか」


 お前は、と彼が言葉を続ける。まさか彼から話を振って来る日があろうとは。


「この距離を歩いているのか?」

「うん、健康のために」

「健康?」

「運動は大事だよ?」


 いまいち反応が悪かったから、よりよく理解はされてないよう。

 この世界、本当に運動っていう概念がないな。箒で跨って競い合うのはスポーツ認識されてるのに、走るのは駄目とかよくわからない。


「朝、見た事ない服を着て領地内を徘徊しているのも運動か」

「徘徊って……ジョギングだよ」

「?」

「一定の速度で一定の距離を走り続けること」

「そうか」


 私の言う皆の知らないこの世界以外の不思議言葉を発することに慣れてくれたようだ。

 中身を理解してスルーしてくれた。ありがたい。


 程なくして家にたどり着き、アンナさんに迎えられ、そのままオルネッラの部屋に案内した。

 相変わらず中には入れてくれないが……いつだ、いつ立ち会いの元、告白シーンを拝めるのか。


「オリアーナ?」

「お父様」


 外で待っていると父親が現れた。

 しかもランニングウェアを装備、見た目汗もかいてないから、この人夕食前に走るのか。


「これから外に?」

「ああ、時間が余ってな。折角だから走ってこようと」


 オリアーナもどうだと言ってくる。かまいはしないが、それにしてもこの人、はまりすぎだろう。と応える前に、隣の扉が開いた。


「あ、ディエゴ」

「ああ、待たせた。ガ、ガラッシア公爵!」

「おや、オリアーナ。友人が来ていたのか」

「はい。姉の見舞に」

「ああ、前も来てくれていたな」

「あ、いえ、」


 ディエゴが戸惑っている。なんだと考えてみれば、なんてことはない父親のランニングウェアな姿に驚いていたようだ。


「ディエゴ。父は今から走り行くので、専用の服装を身につけています」

「そ、そうか」

「ああ、驚くのも無理はないな。私も最初は戸惑った」

「いえ、そんなことは」

「しかし機能性は非常に良いものだ。走るには今や欠かせない」


 そうだ! と父親が大きな声を上げる。

 なんだと思ったら父親の顔は妙に明るい。生き生きしてるな。


「君も一緒に走らないか?」

「え?」

「これも何かの縁だ。私のじゃーじを貸そう。さあ来たまえ」

「え? こ、公爵」


 ディエゴが引いているぞ。ツンなんて出す間もなく、父親に連れていかれる。


「仕方ない。私達も準備しようか」

「はい」

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