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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
153/164

153話 それでも、心配ぐらいはさせてくれ

瞬間、馬車は炎を上げて爆発した。


「え」


 なに、と思ったら、私の視界は塞がれ何も見えなくなった。

 ディエゴが抱きしめてきたからだ。かばってくれたのかと思う間もなく、吹っ飛ばされる。

 魔法で爆発から防いでくれているとはいえ、勢いに飛ばされ一緒に地面に転がる。私が小屋を吹っ飛ばした威力とは比べ物にならない強さだった。明らかに敵意と殺意が見えるやり方。


「っ!」


 あの御者がやった?

 賊のメンバーとは思えなかったから、吹っ飛んだ後その辺に転がって、とっくに捕らえられてると思っていたのに。

 指定された場所に連れて行くだけの役目以外に、なんでもいいから……それこそ自分もろともでかまわない覚悟で私の命を奪う選択肢をとったというの。


「チアキ、無事か?!」

「大丈夫。ディエゴは」

「俺は問題ない」


 互いに多少土がついた程度だったのは幸いだった。

 彼の肩越しから見えた馬車は跡形もない。やらかしてくれた、あの御者。

 近くにいた警備隊や騎馬隊の数人が飛んできた破片と炎で軽傷を負った。負傷者がでるなんて。いた場所でこらえきったトットが早々に指示を出している。


「御者は」

「あの爆発では助からないだろう」


 死なばもろともってこと?

 そんなことするなんて納得できない。


「チアキ?」

「……」


 さすがにいつもの軽いノリで済まない流れになってきた。本質が悪い。ちょっとした小競り合いではおさまらないところにきている。早くにどうにかしないと。


「チアキ?」

「ん」


 私が何も言わないから心配になったのか、両頬に手を当ててディエゴの方を向かされた。見上げたディエゴはいたく心配そうに私を見下ろしている。

 珍しい表情だなと脳内シャッターをきって我に返った。今気づいた。ちょっと近すぎる。急に認識した近さに触れられてるとこの温度が上がる。


「だい、じょうぶだから」

「本当か?」

「ほんと、うに」


 だから離してと言っても中々離してくれない。挙句私の声を聴きもせず、素肌に指を這わせてくる。ちょっとまって、今は割とシリアスな場面なんだけど。ディエゴにとって、私の傷云々の確認はシリアス要因なのかもしれないけど、たぶん心底心配してくれてるんだろうけど、私の体感がそれどころじゃない、やめてって。


「ちょっと」

「本当に怪我はないな?」


 こんな時に不謹慎。本当不謹慎。

 ディエゴが触れると心地良いとか本当私だめでしょ、さっきのシリアスどこにいったの。本当これ以上やめて無理。負傷者出てるのに駄目でしょ。戻ってきて私、早く冷静にならないと。大事なところなんだから。


「ディエゴがかばってくれたから、怪我ないよ。見てわかるでしょ?」

「それでも、心配ぐらいはさせてくれ」


 うおお、早々にいくらか前の、まだその段階に至っていませんわらいに到達しちゃったんじゃないの?

 ニュアンスがもう当たりでしょ。ツンデレのテンプレは、別に心配してるわけじゃないんだからねっなんだけど。ツンデレのレベルがあがるどころか退化してるのでは? 神よ、ツンデレがいいです。


「ディエゴ、お願いだから、」


 なんでもいいから離してほしいと願う私を解放し、自分の駄目ぶりから引き戻してくれたのはトットの声だった。


「二人とも無事か?!」

「!」

「トット! 神!」

「は?」

「……」


 ディエゴの手も離される。

 やっぱり人目があると駄目なんだね。

 神だ、間違いなくトットは神でヒーローだ。そもそも吹っ飛ばされずにこらえきってる時点で強さなんなの。私もうスーパーマンを名乗らないで、その名をトットに返上した方がいい?

 そんなトットもひどく心配しているようで、そのシリアス具合から私の脳内の仕様を言葉にする事は今回押しとどめるに至った。


「怪我は?」

「ないよ。ディエゴもないって」

「そうか、よかった」


 そういえば、私の事はディエゴがきちんと確認したけど、ディエゴの傷の有無については確認していなかった。私をかばって抱きしめた上で地面を跳ねたのであれば、打ち身とか擦り傷があってもおかしくないと思うのだけど。


「本当に怪我ない?」

「ああ」

「実は骨折れてるとかないよね?」

「ない」


 変な方向に曲がってないし、表情を見る限りは大丈夫そうだけど。

 そんな私達の様子を見て、トットは無事だと判断したらしい。


「この場は隊に任せよう。早急にこの場を離れた方がいい。戻るぞ」

「うん」


 トットが騎馬隊と警備隊に指示を出しに離れていく。

 ふとディエゴの手の甲が擦り剝けているのを見つけた私はその手を取った。トットに気をとられて油断していたディエゴはびくりと身体を震わせて、勢いよくこちらを見た。


「怪我してるし」

「この程度は怪我に入らない」


 手を離され、再び問題ないと念を押される。治癒魔法はメディコに頼まないと駄目だし、救急用の道具は揃っていない。そして頑として手の甲を見せる気はないようで隠し続けている。


「私の事心配してくれるのは嬉しいけど、自分も大事にしなよ」

「……」

「返事は」

「……ああ」


 渋々感半端ないな。

 そういえば、一番大事な事を伝え忘れていたことに今更気づいた。


「ディエゴ」

「どうした」

「かばってくれて、ありがと」


 少し驚いて次に、そんなことか、とディエゴは呟く。

 少し照れてるとみた。

 そういうツンなとこは相変わらず、おいしくて最高なのだけど、やっぱり傷は気になる。もしかしたらあれだけじゃないのかもしれない。見えないところの打ち身なんかもすごそうだけど、この様子ではディエゴは教えてくれないだろう。

 ツンの意地っ張り具合が本当テンプレ。そういうとこは裏切らないなとしばし不謹慎が脳内を占めた。

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