149話 ↑ディエゴが私を守りながら言う台詞である事が望まれてる気がするけど、その段階に至ってません(笑)
「チアキ」
「わかってる」
こちらは学園の生徒が多く構成されていた。オリアーナ達から離れたところに倒れる生徒を起こせば、私の顔を見て青ざめる。おや、懐かしい反応。
「説明してもらおうかな?」
「や、それ、は」
「今回はあの日みたく逃がしてあげない。全部話しなよ」
もっとも、この生徒があの時話しかけた中にいたかは分からないのだけど。
有無を言わせない私の語調に再び小さく悲鳴を上げる。横目でオリアーナ達を見ても問題はない。
「先にボコボコにされたい?」
「え……」
「私の推し傷つけようとしたんだから覚悟はあるよね?」
「ひっ」
ま、返り討ちに遭ってるから何もする必要ないんだけど。そしてこういう台詞は私が言うのではなくて、ディエゴが私を守りながら言う台詞であることが望まれてる気がするけど、そこはスルーだ。残念、まだその段階に至ってません、わらい。すぐに回収できる話だから、今これについて言及しなくてもいいだろう。
さておき、笑顔で片方の手をグーにして目の前に示せば、明らかに怯えた様子をみせた。ああもうちょろいぞ、簡単すぎる。
「は、はなします!」
「オッケー、ありがと」
内容は前の社交界と同じ、今回はその社交界でガラッシア家が名乗り出たから、さらに不信や欺瞞が強まった形だ。
彼らの目的は、私かオリアーナを拉致すること。
直接拉致する事がかなわないなら、エステルやエスタジという関係者を拉致し、ガラッシア家をおびき出させるということも平行していたらしい。拉致以降、最終的にはガラッシア家二人の娘の殺害と家の衰退までが目標とか。
オリアーナに直接乗り込んで、私には何も来なくて、エステルには剣が向けられる。なんだか順番適当だし、計画性もないところを見ると、統制もとれてないだろうな。プランニングは入念にしないと駄目でしょ。
「関係ない人間巻き込んでまで、するべきことだと考えてるわけ」
「王太子殿下やグァリジョーネ侯爵令嬢は洗脳されてるだけだ。国の為にも、早急に洗脳をとくのも重要な目的として、今回の計画に盛り込まれている」
「それが危害を加えていいにはならないよね」
最初は話し合いに応じ、自分達についてくるなら何もしないという計画だったらしい。恐らくエステルは断ったから強硬措置に踏み切ろうとしたのだろう。
そんなほいほいオッケーですってついてく人いないだろうことも分からないの。
呆れて浅く溜息を吐くと、目の前の生徒は怯えたまま訴えた。
「お前達が全ての元凶じゃないか!」
「はいはい、いつまでたっても私は君たちにとって悪なわけね」
私に直接来なかったのは何故かな。
適当で杜撰な計画だあることも勿論なのだけど、今までの私の行動がスーパーマンだったから故にだということだろう。手に出せない強さと思われている。
そんな相手方の想像できる理由はどうでもいいが、さすがに殺害は見過ごせない。私がいくらいつでもどうぞ状態でも、私の大切な推し達が死の危険を伴うのであれば、それ相応に対処しないとまたこうしたことが起きてしまう。
いい加減終わらせよう。
「よし、わかった」
「チアキ?」
聴きなれた声に顔を上げれば、オールクリアしても平然としているオリアーナが近づいて来ていた。いいねえ、自分の力だけで相手をボコボコに出来るようになるなんて、一昔前の私ならこのまま往生してたよ。
「オリアーナ無事?」
「ええ、無事ですが、チアキまさか」
ちょうど綺麗に一掃出来た場で、オリアーナが私の考えてることを見てしまったらしい。
同時、馬車の影からディエゴが御者を捕まえてやってくる。仕事早い、というか、私がそうしてほしいことをやってきてくれるの本当助かる。エステルの時に追いかけようとしてたところから、考え至ったんだろうな。本当頭いい。
「ありがと、ディエゴ」
「ああ」
ついでに困ったように眉根を寄せる。
「嫌な予感しかしないが、念の為きく」
「うん」
「どうしたい」
「拉致られたフリして相手側に乗りこむ」
「チアキ」
「そして元凶を取り押さえる」
やっぱりかと肩を落とすディエゴだったけど、その様子ならそのまま許してくれると確信した。
けどさすがにそれには他から待ったがかかる。
エステルだ。
対応が済んだのかトットと一緒にやってきて、警備隊が順調に生徒達を回収していく。それを眺めながら、御者の人を留まらせて、行く行かない問答が始まった。
「だってこの御者さんは確実に連れていく場所を知ってるんだから、それを使わない手はないでしょ」
「今までとは程度が全然違うのよ」
「スーパーマンだから大丈夫だって」
不敬罪になるであろう、王族の婚約者を切ろうとするあたり、性質が悪くなっているのは事実。だからこそ、ここで逃がすわけにはいかないのが私の主張。当然エステルは危険が今まで以上だと分かっているから嫌だという。
平行線をたどる私とエステルの会話に、ディエゴが横槍を入れることで答えが出る形になった。
「グァリジョーネ侯爵令嬢、俺が共に行きます」
「いいよ、一人で」




