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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
143/164

143話 従妹のお嬢さんのおかげで、少し冷静になってきた

「あの! 私、お姉様にお願いがあるんです!!」

「ん? 何?」


 サインとかは出来ないけど、出来る限りお応えしますよ。というとキッラキラの瞳をして訴えた。


「一緒にじょぎんぐしたいんです!」

「あ、なんだそんなこと。いいよ、今日走ろうか」

「え」

「ふわああああああありがとうございますすううううう!!」


 おっと間にディエゴの声が入った。見ればがっつり視線があう。


「だめ?」

「いや……」

「ディエゴも走るでしょ?」

「ああ」


 明らかに不満あります風なのに何も言わずに飲み込んだな。なんとも不完全燃焼な反応だけど、まあ良しとしよう。ここまできて断るのも失礼な話だ。それに可愛い子にこんなに無条件に好かれるのはやぶさかではない。いつでもどこでも可愛いは正義。


「そしたら最新のウエアもあげるね」

「え! 良いのですか?!」

「うん、じゃいこっか」

「はいいいい!!」


 そうして私達はガラッシア家へ向かう。その道中、彼女の恋愛話を余すことなく聴くことで至高の尊さを手に入れた。やばいよ、隠れて会うとか。身分差を気にする使用人とか。最高すぎる。今度、それどこかで漫画とかアニメにするべき。二時間物の映画でもいいな。至高すぎる。

 プレゼントしたウエアに着替えて玄関前で彼女を出迎えれば、相変わらずキラッキラの瞳で黄色い声をあげる。


「ふわあああ夢のようです! お姉様と走れるなんて!」

「なによりだよ」

「……」


 従妹さんがよく喋る分、ディエゴはだんまりだ。ジョギングタイムも私と従妹さんの後を黙ってついてきている。

 オリアーナたちはジムに行ってるから、本当に三人。いやそもそも従妹さんの目的は私だから、従妹さん的に本当は二人きりで話したいのだろう。そこまでは主張しなかったけど。


「走ってたんだよね」

「はい! まだ一ヶ月ですが」

「充分だよ、続けられてるのってすごいんだよ」

「ふわあああありがとうございますううう!」

「じゃ無理なくいこか」


 安定無言のディエゴは従妹がどう言おうとついて来るんだろうな。

 てか本当視線。

 見られてる感が半端ない。

 なんだっていうの、何をしたって……うん。


「さっきのかあ」

「お姉様?」

「あ、なんでもないよ」


 従妹のお嬢さんのおかげで、少し冷静になってきた。

 あれだ、久しぶりに会えてきゃーやだーと言いながら、きゃっきゃしあう女子たちの図と同じテンションだったかな。普段ならあり得ないテンションにディエゴが訝しがるのも致し方ない。でもかといって、そこまで見続けなくてもいいと思う。


「フォーム綺麗だね」

「本当ですか!?」

「うん、いいトレーナーのとこでやってるんだね」


 キス一つ(未遂だけど)にあんなに気持ち乱されるなんて私どうしてたの。私は皆より一回り年上だぞ。いくらなんでももう少し大人の余裕があってもよかったんじゃないの。反応が完全に十代のそれだ。まさか私の魂はここにきてまた変質したというの、十代に?


「お姉様はどうしてジョギングを思いついたのですか?」

「ん? あー、そうだね」


 走りながらお話できるとは余裕があるな。基礎体力は結構あるみたい。まあ優勝したディエゴの親戚ならポテンシャルが違うのか。


「健康でいたいから、と、気持ちの切替かな」

「けんこう」


 元々オリアーナのセラピー項目に運動療法を取り入れ、かつ、私個人の運動不足感の解消が最初だっけ?

 こんなに自然に恵まれてるのに森林浴しないのもったいないし。


「やはりお姉様は他の貴族達とは違うのですわ。見えてるものも考えも!」

「私は人に恵まれてたんだよ、運もよかったしね」

「ご謙遜を! ああそういう姿も奥ゆかしく素敵ですわあ!」

「ありがと」


 ううん、もう彼女の中で私は完全な神的偶像と化してるな。神よ、好かれるのは嬉しいですが、程よくがよいのです。


「やはりお兄様にはもったいないです」

「ディエゴ?」

「はい! あ、いえお姉様と親戚になれるのは、すっっごく嬉しいし歓迎なのですが、ディ兄様よりも素敵な男性がお似合いです」


 ちらりと後の様子を見るけど、口を挟む気はないようだった。読めない無表情で、ツンデレの気配がない。ツンデレはツンデレだからいいのに。


「そう?」

「そうです! お兄様は女性への態度がなっていません。冷たくあしらうのは勿論、真逆の言葉をかけるぐらい全く素直ではないですし」


 典型的なツンデレじゃん。

 そういえば、べ、別に好きじゃないんだからねっ的な台詞は言われたことないな。告白はいつもそのままデレしかない。ツンデレ黄金比が当て嵌まってないな。


「いくらお祖母様が認めてくださっていて、お兄様も社交の最低限をこなしていても、やはりお姉様にはもったいないですわ」


 ん?

 今なんて言った、おばあちゃん認めた? 

 いやそんなことはないはずだけど、というか未だプレゼン合格ないレベルでツンツンなんだけど。


「そこまで評価してもらえて光栄だよ」

「そんな!」

「ディエゴも頑張ってるから、たまには労ってあげてね」

「お優しい! お兄様のことをそんなに庇ってくださるなんて!」


 テンションあがりきった自分を見てるようだな。癒しの過剰供給を受けたときの止められないナチュラルハイ状態。今日はいい夢見られるね、おめでとう。

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