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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
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132話 真剣白刃取りだああああ!

「ええいうるさい! この魔女め!」

「ええ……」


 曰く、私は悪の権化だという。存在がアウトらしい。

 二人の様子からして、だいぶ上辺だけの事しか一族の事を知らない。話してて噛み合わない感じもある。この二人が噂を流布した人物であることは確定だとしても、噂の大元ではなさそうだな。でもまあ学園にも王都にもはびこっているなら、一人歩きした挙句、二人の元に辿り着き、たまたま行動に出たとしても不思議ではない。これは歴史の問題も絡んでいるから。


「あ、もういいや。この話」

「は?」

「それよりもさ、話を戻そう」

「え?」


 そう問題はここだ。


「亡き者にする対象はオリアーナ? それともオルネッラ? 場合によるとか条件はどうでもいい。対象はどっち?」

「……そんなこと」

「そんなこと?」

「ひっ」


 どちらでも二人からすれば変わらないか。

 けど私からしたら大きく違う。やっと楽しく人生歩み始めたオリアーナに危害を加える気でいるなら、私は今ここで二人をボコボコにする。

 私だけなら見逃してもいい。再チャレンジ可だ。それぐらい対応に差が出ることなのに。


「魔女が…」

「いや、君達も魔法使えるんだから、魔法使いだし魔女だよね」

「今ここで始末すべきだ。軍部にまで手を出して」

「いやなにもしてない。冤罪だよ」

「うるさい!」


 ああもう! 視野狭いのはディエゴだけで充分だよ!

 お姫様を守る騎士様はあっさり私に剣を抜いてきた。軌道を読んでよけるけど、狭いバルコニーだと動きに限りがある。そして最初に私が立っていた場所は会場側の縁だ。ほぼ逃げ場はない。


「今ここで災いを止める!」

「中二っぽい台詞合うからいいけど、断じて災いじゃないから!」


 ええい、一か八かだ。

 真っ直ぐ上から振り下ろされる剣をよく見て、軌道がぶれないことを確認した。この騎士、割と直情的で素直だからフェイントないな。いける。


「真剣白刃取りだああああ!」

「な!?」

「いいからもう止まってよ!」


 思いの外うまくいった!

 私やればできる。さすがスーパーマンスキル。すごいぞ、この画をどこかに保管してほしい。誰か、あ、トットあたりにすぐさま描いてもらおう。トット早く来て、テレパシー使えないけど、今なら出来る気がする。


「チアキ?!」


 呼ばれて顔を向ければ、ディエゴに追いつかれた。おっと、まだ何もボコボコしてないのに。というか、回答もらってないんだよ。私かオリアーナ、どちらに危害が及ぶか。両者っぽいんだけれど。


「チアキ!」

「うおっと」


 抑えていた剣が動く。

 このまま斬りつけるというよりは、私の手から放したいとみた。


「させるもんですか」

「この、化け物!」

「スーパーマンと言って、よ!」


 右へ左へ揺さぶられるのに抵抗して、ぐいっと騎士と逆方向へ手を振りぬくと、小気味いい金属音がした。パッキンって感じで。


「あ」


 そう、折れた。

 白刃取りしてた私の手元から綺麗に。刀職人さんごめんなさい。精魂込めて叩いた剣をこんな簡単に折ってしまって。あ、叩くのは日本刀だけか、西洋剣は製造方法違ったわ。

 そんな事考えて一瞬手が緩んでしまったのが命取りだったのか、私は盛大にやらかした。


「げ」


 するりと私の手を離れて飛んでいく剣の欠片。この軌道はよくない。だって私は会場側の縁にいたわけで。


「うっそ」


 折れた剣は綺麗に落ちていった。


「ちょっと」


 急いで身体を反転させて階下を覗くと丁度下は御馳走の並ぶテーブルのど真ん中だった。飾ってる果物に綺麗に刺さる。一瞬間があって次に女性陣の悲鳴が響き渡った。

 やっぱりばれるか。結構折れた部分長かったしな。


「チアキ!」

「お、ディエゴありがとう」


 振り向き直せば、騎士さまを捕らえたディエゴが、焦りと呆れが見える様子でこちらを見ていた。なんだ、私がボコボコにする素敵なシーンはなしか。まあ剣を抜かれたぐらいだから、やり返す事が極端に少ないけど。


「一人で動くなと」

「ごめんね」


 ざわつく階下に加えて、重量のある足音がこちらに向かってきた。もちろん、本日大量に導入された警備隊と騎馬部隊の面々だ。


「何事ですか?」

「とんでも事だよ」


 折れた剣がなあ。真剣白刃取りまでは格好良くいってたんだけどね!


「この騎士がガラッシア公爵令嬢に無体を」

「違う! 私は反逆者を罰しようと」

「だからいつ私が反逆者になったの?」

「あ、貴方は王家を転覆させ国を滅ぼすのでしょう?」

「御令嬢、妄想もそこまでいくと小説一本書けますね。だから私がいつそんなこと言ったというのか」


 話の通じない二人をどうしようか、説明面倒なあと思ったところに、警備隊たちが道を開けた。当然やって来たのは司令、そしてエステルとトットだ。ヒーローヒロインは遅れて登場するってやつかな。にしても背景警備隊・騎馬部隊とか映えるわ。脳内シャッタータイムです。


「成程、今日の囁かれている噂は君達が原因か」

「……真実を話しただけだ」

「それが真実かはこちらで確かめるとしよう」


 司令が指示を出して二人が拘束され、連れていかれる。ううむ、なんとも消化不良だな。ここは推理もの王道の過去語りシーンがあってもよかったのに。

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