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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
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120話 和服イベント 後編

「チアキのそれは東の国の座り方か?」

「そうそう。正座というのだよ」

「では俺も」

「ディエゴやめときなよ。痺れるよ」


 そりゃこの中庭にわざわざシートを敷いて、簡易的な茶室もどきを作って衣装まで用意してるなら、当然所作もそれらしい方がおいしい。けど、正座初めてはたぶん痺れる。とは思ったけど、実際正座されたら止めるようには言えなかった。


「まあ折角正座したなら飲んでみなよ」

「飲み方はあるのか」

「ふふ、よくわかってるじゃない。これをまずこう持って」

「ふむ」


 持ち方、飲み方を伝授。

 元々姿勢がいいところに綺麗に正座されると衣装も相まってお手本のような図。見た目が見た目だから実に映える。シャッターだ、脳内シャッターをきるしかない。


「苦いな」

「そう?」


 なんともない顔して言われると苦くなさそうだけど。今度は若い女子が好きな甘めシェイクでも作るか。あ、あのカフェに置いてもらえるようきいてみるのも手だな。


「ディエゴ、そろそろ足崩した方がいいよ」

「ふむ」

「どう?」

「確かに違和感はあるが、動けない程ではないな」

「どれ」


 ひょいと足を触ると、ディエゴは肩を揺らして驚いた。


「痺れてる?」

「いや、問題ない、から、手は」

「本当に?」


 すすっと足先から触る指先をあげていく。なかなかの触り心地。


「これ以上は止めろ」


 耳を赤くしたあたり、足を触ったこと自体が駄目だったとみた。足袋から上は生足で、そこもばっちり触ったし、これ以上は年齢指定入りそうだから言われた通り止めておこう。

 まったくディエゴってば、どこの貞淑なご令嬢だよってレベル。抱き着いてくる割に以下略だ。

にしても足の痺れが致命的になる前でよかった。あ、でも痺れにもんぞりうつ姿は見たかったかもしれない。お約束なやつ。おしいことをした。


「チアキ、私にもそちらを」

「もれなく全員分作るから大丈夫だよ」


 可愛いねえ。

 こういう何もない日にただ癒しの供給だけをするっていうのをずっとしたかったんだよ。


「ああ、いいわあ」


 抹茶を提供して、見目麗しい美男美女を眺めながら、敷布の上でごろごろして供給を噛みしめた。もれなく全員から生暖かい視線を貰ったが、そんなもの関係ない。視線がどうあれ、皆が存在してるだけで、私には尊い癒しだ。

 ごろごろを止めて、そのまま網膜に焼き付けつつ、まったりする。ああ時間贅沢に使ってるなあ。


「やっと落ち着けた気がする。ずっとゆっくりしたいわ……」

「またすぐに御祖母様にぷれぜんするだろう」

「それ言わないでよ」


 前のも駄目だし多かったな。次は経済学と魔法史からのアプローチでいく。

 回数を重ねる度に態度は少しずつ軟化してる気がするけど、その分プレゼンに対する駄目出しが増えた。ディエゴのおばあちゃん無駄に物知りで困る。というか私が調べ上げた事を知ってるなら、魔法使いの祖一族が有害でないことも十二分に理解してるんじゃない。何をそんなにツンしちゃってるの。


「さすがチアキね」

「なに、エステル」

「ソラーレ侯爵の大奥様に気に入られるなんて」

「ん? まあ門前払いはされてないけど」

「ネウトラーレ侯爵夫人から伺っているわ。勉強熱心な人物だと褒めていたそうよ」

「ツンデレェ」


 私の前でデレを見せないで違うとこで見せてるとは。なんだそれ私の前でデレ見せるとかなったらすごいんじゃないの。見たい。

 しかし私がおばあちゃんに成し得たいのは魔法使いの祖に対する偏見の払拭だ。そこに効果でてるのか疑問なんだけど。ネウトラーレ侯爵夫人もなにを話したかわからないけど、私とディエゴの関係についてフォローしたようだし。本当もう違う、そこじゃない、だ。


「ああそうだ」

「どうしたの、トット」

「衣装で思い出したが、チアキが提案したはくいとすくらぶは採用されたぞ」

「お、ありがとう」


 こちらもやっとだ。

 白衣とスクラブの開発とメディコ側へのアプローチで、医療方面や薬開発関係で全面的に使用してもらえる運びになった。

 ここにきてやっとクラーレに話をまともにできたわけで、本当だいぶ遅れて申し訳なかった。軽くオリアーナが話していたようだったけど、晴れてオルネッラがオリアーナの身体に入ってます的な話は初めて出来たわけで。

 それは父親も同様だ。オリアーナとオルネッラの中身逆なんですって話をしたら、あの父親気絶してしまったから慌てたものよ。目を覚ませばどっちも生きてるからよしーとかなんとか。挙げ句両方無事なら身体逆でもなんでもいいっていうのが、父親の考えのようだった。敢えてオルネッラの魂がチアキという別人物へ変質したことは話さない。気絶だけで済まなそうだし、なによりややこしい。

にしたって、つくづくこの世界の人たちは許容力あるよね。あっさり受け入れてる感。


「けれど次の祝日はイベントだから、さらに次の祝日にプレゼンするのかしら?」

「え、イベント?」


 待ってなにそれ、きいてない。

 するとオリアーナが淡々と説明してくれた。


「大規模なジョギング大会を行います」

「なにそれ知らない」

「今言いましたので」

「おおい」


 申し訳なさそうにして小首を傾けてこちらを見おって。

 わざとだな、たぶん私がそういうのに弱いって分かってる。まあ普通にしてても弱いんだけど。


「ええい許す!」

「有難う御座います」

「甘いな……」

「ディエゴ黙ってて無理だから」

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