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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
112/164

112話 魔法使いの祖

 翌日。

 何事もなかったかのように通常運行で登る我々。ディエゴもペースやコツを掴んだのか、昨日より慣れた感じが出ている。爽やかな汗をかきながら水を飲むイベントが今日もありますように。

 相変わらず登山もの真っ青なハードモードだけど、これを事細かく語っていたら日が暮れるから、ここは仕方ないので割愛しよう。そう、話は目的の場所に着くあたりからで。


「着いた?」

「ええ、ここが貴方の母方の一族がいた場所よ」


 跡地だ。兵どもが夢の後状態だ。

 こんな早くに衰退するもの? 空き家がかろうじて一、二軒ある程度とは。


「誰もいない」

「廃村になっていたのか」

「まあきいてたけどね」


 夫人はここに人がいた頃も知っていた。オリアーナの母の母、祖母にあたる人がこの集落を出る頃には廃村への道の片鱗があったようだった。


「私が間に入った数に加えて、解体して山に深く入って行った者もいたわ」

「ここを解体する理由あります?」

「それは一族の問題だから、私が話すことではないわね」

「ふむ」


 生き残りと話が出来ればと思っていたけど、王都に入った一族の人達を頼るしかないのか。でもそこに接触して社交界の噂になれば、当人達が生きづらくなる可能性もあるから慎重にやらないといけないし。


「あれ、珍しい」

「ん?」


 声のする方に顔を向ければ、見た目十代前半のかわいらしい娘さんがいた。

 途端、ディエゴが私の前に立って、夫人の周りも従者さんが囲む。娘さん一人に対して警戒心強すぎない?

 あんな可愛い子目の前にして警戒するとかなんなの。可愛いは正義だ、なにも心配する事はないのに。


「この村はもう人いないですよ?」

「え、この村のこと知ってるんですか?」

「ええ、皆散り散りになっちゃって。最後まで残ってたおばあちゃんも最近身体悪くしたから、うちで療養してますけど」

「きた」


 曰く、彼女はここから少し登った所で父親と木こり業をしているらしい。どうりでたくさん木を背負ってるわけね。しかも彼女の発言は確かにここの生き残りがいることを示した。


「そのおばあちゃんとやらに会いたくて来ました」

「おばあちゃんに? ご家族の方ですか?」

「遠い親戚みたいなものです。ぜひお話を!」

「んー、わかりました。付いてきてください」

「イエス!」


 道中ディエゴは危険じゃないかと言っていたけど、夫人はなにも言わなかったから問題ないだろう。というか選択肢これしかない。なにもせず帰るは選択肢にないから。


「あれ、おばあちゃん」

「おや?」


 木こりの娘さんが小走りに向かった先は小さな家、その前に小さな老婆が杖を付いて立っていた。


「外出て大丈夫なの? 歩けるの?」


 その言葉からどうやら療養というのは寝込んでいたことがわかる。たぶん歩くのも難しいレベルとみた。


「私はそこの娘に用がある。お前は父親の所へいきなさい」

「おばあちゃん……」

「心配無用だよ」


 渋々といった具合に娘さんは席を立った。夫人が素早く椅子を用意しておばあちゃんと呼ばれる魔法使いの祖に座る場所を提供した。さすが。


「ふん、王都へ下ったひよっこが何の用だい」

「今回は私ではないのですよ」

「お前のとこの一族も落ちたものだ」

「ええ、承知しておりますよ」


 慣れたように受け流してることに加え、ネウトラーレ侯爵夫人自身が少数民族であることが分かった。間に入って手引きをボランティアでしてるなら、そういった事情もあるだろう。魔法使いの祖ではなさそうだけど。夫人に目線をもらい、おばあちゃんと呼ばれる人の前に出る。


「はじめまして」

「ふん、ガラッシア家の人間が何の用だい」

「え、私のこと知ってます?」

「見えていたさ」


 予知の類か。

 母は自分の死ぬ瞬間しか見えなかったけど、この人は今日私が来ることすら見えていた。それに加え、私がどういう人間かも。


「中身が変質しても戻って来るとはしぶといものだ。さっさと死んでいればよかったものを」


 私がオルネッラであり、チアキであることまで知っている。これが魔法使いの祖という一族。やだ、なにこれ、滾る。


「チアキ」

「!」


 ディエゴに窘められた。だってここまで万能チートキャラいたらテンションあがるでしょ?

 オルネッラがいたら同意してくれるはずだよ。相手は千里眼持ちなんだから。


「ええと、では私が話を貴方にききたいってことも知ってます?」

「ああ、かつてのお前が死んだ事かい?」

「はい。何故、転移までしたのかも合わせて」

「はっ、簡単なことじゃないか」


 笑われた。

 いやなんでも見えるチートとちょっとパワーがあるスーパーマンを比べられても困る。


「あちらの世界のゲームというもので、この世界が認識されていたではないか」

「そうですけど、それはオルネッラが来た後のことです」

「お前は学がないな」

「チートからすれば皆、学はないですよ」

「ふん。いいかい、一度認識されれば、次元は大小問わず繋がってしまう。そこに時間軸は関係ないのさ」


 過去も未来も関係ない。私含めオタクたちが件の乙女ゲームをプレイして、この世界のことを知った時点でオルネッラが飛ばされる過去ですら次元が繋がったと?

 それはありとあらゆる二次元と繋がっていることになる。え、なにそれ、あの週刊連載の世界とか、あのワンクールのアニメとも繋がってるの。全部行きたい。

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