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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
109/164

109話 私の推しが! 今日も! 可愛いです!

 だからあんなにクールにしつつも頑張っていたの。ディエゴとダンスさせてみたり、二人になるようにしたり……今思えば思い当たるところばっかりだ。

 小さい頃も天使だったけど、今でも天使だよオリアーナ。可愛すぎがすぎて天を突き抜ける勢い。誰か私に叫ばして。遠くの山でもいいから。私の推しが! 今日も! 可愛いです!


「そっか、天使は大きくなっても天使か」

「チアキ、顔が」

「おっと」

「……貴方は本当に変わらないのですね」

「あはは」


 さっきまでの悲壮感はどこへやら、オリアーナは呆れたように私を見上げている。美人の上目遣いってこんなにも破壊力があったのか、これは脳内保管だ。シャッターチャンスだ。永久保存だ。


「チアキ」

「許して、我慢できない」

「……」

「……」


 ふっとオリアーナが笑った。


「許します。それがチアキですから」

「おおおおオリアーナ!」

「ですが、落ち着いては下さい」

「……はい」


 しょんぼりだよ。許すって私が顔を緩んでてもいいじゃないってことかと。全てを許して自由にしてくれるエステルゾーンへ足を踏み入れてくれたのかを思ったのに。


「そうだよね、それでこそオリアーナだよ」

「はい」


 まあ空気も和んだし、約束をそろそろ果たすとしよう。


「オリアーナ」

「はい」

「オルネッラの言葉伝えとくね」

「はい」

「幸せになってねって」

「…………はい」


 ちょっと涙が滲んで、そのまま再び私の腰に顔を埋めた。恥ずかしがったのかな、それも可愛いですね。

 けどこの言葉は完全にオルネッラとの別れも意味する。私がかけていた僅かな希望であるオルネッラの甦りは潰えた。私が代替になるのだけど、姉妹と言うよりは友人だ。いくらオリアーナが私の事が好きで大事にしてくれても、かつての姉妹の関係にはなれない。けど、それもまたいい一つの結果だろう。


「エドアルドはどこまで知ってる?」


 オリアーナをそのままよしよししつつも話を振ってみる。恐らくここで一番話を知らないのは彼だろうから。


「僕はオリアーナや王太子殿下から話を聴いているから大丈夫だよ」

「そっか。あの事故の日の事も?」

「うん」


 説明しなくて済むの楽なので助かる。

 オリアーナをよろしくと言えば、任せてって返ってくるあたり頼もしくなったものだ。

 そもそもいつもの道であろうとなかろうと、ガラッシア家の誰かは死ぬ日だった。だから、誰がどう言おうと変わらない。それもどうなのかというところだけど、オルネッラが数え切れないほど繰り返した逆行の末の一つの可能性がこのルートだ。

 私自身であるオルネッラが頑張ったことなのだから、それを尊重してトゥルーエンドを迎えようじゃないか。そのためにもう一つやっておこう。


「じゃ、次のステージに行こうかな」

「え?」


 これで終わりじゃないのと言わんばかりの面々に私は少し得意になった。皆の衆、解決してない事があるじゃないか。


「私が次元と次元の仲介人で、今回の事故の黒幕であるオルネッラだったとしてだ」

「ええ」

「オルネッラが飛ばされる理由はどこにもないよね」

「それは、そうなのだけど」


 別に次元を超える必要がなかった。

 他国にでも飛ばされる方が納得のいく距離だろう。それが成されなかったのは何か。


「手っ取り早く直接乗り込むことにする」

「どういうことだ?」


 どうでもいいけど、そろそろ離してくれてもいいんじゃないかな、ディエゴよ。

 間近で囁かれるのは、なかなかいい具合にシリアスがさようならだ。


「魔法使いの祖に会いに行く」

「は?」

「ディエゴいい加減離れてよ。後、耳元で喋らないで」


 母方の血筋の故郷、山間部の少数民族とやらに会うのも一興じゃないか。


「……やっぱり」

「エステル」


 私の言う事を分かってたの。相変わらず以心伝心すぎて好き。もちろんエステルも私のこと好きだけど。


「チアキ、これを」

「ん?」


 渡されたのは手紙だ。差出人の名前が意外で軽く驚く。


「ネウトラーレ侯爵夫人?」

「チアキが行くと言うなら渡しなさいと言われたものよ」

「へえ」


 颯爽と中身を空けて読めば、私の意図してなかった話の提案だ。

 彼女は、魔法使いの祖に会いに行くのなら、同伴すると言ってきた。挙句、仲介までするとも。ここまでよくしてくれる理由は何ってレベルで好意的。

 確かにオルネッラの事をエステルトットに任せていた時に、オルネッラがオリアーナを留まらせるために臨時講義をいれるというその許可を出す人物がネウトラーレ侯爵夫人だった。彼女の許可の元、臨時講義が入った。オルネッラの記憶、直接申し出に伺った際に確かにあっさり了承してきたとは思っていたけど、この手紙の様子からするに、エステルとトット同様真相に辿り着いてる系と見た。

 そして私がしようとしてる事が筒抜けとな。


「俺も行こう」

「ディエゴ、覗き見よくない」

「もう君一人に行動させない」

「きいてる?」


 こじらせ系ツンデレの地雷を踏んだからか、今度はひっつき虫スキルまで習得しました。挙句話もきかないとかどんだけ設定盛るのよ、まったく。

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