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クールキャラなんて演じられない!  作者:
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
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107話 起きたらおこなエステル、抱き着くディエゴ

「チアキ?」


 チアキで間違いないか? と眼光強めの整った顔が覗きこんでくる。

 左手の温かさに目線をずらせば、彼が握っているのが分かった。ああ、そういうことだったの。はっきり言ってくれてよかったのに、オルネッラってば。


「……わあイケメェン」

「……」

「……」

「ごめんて、チアキで間違いないです」

「……ああ、もう君ってやつは」


 半分起き上がったところを抱き着かれた。

 震えているのがわかって、ああ大人びてるけどやっぱり耐えがたいことだったのかと、頭をぽんぽんしてしまう。さすがに死ぬかもしれない人間の立ち会いなんて精神力がもたないか。


「ありがと、きつかったね」

「二度と御免だ」

「もうしないって」


 と、視線を感じて顔をあげれば、おっとどっこい面子が揃い踏みだった。


「あれ、時間すぎてた?」

「いいえ、予定時間の十分前よ」

「わお、皆真面目」


 エステル、トット、オリアーナ、エドアルド。

 約束した四人がベッドの向こうで立っている。椅子を用意してるのに、わざわざ立っているとな。というか、エステル怖いぞ、不穏な空気だよ。

 とりあえず予想つく数秒後の未来の為に、ディエゴを一時的に離した。


「エステル」

「チアキ、私結構怒っているのよ?」

「大変申し訳ございません」


 ベッドの上で土下座した。これで間違いない。

 たぶん説明するまでもなく、エステルは回答に辿りついている。そして私がやったことも筒抜けのはずだ。


「あ、報告があるよ」


 気を取り直してとばかりに明るく振ってみるけど、エステルのご機嫌はそこまでよくなっていなかった。隣のトットが優しく頭を撫でている。なんだそれ、いいぞもっとやれ。


「チアキ……」

「ごめんごめん。うん、お説教ちゃんときくよ」


 はあと溜息吐きつつ肩を落とすエステルも可愛いですね。でも今回ばかりはさすがにやりすぎたと自覚している。

 エステルに限らずオリアーナも深刻で悲壮感半端ない。隣のエドアルドがおろおろしているし、ディエゴも震えてたし、今回ばかりは本当無神経だった、ごめんなさい。


「いいわ、チアキ。貴方の報告からききましょう」

「ありがと」


 予想の通りかと思いますが。


「私、オルネッラだったわ」

「ええ」


 静まりかえる室内。

 驚愕というよりも今更ですか感があるけど、どうしてよ。正直、この話どこにも振った事ないはずなのに、どうして。


「え、なにこの周知の事実感」

「チアキは鈍いな」

「トット?!」


 彼を皮切りに皆からコメントが連なる。


「チアキが姉に似ていると感じてからは、私はずっとオルネッラはチアキなのではと考えていました」

「おっふ」

「確証がなかったので敢えて伝えはしませんでした。ここ最近はオルネッラでないと知り得ない過去の話まで持ち出していましたし」

「あ、そうね、そんなこともあったわ最近」


 思えばオルネッラの記憶が見えるのって随分前から会ったな。馬車が落ちるシーンを思い出した時点で気づいてもよかった。


「うん、僕もなんとなくそう思ってたよ?」

「ハニーフェイスまで……」

「君は馬鹿だ」

「いきなり悪口止めてよ」


 最後のディエゴの台詞がひどい。同時にまたしても抱き着かれる。

 あ、今気づいたけど、彼にとって好きな人死ぬの二回目だわ。私は未遂だけどトラウマだった、いけないいけない。


「こんなことしなくてもよかったんだ」

「私が知りたかったから、やっただけだよ」

「知っている」

「ありがとう」


 その上で好き勝手やらしてくれたのだから、ありがたい話だ。


「私達、心配したのよ?」


 チアキが無茶するから、とエステル。思えば、チアキとしての別れもエステルにとっては突然だった。いきなり約束の時間に現れずバックレられたのだから。

 いつのものことなら急な残業がと言い訳はあるけど、あれは死んでたわけで、後からはそのことを知ってもきついものがあるだろう。死んで連絡取れない友人が急に自分の目の前に身体違う状態で現れましたって、なかなかシュール。


「チアキ、私ね」

「うん」

「貴方がこの世界に来てから……正確に言うなら、貴方と話が出来るようになってから、ずっとチアキのことを調べていたの」

「え?」


 そんなこときいてない。そんな素振りだってなかったのに。次にトットが話を続けた。


「チアキには話していないが、初めてチアキと話した日、ステラは習いたての魔法を使ったんだ」


 それはまだパソコン越しに話をしてた時に軽く聞いた気がする。

 自国以外を見るために遠隔で自分がいない場所を鳥等の視点を借りて見る魔法で、見る媒体をうつるものにすればなんでもいい。確かエステルは手鏡から見ようとしていたっけかな。これがヒーローヒロインスキル故に次元を飛び越え、私のパソコンに繋がったと思っていた。


「あの程度の魔法で、世界の違うチアキに繋がるはずがない。だから今までずっと調べていた」

「それでオルネッラに繋がる?」

「チアキはオリアーナの身体に入って、この世界に来たから、そこからは調べやすかったのよ」


 私がオルネッラの魂が変質した姿だった為に、現代日本と乙女ゲームの世界が繋がりやすかったと。

 私はいわば仲介人。私が現代日本にいる限り、私を通してこちらの世界と細くではあるけれど繋がっている事になる。

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