表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

冒険者登録

「よし、今日はよろしくな。ルプス」


「任せてよマスター。でも町ではおとなしくしてなきゃなんだよね?」


「そうだな。昨日の俺みたいに魔力だだ漏れにするなよ」


「マスターだけだよ。普通そんな魔力なんてないんだから」


 ルプスと一緒に外に出てやっと森を抜けた。森を出るだけならもっと早く出られたはずなんだけどな。おかげで随分と普通の人に会っていない。期待に胸を膨らませながらルプスに跨る。思えばこの子らも大きくなったものだ。とはいえ普段はこんなに大きくないが。


 街道を進み町の門が近づいた頃に降りてルプスにも普通の大きさになってもらう。横を抜いていく馬車に乗っていた人が驚いた顔で見ていた。このくらいでも珍しいんだな。魔物使い的な存在はいるってツクミは言ってたんだが…。


 門でハッと気づいたが身分証明出来るものがない。こんな狼を連れて身分証なしで入れてくれるだろうか。


「すまんが身分証がないんだ。どうすれば発行できる?ちなみに金もない。売れそうなものならあるが」


 わからん時は聞く。今までもツクミに聞いてたし抵抗はない。優しげな門番に声をかける。


「ああ、報告にあった狼乗りか。乗れる大きさに見えないがホラだったのか?身分証なら冒険者ギルドでものを売って登録してもらうんだな。登録できるまで俺が付いていこう。その前にこれに触れてくれるか?」


 差し出された板に触れると青く光った。


「これを使うのは初めてか?随分田舎から来たんだな。これは犯罪歴の有無と大凡のレベルが分かるんだ。青ならレベル20以下だね。あんまりレベルが高いと何かあった時に俺一人じゃ取り押さえられないからな」


「そんなものがあるなら身分証なんていらない気もするな」


「はは、まぁ決まりなんだ。それより荷物は?売れるものがあると言っていたが」


「ああ。空間魔法が使えるんでね。その中だ」


 空間魔法はスマホの空間を作っていく際に感覚で覚えた。独学で覚えた数少ない魔法だ。


「レベルは高くないのにすごいんだな。いい師匠に出会ったのか。ああ、準備はいい。行こうか」


 町並みを見ながら歩くがすぐに着いた。どうやら冒険者は外に出ることが多いため門の近くにあるらしい。門番の男と中に入り真っ直ぐに受付へ行く。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。ザックスさんと一緒ということは登録ですね?新規登録でしたら銀貨1枚になります」


「あぁ、彼は金もないらしくてな物を売って登録料にしたいらしい」


「そうだったんですね。では先に物を見せてもらいましょう。魔石ですか?」


 頷きながら思い出した。そういえば蜘蛛の魔石とってねぇ!ゴブリンのがいくつかしかねーや。蜘蛛の糸が高く売れればいいんだが…。


「魔石はゴブリンのものがこれだけだ。あとはこの繭玉も買い取ってほしいんだが…」


「これはフォレストスパイダーの糸!?すいません、買取受付の方に来てもらえますか?鑑定してもらいますので」


「悪いな、ザックスさん。ちょっと時間食うみたいだ」


「それくらい構わないさ。しかしいい腕なんだな。その狼のおかげか?」


 ザックスの言葉を流しながら受付嬢についていく。長く広い机の方に買取受付の札が見えた。


「おう、聞こえてたぜ。フォレストスパイダーの糸、それも繭玉だってな。どれ、この品質は…お前さん、これマザースパイダーの糸じゃねぇか!」


「ああ、売れるか?銀貨1枚にはなってほしいんだが…」


「それどころじゃねぇ、10倍だ。大銀貨1枚だ!」


「おお、そりゃよかった。じゃあこれも頼むよ」


 残りの9個も机に置いた。


「どうやったらこんなに手に入るんだ?まあいい。これが買取札だ。これ持って受付で精算してくれ」


「無事に登録料は手に入るみたいね。さあ、早く登録してしまいましょう」


 札を受け取り受付へ戻る。しかしこの受付嬢は暇なのだろうか。


「まずはこの用紙に書けるところを書いてもらいます。わからないところや隠したいところは書かなくても構いません。代筆は必要ですか?」


「必要ない。でも全部埋めなくてもいいんだ?」


「ええ、覚えてない人や隠し玉にする人もいらっしゃいますから」


 納得したところで用紙に目を通す。この半年は文字を覚えるのに使ったと言っても過言ではないのだ。名前はリョージ・ミヤ、年齢24、種族は…書かなくていいな。変われるし。レベルは18、特技は…何を書くもんなんだ?わからん。空白、と。


「リョージさんですね。もっと若く見えました…。あとはこの札に触れていただけば登録できます」


 門で使った物と同じかと思ったが今度は白く光った。


「門の物と違ってこっちは犯罪歴専門なんですよ。でも白は珍しいですね。軽犯罪もなしです!」


 まぁこっち来てほとんど何もしてないし当然か。前の世界では軽犯罪くらいは犯していたがこっちではカウントされないようだ。


「こちらがギルドカードになります。魔力を通すか血判を押すと本人にしか使えなくなります。失くしたりして再発行になると小金貨1枚かかりますのでご注意ください」


「よし、身分証はできたな。俺は門に戻るよ。ああ、それと。ようこそ、ソレントの町へ」


 テンプレの挨拶をしてザックスは去って行った。


「あとはギルドの説明に入りますね。冒険者ギルドは依頼の仲介・素材の買取を行っています。依頼にはランクがあり、SからFまであります。冒険者ランクも同様ですがこちらはSSまであります。冒険者ランクはギルドからの信用に応じて上がります。例えば以来履歴などですね。それと依頼は冒険者ランクの上下一つ分から選べます。ただあまり上のランクを受けるのはおすすめ出来ません。功績や依頼料目的で欲張った人の事故が絶えませんから。…こんなところですかね。わからないことがあれば聞きに来てください」


「ありがとう。ところでおすすめの宿はある?安いところでいいんだけど」


「リョージさんなら少しいいところも泊まれると思いますが…安いところなら、まんぷく亭ですかね。食事も量が多いのでおすすめですよ」


「うん、いいね。そこにいってみるよ」


「それとこれが買取金です。登録料を引いて大銀貨9枚と銀貨9枚です」


 金を受け取り受付を去る。宿に行く前にどんな依頼があるか見ておくか。受けられるのはEかF、と。常設依頼でゴブリンあるじゃん。あ、でも5匹からか。残念、一匹足りない。…うぇ!?あの蜘蛛たちDランクかよ。やっぱり魔石とっときゃよかったなぁ。にしてもあの森の依頼多いな。近いから当然か。でもマザースパイダーの討伐は無し、と。なんでだろう。


 一通り見た頃にギルドを出る。とりあえず宿をとろう。異空間に繋げるのも個室じゃないとな。教えてもらった通りに来たがぼろっちぃな。安いところって言ったし当然か。


「いらっしゃい。一泊大銅貨3枚、朝夕の飯付きで大銅貨5枚だよ」


「今日だけ飯有で30日頼む。食いたくなったら別払いで食ってもいいか?」


「一食大銅貨二枚とるけどな?それでもいいなら構わないぞ。小銀貨9枚と大銅貨2枚だな。あと狼の飯はわからん。自前で用意してくれ」


 銀貨を1枚出して会計を済ませる。おつりはルプスの分として渡しておいた。部屋に入ると寝るだけといった部屋だった。床はルプスが寝転がったらいっぱいになるくらいだ。


「まぁ、寝るときは異空間に入るつもりだしいいか。俺は町の散策に出るけどルプスはどうする?」


「今日は私の番だよ。着いていくに決まってるじゃない」


 宿を出て町を一周することにした。スマホの機能で歩けばマップが出来る。中身はわからなくても有用だろう。何かあればツクミがメモしてくれるだろうし。


(全部任せないで自分でも覚えようとしてね?マスター)


 へいへいっと。外周は一周したな。ザックスに手を振り入ってきた門を通り過ぎる。が、夕暮れになってきたし今日は戻るか。


「親父、飯出来てるかい?」


「ああ、酒場の方に行っててくれ。持ってくからよ」


 空いてる席に座りルプスにジャーキーをやりながら待つ。なんだかんだこいつらこれが一番好きなんだよな。待ってると恰幅の良いおばちゃんが来た。


「あいよ、おまちどうさん!あんたが今日から泊まるお客さんだね?随分チップをくれたらしいじゃないか。サービスのエールだよっ!」


 出てきたのは大きい黒パンと大量の肉炒め、大ぶりの腸詰だ。これはたしかに安くて冒険者に好まれるだろう。


「おばちゃん、この肉なに使ってんの?」


「今日は一角ウサギだね。腸詰はファングボアだ、兄ちゃん運がいいよ!」


「なるほどね。ちなみにここは持ち込みは平気?」


「構わないよ、好きにやっとくれ。すでに狼に干し肉食わせてるしね!」


 豪快に笑いながら去るおばちゃん。カッコイイなぁ。


「さてと、初の異世界飯だ。旨いといいけど」


 まずはウサギ肉だ。うん、いけるやん。肉と塩の味だけだけど十分。そんでエールを…うん。やっぱり冷えてないし炭酸が弱い。こっちはいまいちだ。さて、異世界名物黒パンは、かったいなぁ。吸血鬼の歯じゃなかったら噛み切れないだろ。スープもないし。あ、この肉汁か。だから大盛りなのな。なるほど、これはいける。最後に腸詰は…んまーーーい!小籠包より肉汁多いんじゃね!?うまっ!これはビールだわ。エールじゃなくてビール。ウサギ肉をエールで流し飲み終わってから取り出したるは日本の瓶ビール!腸詰を齧って、そのあとに冷えたビール…!最高だ!


「あー、これだけで来た甲斐あるなぁ…。あ、おばちゃん。ここタバコ平気?」


「あんた旨そうに食うねえ。葉巻かい?構わないさ。にしてもあんた金あるんだねぇ」


「これね、元手かかってないから。金持ちじゃないよ。ただの新人冒険者だ」


「その年で新人かい。珍しいねぇ。ま、あんまり聞かないさ。それよりこれからもツマミだけでも頼んでくれると嬉しいね」


「それはあるかもなぁ。稼いで来たらまた腸詰頼むよ。気に入った」


 タバコに火を点けてから手をヒラヒラさせて会話終了。うーん。いい一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ