五章
夜な夜な天文館を歩きまわっている男 城戸敏一。
常に追いかけているのは女性の尻とあぶく銭の算段。
「オヤッ」
目の止めたのは最近になって見かける40過ぎの男。
背広で身を包んでいるが、どことなくヨレヨレしたズボンに上着。頭はかなり禿げあがり茶色の頭皮がむき出しになっている。
この男に興味を覚えた城戸は、天文館に姿を現す日は尾行を始めた。
毎晩のように現れるわりには、飲食店名地に頻繁に通う様子もなく、少し薄暗い路地を徘徊しているように見受けられるだけだった。
そして、この男が活動を始める時間帯は、飲食店が閉店を迎えようとし、客足も途絶えがちになる深夜の2時過ぎだった。
飲食店から出て来た千鳥足の男性に近づき2~3回声を掛けている。
実に不思議な行動を見せる男だった。
城戸も毎晩のように尾行を続けて分かったことが有った。
「あっ!?」
やや内股かげんに歩く男。
一般に言われている男色を好む男に見えたのだった。
城戸も若い頃、大阪の新天地で女性だと思って買ったオンナが男だったこともある。
それでも、男に興味を覚えることが無かった城戸は、お金の為と思い、この男色好みの男に声を掛けたのだった。
「もしもし・・・」
声をかければ、アルコールの臭いが口から漂ってくる。城戸が知らないところで呑んでいたのだ。
話がまとまり、大門のウィクリーに連れ込むことに成功した。
男とセックスをするわけでは無いので城戸に負担はかからない。
この男を睡魔に陥れ、運よく財布を探しキンスのモノが見つかればこの男を外に放り出す。
男のかなりの酔い具合から見て、城戸の悪事はバレそうになかった。
「兄ちゃん・・・」
この40過ぎた同年代の城戸をつかまえて兄ちゃんと言ってきたのだ。
ここでグッと歯を食いしばった城戸。
「な~に?」
ここで男色を装なければ金にはありつけない。
「あのう・・・舐めてくれないかしら?」
尺八をしてくれと言うのだ。
もちろん同じ趣味という立場から金額の請求は出来ない。
ズボンのベルトを緩め脱ぎ終わると、ブリーフの前開きから萎えているペニスを掴みだした男。
初めて同性のペニスに触れることとなった城戸。
そっと、男のペニスに手を伸ばす。
フニャフニャのペニスでも男色を好む男のモノはムクムクと勃起を始めた。
自分の勃起過程を眺めたことが有っても他人の勃起を眺めるのは初めて。
カネと嫌悪感が同居する城戸の手淫となった。
「兄ちゃん・・・ボチボチ・・・始めてくれんかね」
男の要望に応え城戸は従う。
1時間ぐらい時が過ぎただろうか?男はスヤスヤと眠りについた。
起き上がった城戸は男が穿いていたズボンのポケットを探った。
「ふふふ・・・」
あるわあるわ。大枚が何枚も・・・。
あとはこの男をいかに外に追い出すかだった。
身体を揺すっても起きようとしない男。
城戸は男の財布を持って家を出ると中身を抜き取り財布は大通りにポイッ。
車の通りが多い交差点。
タイヤに敷かれてみる形も無い男の財布。
城戸は何食わぬ顔をして、諦め表情で男の横に寝る。
「起きてくれっ」
男の声で目を覚ました城戸。
サービスの疲れでグッスリと眠りにおちていたようだ。
財布がなく慌てふためく男。
警察を呼ぶのかなと思えば、男にも不都合なことがあるのだろう。公になることは無く、肩を落とした男はショボショボと部屋から出ていった。
最近は悪事で得た金とは言いながらフトコロが暖かくなる日が多い男 城戸は近くの集合住宅の一階にあるカフェで昼食を摂った。
鹿児島のカフェはほとんどのテナントが24時間営業。
人目につかぬ奥のボックス席では、テーブル式のゲーム機が設置され堂々の闇賭博が行われているのが実態だ。
パチンコはしても、ゲームの賭けには興味を示さない男 城戸はひたすら黙々と昼飯に食らいつく。
つづく