四章
この男。近頃はソープランドに客として顔を出していた。
城戸が寝泊りしているウイークマンションは大門にある。
そのマンションから、歩いて15分ぐらいのところに、そのソープランドは存在している。
表通りから一本、裏筋の通りに4店舗あるソープランドの経営者は、それぞれが2店舗ずつを構え、近くには怖いお兄さんの事務所がある。
お金が入って、まず男がしたことは形成外科に行っての包茎手術。レーザーを使い余っている皮を除去するのだ。
小さいころから、皮をかぶっている性器にコンプレックスを持ち続けてきた。
悪さをする人間に限って、弱いところを持っているもので、結婚相手を見つけ二人の子供がいるのならば、たかだか包茎なんてと、思われるかもしれないが、悪事を働こうと思えば妙なところに気がつくものだ。
「ニイちゃん・・・いい子がいるよ」
40を過ぎた男に兄ちゃんはないだろうと思うが、商売の呼び込みセリフばかりは仕方がない。
時間制。ワンクールが幾らとなっている。お金があるときの男は強気。
店内の限界に入ればアクリル板越しに昔のお姉ちゃんが座っている。
「2回分お願いします」
堂々と言い、指定された待合室で女性を待つ。
何せ、まだ日が高い日中のこと。
昼間からソープランドで暇をつぶす奴はいない。
「お客さん・・・お待たせしました」
椅子に腰を下ろしたばかり。案内役のボーイさんが女性がいる浴室まで案内してくれる。
案内役のボーイさんといったって別に青年がいるわけもない。
外で男を呼び込んだ初老の男性。
一応に白のワイシャツに黒いズボン。風俗関係者らしくもちろんネクタイはしている。
ガチャ
案内のボーイさんが浴室の扉を開けてくれた。
「いらっしゃいませ」
腰を折り挨拶してくれたソープ嬢。歳は若いようでも、ムチャ若くはないだろうと思われる。しょっぱなから年齢は聞けない。
瘦身でどこかに人妻の匂いを漂わせているソープ嬢。
巨乳にはあまり興味がなく、何事にもほどほどが好きな男。
しいて言うなら好みの部類に入る女性。今でいえばストライク。
「美沙といいます・・・よろしく」
挨拶しながら手をかざしてくれるものだから、着ている服を自分で脱いでバスタブに浸かる。
女性から服を脱がしてもらうとテレくさくもある。
悪い男ほどシャイなのである。
城戸がソープを好む理由。極端な性のはけ口ではない。
体を丁寧に洗ってくれる。自分だけで入浴すれば体を洗うのが面倒でカラスの行水。
それと、元気ない性器でも、いろんな技を駆使しムズ痒くしてくれる。この感覚がたまらない快感なのだ。
ところがこの男技を楽しみつつも、商売気まる出しでやられると勃起途上にあったペニスも萎えてしまう。
まあ、ひと口で例えるなら、わがままを絵に描いたような男だろう。
ことが終われば、二回分の時間を費やしてくれるお客さん好待遇で接してくれる。
昼間からソープに出入りする客はめったにいない。あとから知ったことだが、売り上げがなく坊主で帰宅する日があるらしい。
1~2回通いつめればもう常連客だ。
「美沙ちゃん、今度 天文館で遊ぼうよ」
口説きに入る城戸。
「ごめんなさい。店外デートはできないし・・・私休みの前は・・・」
なんと、この美沙ちゃん。
休み前は、昼間はソープ嬢として働くかたわら、夜は明け方まで、天文館のカラオケ店で働いているらしい。
オールナイト嬢なのだ。
それでも城戸は機会あるごとに口説き続ける。
美沙ちゃん。やはり人妻で、旦那は上場企業で働いているのだが無類のパチンコ好き。
彼女は無類のエッチ好き。
旦那は買ったばかりの家も抵当に入れ、遊び惚けているらしい。それに4人の子持ち。
昼間に通ってくる男は上客なのだ。
口説きとわかっても無下にはできない。明日からの食い扶持に困窮するのだ。
とうと、デートに成功。
最初の夜は、近頃開拓したばかりのお好み焼き屋で初デート。
あぶく銭を持ち合わせていれば焦る必要は全くない。
2~3回とデートの実績を積み上げてい城戸。
つづく