表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

05 one pair

九十九は着替えなければならないので先に教室に行く、と声をかけてからむかう。


教室に着いた時には、だいぶギリギリだったみたいで、数人をのぞきすでにほとんどのクラスメートがそろっていた。


自分の席へ行こうとすると、このクラスの学級委員長である椎本 ひかり《しいがもと ひかり》が声を掛けてきた。


「鑢坂君おはよう。今日はいつもより遅かったね。遅刻には気をつけないと。遅刻は不良の始まり、だよ。」

なんだかあまり関係ないような気がしないでもないが、そこはだいぶ規則のゆるいこの学校においてさえも、みつあみ、メガネ、膝丈のスカート、と真の委員長であるための三大条件を満たす彼女の言うことである。

きっとその通りなのだろう。


「分かったよ、次から気をつける。」

「ふぇ?どしたの?今日はえらく素直だね。いつもなら『うぇっへっへっ、お前のパンツくれたら考えてやらないこともないぜ。』とか言うのに。」


「そんなことを言った覚えはない!!」


何故だろう、昨日からいろんな人に貶められているような気がする。


嫌われているのだろうか?かなりショックすぎる。


「鑢坂君、いつにもましてツッコミが冴えてないよ。ここでのツッコミは『違う!!俺がほしいのはパンティーじゃなくてブラだ!!』だよ。」


「余計ひどくなった!?なぁ椎本、俺のこと嫌いなのか?泣きそうだよ。」


「泣けばいいのに。」


「ぐはっ、お前にそんなことを言われる日が来るなんて。こうなったらお前の胸に頭ぶつけて死んでやる。」


「そこまでペッタンコじゃないよぉ…」


「くれるブラもなかったりして。」


「…ふ、ふふ、ふふふ、そ、そこまで言われたのは初めてだよ。本当ならセクハラで訴えてるとこだけど、ここまで言われちゃしょうがないよね…。調きょ、じゃなくて教育しなおさないとね。」


さすがに言いすぎただろうか、椎本はブラックなオーラを出しながら、こちらへにじりよってくる。


「れ、冷静になれ。いつもの明るいお前はどこへ行った。深呼吸しろ、深呼吸『ふっふっふー』だ。」


「ふっふっふー、っ!!げほっ、げほっ。」


あ、むせた。


「もぅ、何させるんだよー。はいてばっかりだからむせちゃったよぅ。」


「やる前に気づけよ。」


なんて、いつもの様に冗談を言い合っているとチャイムがなって、担任が入ってくる。

可哀想なことに九十九は遅刻のようだ。






物事には全て始まりと終わりがある。人が生まれたのならその人はいずれ必ず死ぬ、というのは自然の摂理、宇宙の大法則だ。終わりのない物語なんて無いし、朝のこない夜も無い。

でも、本当に終わりの無いものは無いのだろうか?もしかすると、永久に不変のものだってあるかもしれない。でも、観測される方ではなく、する方が不変なわけでは無いのなら、それが不変であるとどうやって証明するのだろう。



つまるところ何が言いたいのかというと、授業はいつかは絶対に終わるということで、今は放課後である。

さあ、部活に行って固まった体を戻そう。とか考えていたのだが、未だに俺は教室にいて、箒まで持たされている。


目の前ではむすっとした顔で、同じように箒を持って掃除している九十九がいる。


「鑢坂君手が止まってるじゃないか!!全く、誰のせいでこんなことをしてると思ってるんだい。私としては早く部活に行きたいんだけどね。」


むぅ、怒らせてしまった。

というか、どうして放課後九十九と二人で掃除をしなければならないのかというと、理由としてはとても簡単で、九十九が遅刻したからである。

着替えていたため遅れて入ってきた九十九は、無慈悲なことに担任から遅刻の罰として放課後の教室掃除を言い渡された。


それだけならよかったのだが、さあ部活に行こうとしている俺のとこに九十九はやって来て、


「私が遅れたのは君と話をしていたせいだ。だから君にも掃除をする義務があるはずなんだ。」


なんてことを言ってきた。

まぁ確かにそれも一理あるな、と思い手伝っているのだが、いつの間にか彼女の頭の中では100%俺のせいになっているようだ。




10分程かけて掃除を終わらせた後、部活に行こうとしていたら、九十九がおもわぬことを言ってきた。



「弓道部は好きな時に帰れるけど、君は今日は何時上がるつもりだい?私もそれに合わせるつもりだが。」

「今日は7時くらいには上がろうと思ってるけど、どうしてだ?」


「ん?君を守ると約束したからね、一緒に登下校しようと思ってたんだけど。夜なんかは特に妖も出やすいし。迷惑だったかい?」


「そんなことはないけど…、家は近いのか?」


聞くと、九十九の家はだいぶ近い所にあり、彼女の通学路の途中に俺の家があった。ただ、校区が違ったため今まで一緒になったことがなかったのだろう。


「女の子に送ってもらうのは恥ずかしいので、お前の家まで送ることにします。」


「いや、それじゃ意味が無いような……、まぁいいか。そうと決まれば部活に行こうか。」


そう言って彼女は駆け出して行った。

うん、なんだかだいぶ、いやかなり、やる気がでてきた。

ゆるむ頬を軽く叩いて引き締めて、俺も部活に向かう。

最初、何が書きたかったんだっけ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ