表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

03 九十九もずく 2

感想・評価をもらえると嬉しいです。

いつものように、目覚ましでセットした時間より数分前に起きる。

アラームがなる前に目覚ましを止め、顔を洗うために階下にまだ少しぼーっとした頭のままで降りていく。


なぜかもの凄くお腹が空いている。


あれ、なんでこんなに腹が減ってるんだ?


晩飯はどうしたっけ?


…ああそうか、疲れてたから帰ってそのまま玄関で倒れたんだ。


あれ、どうしてそんなに疲れてたんだっけ?

だんだん頭がスッキリとしていくにつれて、昨夜のことが思い出される。



いやいやいや…、ありえねえ、あるわけがない。あんなことが現実で起こるはずがない。


あれはきっと夢なのだ。

そう夢なのだ。


フロイト先生やユング先生が見たら深層心理学とかなんとかに元づいて、きっと何かしらのエロチックな精神分析をするに違いない。


そうさ、九十九はきっと今日も早くから一人朝練をするために学校の弓道場にいるのだろう。

それならば、俺も早く学校に行って、朝から弓に励んでいる九十九に向かってテンション高くこう言うのだ。


「やぁ、九十九おはよう。今日も君は可愛いくて胸が大きいね。ますます大きくなってきたんじゃないかい?それよりも聞いてくれよ。昨日君の夢を見たんだ。知っているかい?昔の人は夢に異性が出てくると、その人は自分に惚れていると考えていたらしいよ。もしかして君は僕に惚れているのかい?照れるじゃないか、HA☆HA☆HA。」


…いや、誰だよこれ。自分で考えておいてなんだが、正直寒気がする。俺は決してこんな変態チックなキャラではない。

なんて現実逃避は洗面所の鏡を見た瞬間崩れさった。

俺の首元には明らかに何かにさされたような2つの痕があったからだ。


まぁ、そんな夢オチみたいな話があるわけないよな、と分かっていながら軽く希望を持ってしまった自分に苦笑しながら顔を洗い、リビングに向かう。




リビングには死体が転がっていた。

何なのだろうこれは?


本当は分かっているが…


その死体はこちらの気配を感知したのか起き上がり、キョンシーというよりはゾンビのような足取りでこちらに近づいてくる。


GとかT的なウイルスにでも感染してしまったのだろうか、ひたすらに


「…お腹空いた、食べ物。…お腹空いた、食べ物。」

と繰り返している。


ただ、そのゾンビは俺を食べる前に力尽きて、倒れてしまった。


部屋に運んであげるべきか考えていると、


「おはようございます、兄さん。母さんは私が運んでおきますので、朝食の準備をしてもらえませんか?昨夜は私も何も食べてないので…。」


入り口からそんな声がした。


振り返ると、そこには妹がいた。


鑢坂 夏々やすりざか ななか1つ下の妹で、全国でみてもかなり偏差値の高い女子校に通っており、勉強・スポーツ何をやらせてもそつなくこなす、兄の目から見てもかなりできのいい妹である。


………家事以外は。


うちの女どもはどうしてこうも家事能力が皆無なのだろう…。


後、付け加えるとするならば、夏々夏は妖が視えない。


「あぁ、おはよう。すぐに朝飯の支度するから、母さん頼んだ。」


ちなみに、現在夏々夏に引きずられているのは、ゾンビもとい我ら兄妹の母である。


鑢坂やすりざか 五季いつき職業、某雑誌編集長。職場では『休み無き鬼』と呼ばれ、作家と編集者の両方から恐れられているらしいが、家ではその片鱗すら見せない。




昨夜に炊飯器をセットしていなかったので、当然ご飯は炊けておらず、しょうがないなと思いながら、棚から取り出したパンをセットする。


合わせのスープを作っていると、役目を果たした夏々夏が来たので声を掛ける。


「そんなに腹減ってたならなにか食べにでも行けばよかったのに。」


「いえ、私はそうしようと言ったのですが、母さんが『嫌だ、私は遊馬の愛情の込もった料理が食べたいんだ!』と言ったので一人食べに行くわけにもいかず…。」

…なんてわがままな親なんだろう。


まぁ仕事で忙しく、なかなか帰ってこれないため、せっかくなんだからと思う気持ちも分からないではないが。


「そうか、それは悪かったな、夏々夏。」


「いえ、そんなことよりも兄さん。」


「ん、なんだ?」


「どうして昨日は帰って来た途端倒れ込むように寝てしまうくらい疲れていたのですか?母さんと違って兄さんを運ぶのは、なかなか大変だったんですよ。」


…さて、何と言おう?


正直に言ってもいいとは思うが、心配をかけてしまう気がする。

落ち着け、ここは冷静に行くんだ。


「ちょっと弓道部の練習が大変だっ

「嘘をつかないで下さい。」


簡単にばれてしまった。


しょうがないので九十九が吸血鬼というところは省いて簡単に説明する。


「そうだったんですか、それはすいません。その九十九さんという方に私の分もお礼を言っておいて下さい。」


「ああ、分かったよ。伝えておく。それにしても珍しいな、お前がこんなに聞いてくるなんて。」


「………昨日玄関に倒れていた兄さんを運んでいた時にですね、



(あれ?何だろうこの雰囲気、凄く嫌な予感がする。さっきまでの和やかな雰囲気はどこへ行ってしまったのだろう?どこかからスタンド攻撃でも受けているかのようだ。)



兄さん重いな、なんてことを考えてたんですよ。



(夏々夏は静かに話しているだけなのだが、妙な威圧感がある。)



そうしてふと首元を見たら何か恋人同士がよく付け合うような赤い印が、あるじゃないですか。あれはなんなんでしょうか?

よかったら、私にも分かり易く教えてもらえないでしょうか。」


「それはきっと蚊だ。うん、何だかかゆいと思ってたら蚊に刺されてたんだな。」


「…今は春ですよ。」


「き、きっとせっかちな蚊だったんだよ。ほ、ほら、あわてんぼうのサンタクロースだっているじゃないか。」


「そうですか。では兄さんは、お腹の空いた母さんと私をほったらかして、その九十九さんとやらと、あーんなことやこーんなことをしていたというわけではないんですね?」


なんというか、あらぬ方向に勘違いして疑われていた。

疑いを解きたいのだが、本当のことを言うわけにもいかないので、かなり追い詰められた状況だ。


さげすむような目をされていることに軽くへこみながらも、


「そんなことは可愛い妹に誓ってやってない。」


そうとだけ言いきった。




そうこうしてる内に朝食の用意ができたので、食べることにする。










「今日も帰るのは早いのか?」


「うんん、今日はお父さんのアパートによるから遅くなるね。」


「なんだ、またか?あのクズに会いに行く必要なんて無いのに。」


親父はとにかく最低な奴でだいぶ前に母さんと離婚した。

「お前あいつのところ寄る時いつも遅いけど、何かされてるんじゃないか?」


そう言うと彼女の肩がビクッと震える。


「おい!!まさかお前本当に!?

クソッあの野郎許せねぇ!!ブッ殺してやる!!」


「やめて、兄さん!!全部私が悪いの!!お父さんがあんなになってしまったのも、だから…。」


「あれはお前のせいじゃないって何度も言ってるじゃないか。」


「でも…。」


台所にあった包丁を掴み、玄関を乱暴に開けると、兄は飛び出していった。












「うわぁ、朝から重い番組やってるなぁ…。」


「友達が面白いって言ってたんですけど、私もこれはちょっと…。」


「消してもいいか?」


「いいですよ。」



俺達が見ていたのは、今話題の朝の連続ドラマだ。


もちろん俺達の父さんは、こんな最低野郎ではないし、現在家に居ないのは長期海外出張中だからである。


早々に朝食を食べ終わり、昼食用のサンドイッチを二人分作った後、

夏々夏が脱がせてくれていたブレザーをはおり、学校に行く準備を整える。


本来ならばまだだいぶ早いのだが、九十九と二人で話をしたいので、もう家を出る。


「俺はもう行くけどお前はどうする?」


「私はもう少ししてから行きます。」


「そっか、それなら食器洗ってもらってていいか?」


「はい、いいですよ。分かりました。」


いくら家事能力が皆無とはいえ、さすがに皿を洗うことくらいはできる。


「サンキュ、それじゃあ、いってきます。」


「いってらっしゃい、兄さん。」




学校に行く途中の交差点で、いつもの様にスーツ姿の明石あかしさんに挨拶をする。


余談ではあるが、俺は小学校1年生の時から彼に挨拶をしているが、彼が幽霊だと気づいたのは6年生のことである。

誰もいない所に挨拶をしている姿は周りから見て、かなり危ない小学生だったに違いない。




最後の急な登り坂を登りきると、そこが俺の通う高校である。


私立栄扇えいせん高校 夏々夏の通う高校とはだいぶ差があるが、そこそこの進学校である。


「しゃー、すぇー、くぅえー。」


と、よく分からないかけ声を出して練習している野球部を横目で見ながら、校舎を大きく回り、正門から一番遠くにある弓道場を目指す。




弓道場の扉を開けると、案の定九十九は一人練習していたため、

集中しているところを邪魔してもいけないので隅の方にいることにした。


流れるような動作で足踏みから残心までの射法八節を行う九十九に、視線が惹き付けられる。


ふぅ、という呼吸と共に構えを解いたので声をかける。


「おぅ、九十九おはよう。」


だが九十九は来ていたことに気づいていなかったらしく、ビクッと震える。それに合わせて袴の上からでも分かる大きな胸も揺れる。

「あぁなんだ鑢坂君かい、おはよう。全く驚かさないでくれよ。来てたなら声くらいかけてくれればいいのに。」


「集中してたみたいだったから声かけにくくてな。そんなに驚かせたのなら謝るよ。」


「いや、別にそこまでしなくてもいいんだけどね。それよりも、こんなに早く来てくれるとは思わなかったよ。話は放課後にでもするつもりだったしね。」


「早い方がいいかと思ってな。あぁ、まだ続けるつもりなら、別に放課後でいいが。」


「わざわざ私のために早く登校してくれた鑢坂君にそこまでさせるわけにはいかないさ。幸い時間もまだまだあるようだしね。

いいよ、何から話そうか?」


「とりあえず、俺は何も分かっちゃいないんだ。一から順に説明してくれないか?」


「分かった、そうさせてもらうとしよう。巻きこんでしまった君には聞く権利がある。…そうだね、一からというならばあそこくらいからが丁度いいだろう。」


そう言って九十九は語りだした。

早速ですが、ごめんなさい。もうわけの分からないことになっちゃってます。 とにかく頑張って軌道修正させます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ